特集 環境(1)/若い世代の意識が変わる/環境配慮素材を標準化

2023年12月05日 (火曜日)

 環境配慮型素材の開発・提案や製造工程における環境負荷低減への取り組みが世界的要請となって久しい。温室効果ガス(GHG)排出削減も国際的な枠組みが定められ、企業にとっても環境負荷低減への取り組みは事業の継続における不可欠な要素となった。若い世代を中心に環境配慮に対する意識も大きく変わり、方法論も多様化する。企業も今後の成長に向けて環境配慮の取り組みを進化させることが不可欠になった。

〈リサイクルが“かっこいい”〉

 近年、学校などで環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)に関する教育が積極的に行われていることで、若い世代の間で環境配慮素材に対する認識が大きく変化している。例えばリサイクル繊維はかつて“安物”“低品質”といった印象を持たれていたが、若者の間では積極的に利用すべき素材との認識が高まっている。

 こうした流れを確実なものにしようとする取り組みも始まった。日本繊維機械学会繊維リサイクル技術研究会は関西の大学の研究者と学生でプロジェクト「エン・ウィン・クル」を結成した。服飾デザイン学や服飾文化論の専門家も参加し、繊維廃材を利用した衣料、服飾雑貨などを作成。繊維リサイクルでデザインや文化的な価値を創出し、消費者の認識を革新することで購買意欲につなげることを目指す。

 8月にファッションショーと展示販売会を実施した。プロジェクトを指導する一人である滋賀県立大学の森下あおい教授は「作品の制作やショーの運営を通じて学生の繊維廃材への認識が確実に変わってきた」と指摘する。若者からの発信を通じて、繊維リサイクルの社会実装に向けた取り組みが加速する。

〈注目のマスバランス方式/標準化での位置付け課題に〉

 リサイクル原料やバイオマス由来原料の採用が拡大する中、新たな方法論として注目が高まっているのがマスバランス方式である。原料から製品への加工・流通工程で、ある特性を持つ原料と通常の原料を混合して使用する場合、ある特性を持つ原料の投入量に応じて製品の一部にその特性を割り当てるものだ。

 例えば通常原料にリサイクル原料やバイオマス原料を100トン投入した場合、混合原料から作られた製品のうち100トンは実際の混用率とは関係なくリサイクル原料100%品の特性を割り当てる。製品そのものにリサイクル原料がどれだけ使われているかではなく、工程全体の原料収支で特定の原料の使用とそれを使用した製品の生産量がバランスするという考え方だ。

 マスバランス方式のメリットは、実際の含有量とは関係なく環境配慮原料による製品を供給できることにある。製品自体は通常原料使いとほぼ同じものとなるため、従来の環境配慮原料使いのような物性面で劣後することもない。国内外の総合化学大手が相次いでマスバランス方式による環境配慮型基礎化学品の供給体制を整備した。日本では東洋紡せんいや旭化成が合繊原料として活用している。

 一方、マスバランス方式には課題もある。製品の表記と実質のサステイナブル原料の含有量が異なることから消費者に誤解を与えないよう、配慮が求められる。また、現在サステ原料の定義も含めて国際標準化が進められており、そこでマスバランス方式がどのように位置付けられるかも今後の普及への焦点となる。

〈トピックス/環境配慮の方法論も多様化/鑑別技術の開発も不可欠〉

 世界的に環境配慮素材のニーズが高まる中、混率などを通じて環境性能を客観的に算定・表示するための規格策定など、標準化の動きが加速する。日本化学繊維協会(化繊協会)が化学繊維分野での標準化に取り組むほか、日本紡績協会(紡協)も天然繊維分野での標準化に取り組む。

 現在、リサイクル原料やバイオマス原料を使用した繊維を通常の繊維と区別して表記する日本産業規格(JIS)などはなく、混率表示などで環境性能を客観的に表示する方法も統一されていない。このため経済産業省が中心となり、繊維業界団体が標準化事業を進めている。

 化繊協会は2022年度から専門委員会を設置し、「環境配慮型繊維製品に関するJIS開発事業」を実施しており、再生原料やバイオマス原料による化学繊維を規定するJIS開発を進める。23年度中にはJIS原案を取りまとめる計画だ。紡協も22年度から分科会を設けて天然繊維を対象としたJIS開発事業を開始した。こちらは未利用綿(落ち綿)と反毛、使用済みセルロース繊維製品を原料に再利用した再生セルロース繊維を対象とする。

 標準化の実効性確保や将来の混率表示のためには環境配慮素材の鑑別技術の開発が不可欠。既に東レは「&+」(アンドプラス)として展開するペットボトル由来再生ポリエステル繊維で特殊な化学的マーキングによる鑑別を可能にした。レンチングやダイワボウレーヨンも化学的マーキングによる鑑別が可能なトレーサブルレーヨンを開発している。他のリサイクル繊維でも実用的な鑑別方法の確立が求められる。