特集 環境(4)/わが社の環境戦略・商品/小松マテーレ/ダイワボウレーヨン/レンチング/YKK

2023年12月05日 (火曜日)

〈植物由来の合成皮革/バイオ比率50%以上/小松マテーレ〉

 小松マテーレは、植物由来原料を使った合成皮革「BIO DIMA」(ビオディマ)の本格展開を始めた。耐久性や染色性など従来の物性を維持しながら、植物由来比率50%以上を実現している。

 植物由来比率50%以上のポリウレタン(PU)を使う透湿防水生地「サイトスGR」に続き、合成皮革のビオディマを開発した。表皮のPUを植物由来化し、一般的な合成皮革製品よりも高い植物由来比率を実現した。テーバー摩耗試験は2000回(JIS L1096)、スチールブレード100回以上(自社基準・1㌔荷重)、平面摩耗試験2万回以上(同)をクリアしている。

 既にアパレル用途で展開が始まっており、今後は車輌や家具などの用途に広げていく。樹脂設計や生地設計などをアレンジしながら、ユーザーの要望に応える開発を進めていく。

 抗菌性、難燃性、耐寒屈曲性、耐加水分解性などさまざまな機能付与が可能。速染糸を使って低温で速く染める「WS」や天然成分を使って合繊を染める「オニベジ」などとの組み合わせもできる。

 さらなる環境負荷低減に向けた開発にも取り組む考えで、ジメチルホルムアミド(DMF)を使わない製法を確立していく。原料はトウゴマやとうもろこしを使うが、将来は全てを非可食性植物にする。表皮層だけでなく基布についても、天然繊維やリサイクル繊維、バイオ由来合繊使いにするなど、より環境負荷の低い形にしていく。

〈国際市場で競う体制/リサイクルレーヨンに注目/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、木材パルプ由来や生分解性などレーヨンのサステイナブル繊維としての特性を打ち出す。国際的な第三者認証も積極的に取得し、国際市場で競争できる体制を整えた。

 同社は現在、海水中生分解性を確認し、国際認証「OKバイオディグレイダブル・マリーン」を取得した「エコロナ」、英国規格協会(BSI)による適正意見を得たカーボンオフセット制度を活用したカーボンニュートラルレーヨンなどをラインアップする。

 原料である木材パルプも適正に管理された資源利用を示す森林認証(FSC)を取得。カナダの森林保全団体であるキャノピーの森林に焦点を当てたファッションセクター向け繊維調達分析ツール「ホットボタンランキング」にも参画し、2022年からランクインした。

 米国の農務省が再生可能資源から作られた製品を認証する「バイオベース製品認証」、染色加工などの安全性に関する国際規格「エコテックス規格100」、食品接触の安全性認証「ISEGA」なども取得。国際的に信用を担保した商品がそろう。

 ここに来て注目が高まるのが使用済み綿製品をレーヨン原料として再利用したリサイクルレーヨン「リコビス」。こちらもリサイクル原料の使用に関する国際認証であるリサイクルド・クレーム・スタンダード(RCS)認証を取得している。サステへのグローバルな要求に応える準備が整う。

〈リフィブラテクノロジー拡大/カイハラとパートナーシップ/レンチング〉

 レンチングは、使用済み繊維製品から回収した廃棄綿布などを再生セルロース繊維の原料としてリサイクルする「リフィブラテクノロジー」を拡大させている。鑑別可能なトレーサブルレーヨン「レンチングエコヴェロ」にリフィブラテクノロジーを導入した。生産拠点も拡充した。

 精製セルロース繊維「テンセル」リヨセルに導入済みだったリフィブラテクノロジーをエコヴェロにも採用することでリサイクル原料の活用とトレーサビリティーを共に確立することが可能に。消費者は最終製品にリサイクル原料が使用されているという情報に基づいて購入を判断することができる。

 リサイクル原料の使用率は20%からスタートし、2023年中には30%まで引き上げ、将来的には50%とする計画。生産は中国子会社のレンチング〈南京〉ファイバーズとインドネシア子会社のサウス・パシフィック・ビスコースが担う。

 ユーザーとの連携も強化する。日本ではカイハラ(広島県福山市)とテンセルなどを使ったデニム開発でパートナーシップを強化した。10月にはカイハラが東京での自社展示会でテンセルを使ったデニムコレクションを披露。10月にオランダ・アムステルダム、11月に香港で開催されたデニム関連の展示会「キングピン」のレンチングのブースで紹介した。

〈ファスナーの循環事業開始/連携の輪広げる/YKK〉

 YKKは、廃棄されるファスナーを減らすため、部位別に素材を回収、再利用して新たなファスナーに生まれ変わらせる取り組み「zip TO zip」(ジップ・トゥ・ジップ)を開始した。2023年から進めるパタゴニア・インターナショナル・インク日本支社(パタゴニア、横浜市)との協業をきっかけに、ファスナー循環に関わる連携の輪を広げていく。

 YKKが目指すサーキュラーエコノミーは三つの〝ループ〟で形成する。

 一つ目のループは、YKKの社内で作るもので、リサイクル技術の構築を進めながら、これまで廃棄されていた〝社内資源〟を再利用するために回収する仕組み作りを行っている。

 二つ目は、顧客との協働で廃棄していたファスナーの回収からリサイクルまでのスキームを作り上げ、実践していく。

 三つ目は、社会全体にまで取り組みの輪を広げ、消費者にもファスナーのリサイクルを定着させ、廃棄されるファスナーを減らして地球に優しい環境作りを目指す。

 YKKは今年にファスナーを再利用する技術を完成させており、技術の実用化を進めるパートナーを模索した結果、環境に対する先進的な取り組みで知られるパタゴニアに協業を打診した。パタゴニアも、リペア部門などから出される取り外しファスナーを廃棄せずに保管し、再利用の手段を探っていたため、2社の思いが一致し、取り組みがスタートした。