特集 環境(9)/わが社の環境戦略・商品/東レ「リブモア」/世界初「エコマーク」認定

2023年12月05日 (火曜日)

 東レは、使い切り防護服「リブモア」シリーズのラインアップを拡充している。中でも強化しているのが、使い切り防護服として世界で初めて(東レ調べ)ISO14024準拠のタイプⅠ環境ラベル(「エコマーク」)認定を取得した「リブモア4500AS+」「リブモア4000AS+」。使い切り製品でも環境配慮を重視する新しい取り組みが始まる。油の浸透抑制と通気性を両立した耐水・耐油タイプ防護服「リブモア4300AS」、ベーシックモデルの「リブモア1000AS」もラインアップに加え、幅広いニーズに応えることが可能になる。

〈熱中症対策で高い評価〉

 粉じんや液体に対する防護服としては世界的に高密度ポリエチレン不織布を使用したものが一般的だが、通気性が極めて低いため、暑熱環境で使用すると着用者が熱中症になるリスクが高まるといった課題がある。

 この課題に取り組んだのが東レのリブモア。ポリプロピレン(PP)不織布に電石(エレクトレット)機能を付与することで粉じんを吸着する「トレミクロン」やメルトブロー不織布による特殊耐水層をPPスパンボンド不織布で挟んだ3層構造不織布を使用することで日本産業規格(JIS)の化学防護服規格に適合した防じん性や耐水圧性能と通気性の両立に成功した。これにより着用者の熱中症リスクが低減する。

 これまで「JIS T815化学防護服タイプ5」(浮遊固体粉塵防護用密閉服)に対応した粉じん防護(高通気タイプ)「リブモア3000」「リブモア2000」、タイプ5に加えて「JIS T8115化学防護服タイプ6」(ミスト防護用密閉服)にも対応した粉じん防護服(耐水圧タイプ)「リブモア4000AS」、さらにタイプ5、6に加えて「JIS T8115化学防護服タイプ4」(スプレー防護用密閉服)にも対応した「リブモア4500AS」(耐水圧タイプ、シームテープあり)をそろえる。そのほか感染対策用やクリーンルーム用ウエアなどもラインアップし、いずれも高い評価を得ている。

〈リサイクル原料使用を実現〉

 一方、使い切り防護服は商品の性格上、使用後に大量廃棄が生じるという問題がある。近年、作業服などユニフォーム分野ではリサイクルが進められていることもあり、使い切り防護服の環境負荷をどのように削減するかが課題となっていた。

 こうした課題を解決するために、東レは自社のPPフィルム製造工程で発生する端材などを再資源化し、原料の一部に使用したスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)不織布をリブモアに使用することを実現した。

 まずはリブモア4000ASとリブモア4500ASにリサイクル原料使いSMS不織布を導入し、それぞれリブモア4000AS+とリブモア4500AS+としてラインアップに加えた。いずれも日本環境協会によるISO14024準拠のタイプⅠ環境ラベル(エコマーク)認定を取得した。

 製品の用途の制約上、これまで使い切り防護服でエコマーク認定品は存在しておらず、東レのリブモアは使い切り防護服としては世界初の認定となる。また、PPフィルムの製造工程で発生する端材を再資源化するプレコンシューマ方式リサイクルのためトレーサビリティーが明確であり、廃棄物削減によるゼロ・エミッションにもつながる。

 リブモア4500AS+、リブモア4000AS+ともに12月から販売を開始した。使い切り防護服でも環境負荷を低減するというこれまで例のない取り組みへの期待は大きい。

〈ラミネートで油汚れ対策〉

 12月からリブモアシリーズには新たな商品も追加されている。その一つが油対策・粉じん防護タイプ「リブモア4300AS」。前面にスパンボンド不織布にフィルムをラミネートしたSF不織布を使用することで油の浸透を抑制しつつ、フードと背面上部には耐水性と防塵性、通気性に優れる「リブモア4000AS」で採用するSMS不織布を使用した。

 油汚れの多い製造業やメンテナンス業、塗装業などでは油汚れへのニーズが高い。東レはリブモア4000ASを採用している大手鉄鋼メーカーの協力で実際の油汚れの状態をモニタリング。油汚れが付着しにくい部位を分析、そこに通気性不織布を配置することで油汚れ防止と通気性を両立することに成功した。

 また、瀬田工場(大津市)にある開発施設「テクノラマGⅢ」の人工気象室などで実験し、実際の着用時の快適性も評価した。ここでもベンチマーク品と比べて衣服内温度測定や快適性の官能評価で優れた結果を確認している。

〈JIS対応防護服の入門商品〉

 もう一つ12月から販売を開始したのが、こなれた価格ながらJISの化学防護服タイプ5とタイプ6に適合した粉じん防護服(耐水圧スタンダードタイプ)「リブモア1000AS」。リブモア4000ASと比べると耐水圧性能は低いがJISには十分に適合しており、一般的な粉じん・汚れ作業で必要な性能を確保したことで、アスベスト除去やウレタン吹付、メンテナンス、一般製造業、汚れ作業などさまざまな作業で使用できる。

 リブモアシリーズに関心がありながらコスト面から採用を見送ってきた需要家に利用してもらうことが狙いだ。実際にリブモアシリーズの機能を体験してもらい、需要の掘り起こしを進める入門商品として打ち出す。

 環境負荷低減に貢献するエコマーク認定品、2素材の組み合わせによる耐水・耐油タイプ、こなれた価格を実現したベーシックタイプが加わり、リブモアシリーズのラインアップが一段と充実することになる。製造業、建設業、メンテナンス業、塗装業など防じんのための防護服が使用される分野は広い。防じん・耐水性と熱中症対策や快適性確保を両立する防護服として、リブモアシリーズが活躍するフィールドはますます広がることになる。

〈災害支援や社会貢献でも活躍〉

 「リブモア」シリーズは、災害支援や社会貢献でも大きな役割を担っている。これまでも国内では災害時に被災地への支援物資として活用されるほか、海外でも地域社会への貢献に活用する。

 東レはこれまでも国内の災害時にリブモアを支援物資として被災に提供してきた。2018年の西日本豪雨の際には中国・四国支店を通じて被災地の自治体にリブモアを提供し、がれき除去など復旧作業で活用された。最近では22年に子会社の水機テクノスを通じて豪雨被害にあった山形県長井市にリブモア500着を寄付している。

 こうした取り組みは海外でも進む。現在、将来的な海外市場開拓を視野に入れ、米国にリブモア3000のサンプルを置いて試着テストなどを実施している。これらサンプルを地域コミュニティー支援に有効活用することを検討し、23年6月にニューヨーク地域の低所得者向けに住居整備支援を行う非営利団体に寄付した。寄付したリブモアはハーレム地域の教会の改修支援プロジェクトにおいて汚れ防止服として活用された。こうした取り組みを通じて海外でもリブモアの認知度向上を目指す。