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東レの人工皮革事業 環境負荷低減に注力

2023年12月06日 (水曜日)

 東レのウルトラスエード事業部は人工皮革「ウルトラスエード」の原料や製造工程における環境負荷低減に一段と力を入れる。堅調が続く自動車内装材用途を通じて消費者の間でウルトラスエードブランドの認知度が向上することへの期待も大きい。

 ウルトラスエード事業部の2023年度上半期(4~9月)商況は販売数量、売上高ともに前年同期を上回った。利益面も輸出が多く円安の追い風もあり増加している。特に自動車内装材の堅調が続く。海外の自動車メーカー向けだけでなく国内の自動車メーカー向けも生産台数の回復に合わせて増加した。航空機内装材でも採用が拡大している。

 アパレル用途は小ロットが中心ながら国内のデザイナーブランドなどに安定的に採用されており、海外でもアウトドアブランドで採用されるなど成果が上がる。インテリア用途は、海外で住宅着工数減少による先行き懸念があるものの、国内は店舗内装などでの需要が拡大しており堅調だった。工業資材用途は携帯電話やOA機器向けが需要減退傾向にあるが、ゲーム機向けが好調だった。吸水ロール向けも安定している。

 下半期に関してウルトラスエード事業部の西村知洋部長は「しばらくは現在の流れが続く。課題はリサイクル原料や部分バイオマス原料の拡充」と話す。現在、同社が生産する人工皮革の原料は約70%が再生ポリエステルや部分バイオ原料ポリエステルとなっているが、この比率をさらに高める。欧州では環境負荷に対する規制が一段と強化されていることから製造工程での温室効果ガス(GHG)排出量やライフサイクルアセスメント(LCA)の削減に取り組む。

 消費者に向けたプロモーションにも力を入れており、これまでも大学や専門学校など教育機関への素材提供のほか、地域社会のイベントに対してもウルトラスエードを提供してきた。10、11月に東京で開催された自動車ショー「ジャパンモビリティショー」に出品されたコンセプトカーにウルトラスエードが多く採用されていることから、これを通じた認知度向上にも期待を寄せる。