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帝人フロンティアのスポーツ素材 高付加価値品へ特化

2023年12月12日 (火曜日)

 帝人フロンティアは、来期(2025年3月期)に向けて引き続き高付加価値な差別化品への特化を進める。欧米市場は流通在庫の整理が進み、来期にはテキスタイル需要も正常化するとの見通しを持つが、市況の先行き不透明感や大量生産への批判などからアパレルが調達に対して慎重な姿勢を強めており、急激な量的拡大は難しいとみているためだ。

 今期の商況はここまで輸出が売上高、利益とも前年度を下回る水準で推移している。昨年の活況の反動で流通在庫が増加しており、スポーツ・アウトドアアパレルの生産調整が続いているため。ただ、市況要因を除くと販売の中身自体はそれほど悪くないというのが同社の見方だ。

 国内市場に関しては前年度を上回る水準での販売が続いている。新型コロナウイルス禍が落ち着いたことで衣料品需要も回復したことが要因。ただ、原燃料高騰や円安による海外からの原材料調達価格上昇などコストアップに対して価格転嫁が追い付いておらず、利益面は前年度を下回る。

 今後に関して「非常に先行きが見えにくい状態」(衣料素材本部の白石和男テキスタイル第二部長)と指摘する。世界的なインフレや戦争など地政学的リスクの拡大に加えて、衣料品の大量生産・大量廃棄への批判が一段と高まっていることからアパレルも生産に慎重な姿勢を強めていることが背景にある。

 このため同社も引き続き高付加価値な差別化ポリエステル長繊維織・編み物の提案に特化する戦略を強める。主力商品である高バランスニット生地「デルタ」に続く戦略商材と位置付ける高密度立毛構造織・編み物「ポリリズム」や、このほど開発した特殊かさ高意匠糸を使った無縫製ニットウエア「ロフター」、ポリエステルとナイロンを紡糸工程で混繊することで両繊維の特徴を融合させた特殊複合織・編み物「ミクセルNP」など独自性のある商材の提案に力を入れる。

 「日本の合繊産業がなくなれば合繊の進化も止まる」とも強調。合繊生産の中心が中国など新興国に移る中、これまで存在しなかった新機能・新質感を持つ素材の開発に日本の合繊産業の役割があるとの考えを強める。