新たな日常への 挑 戦 北陸ヤーンフェア 2023レビュー(6)

2023年12月12日 (火曜日)

テキスタイルからも出展

 今回展では糸だけでなくテキスタイルの北陸企業も出展した。初出展の福井経編興業(福井市)は「糸の展示会だが、出展することで勉強にもなるし、出展企業とのコラボレーションにも期待している」と狙いを話す。ブースでは衣料用途への注目が高かったほか、非衣料用途での提案にも力を入れた。非衣料では医療用ハイブリッドシートやベッドシーツ「ノビレ」などを紹介した。

 医療用ハイブリッドシートは大阪医科薬科大学、帝人、帝人メディカルテクノロジーと共同開発したもので、ポリ乳酸、ポリエステル、架橋ゼラチン膜からなる心・血管修復パッチ。ノビレは伸縮性、吸水速乾性、低摩擦が特徴で、医療・介護施設向けに展開する。

 松文産業(福井県勝山市)は、ポリエステル100%でウールのような表情を持つ生地を紹介した。一般的なカチオン可染糸使いではなくレギュラー糸を使い、糸加工や製織技術で実現した。

 同社は織布・サイジング・撚糸の勝山工場と鶴岡工場(山形県鶴岡市)、糸加工の栗東工場(滋賀県栗東市)を持ち、近年は工場が連携しての開発に力を入れている。ブースで紹介したウール調生地は栗東工場の糸加工技術と勝山工場の製織技術を組み合わせて膨らみやランダム感を出し、ウールのような表情に仕上げた。ブースでは顧客の要望に細かく応える糸からの開発体制も訴求した。

 福井県撚糸工業組合は、北陸ヤーンフェアを組合員の開発品の発表の場と位置付けて継続出展している。中村堯規理事長は「撚糸は織・編物の高付加価値化を図る上で不可欠な業種だが、事業を継続するには芯が必要。それは商品開発で、組合の存在意義を考えた場合、組合員がまとまる上でも開発が主体になる」と話す。

 同フェアが発表の場になることで組合員の励みにもなり、ここを目指しての開発も進む。これまでの出展では衣料用の糸や、その糸を使った生地、衣料品、家庭用品を展示したが、今回は初の試みとしてタイヤコードやホースなど産業資材用にも撚糸が使われていることも訴求した。

 小松撚糸工業協同組合は産地の紹介などを目的に初出展した。ブースでは組合員46社の特徴が検索できるホームページを紹介するとともに、組合員企業の開発品も展示した。組合員各社はそれぞれに得意技術を持っており、ブースではフリクション式でピン仮撚り並みの高捲縮性を実現した糸などを紹介した。