技術の眼/カポックジャパン/ワコール「アンフィ」/グンゼ/トップマン工業/カラーループと日本山村硝子/おたふく手袋

2023年12月14日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈カポックジャパン/世界初植物由来100%コート〉

 ファッションブランド「カポックノット」を展開するカポックジャパン(大阪府吹田市)は、表地から中わた、縫い糸に至る全てを植物由来100%で商品化した世界で初めてのダウンコートを開発した。11日まで阪急百貨店うめだ本店(大阪市北区)の期間限定店で販売した。

 カポックノットは木の実由来の新素材「カポック」を使って薄くて軽いにもかかわらずダウンの暖かさを発揮するアウターを実現したブランド。

 カポックは東南アジアに自生する植物で、その実のわたはコットンの8分の1の軽さで吸湿発熱という優れた機能性も備える。しかし、わたから糸への加工が難しく、多くの企業が衣類への商品化を諦めてきたという。

 カポックジャパンは国内大手繊維メーカーとの研究開発を通じカポックのシート化に成功。カポックをはじめとするサステイナブルな素材で衣類を提案、販売するブランド、カポックノットを設立した。

 限定店ではプラント―ベースドダウン2030=ギャザリングマーメイド、エアーライトジャケットなどを販売した。

〈ワコール「アンフィ」/体形に合わせスタイルアップ〉

 ワコールは、直営店ブランド「アンフィ」から、体形に合ったスタイルアップを提案するブラジャー「stylist4U」(スタイリストフォーユー)を発売した。3D計測サービスのデータとユーザーアンケートを基に商品化しており、体形や求める機能でブラジャーが選べる。アンフィ店舗などで展開している。

 ワコールの3D計測サービスでは、ボディー・オーバル(胴体断面の形状)とトップ・テーパー(上半身正面の形状の体形特徴)を知ることが可能。約4.5万人のデータを分析したところ、バストサイズによってボディー・オーバルとトップ・テーパーの掛け合わせによる体形特徴に傾向があることが分かった。

 さらにユーザーアンケートで、バストサイズによって「スタイルアップができるブラに期待するバストシルエット」と「ブラジャーにあるとうれしい機能」が異なることも判明。この二つの事実を基に開発したのがスタイリストフォーユーだ。サイズごとにブラジャーの設計を変えることで、悩みに合わせてスタイルアップを可能にする。

〈グンゼ/保温素材で「寝るT」〉

 グンゼは人気の睡眠専用Tシャツ「寝るT」で、肌寒い季節の眠りの環境をサポートする保温素材で商品化した「寝るT」「寝るパン」を公式オンラインストアを通じ発売した。

 寝るTは後ろ身頃に米航空宇宙局のために開発された調温素材「アウトラスト」を使用するとともに寝返りをしやすいようドロップショルダー設計を取り入れた。2022年6月の発売直後から猛暑を乗り切るアイテムとして話題になった。

 「長袖も欲しい」「パンツもあったら上下で着たい」との声が寄せられたため今回、あったか素材による長袖・寝るT、長パンツ・寝るパンを企画した。

 軽くて暖かな素材を使用するとともに、長袖の肩から背中、長パンツの内ももにアウトラストの当て布を装着し熱のこもりを解消した。長袖にはドロップショルダー設計を採用している。

 寝るT長袖は4950円、寝るパンは5500円。サイズは紳士がM、L、LL、婦人がM、L、カラーは寝るTがホワイト、チャコールグレー、ライトグレー、寝るパンがチャコールグレー、ライトグレー、素材はポリエステル80%/綿15%/ポリウレタン5%、当て布が再生繊維100%。

〈トップマン工業/人気テープで生地タイプ〉

 バイアステープを主力とする副資材製造卸のトップマン工業(大阪府東大阪市)はこのほど、2018年に投入して人気を博す次世代高弾性素材「ネオラバーテープ」(NRT)とその細幅タイプである「ネオラバーストラップ」(NRSTP)を広幅化して生地タイプに仕上げた「ネオラバー2.0」を開発した。

 NRTとNRSTPは、クラレプラスチックスの熱可塑性エラストマー「アーネストン」を、ナイロン・ポリウレタンのトリコットで挟んだテープ(ストラップ)。常に快適なフィット感を維持する高い伸長回復力や、長時間の着用でも圧迫感やストレスを感じない低応力、経時や外部要因による劣化が少ない高耐久力が特徴。ポリウレタン使用量が少ないことと高耐久力のためサステイナブルの要素もある。高価格ながらスポーツやインナー分野でウエストゴムなどに採用され、ヒット商品となっている。

 このほど、「幅がないから使いにくい」というユーザーの声に対応し、生地タイプを開発した。中材にはNRT、NRSTPと同じくアーネストンを使い、ポリエステル・ポリウレタンの丸編み地で挟んだ。特徴はNRT、NRSTPと同じ。

〈カラーループと日本山村硝子/ボトルキャップをリサイクル〉

 繊維廃材を色分別する「カラーリサイクルシステム」を開発したベンチャー企業のカラーループ(京都市)と、ガラス瓶・ペットボトル用キャップなど製造販売大手の日本山村硝子がペットボトルのプラスチックキャップのリサイクルに取り組んでいる。廃棄繊維を強化材、プラスチックキャップを母材に再利用することで繊維強化複合材にし、幅広い用途のプラスチック製品に使用することを目指す。

 現在、日本では使用済みペットボトルの大部分がリサイクルされているが、ボトルに付属するプラスチックキャップはほとんどリサイクルされていない。プラスチックキャップにはポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂が使われており、一部がパレットの原料などに再利用されているものの、大部分が焼却処分されている。

 このほど両社が連携し、キャップの色分別にもカラーリサイクルシステムを応用することで、繊維廃材由来の繊維強化材とペットボトルキャップ由来のPPやPEを母材に使った繊維強化複合材の開発と、商品化に取り組むことになった。両社で特許も出願中。

〈おたふく手袋/従来比1.5倍の蓄熱保温力〉

 作業用手袋製造卸のおたふく手袋(大阪府箕面市)は、今秋冬向けに蓄熱タイプのコンプレッションウエア「ボディタフネス パワーストレッチ サーモEVO」の販売を開始した。従来品の約1.5倍の蓄熱保温効果を発揮することも検証。長袖ハイネックシャツ、長袖ハーフジップハイネックシャツ、ロングタイツの3アイテムを全国の作業服店、ホームセンター、ネット通販で販売し、実勢価格は2500~3千円。

 これまで秋冬向けではレーヨンによる発熱素材を使用することが多かったが、今回は発熱ではなく蓄熱素材を採用。レーヨンは水に弱い性質があり、汗をかいた際に乾きにくく汗冷えを起こしやすいといった弱点がある。

 冬場でも汗をかく作業現場やスポーツシーンでは相性が悪いため、同シリーズでは、蓄熱粉末素材を練り込んだポリエステル糸を使用。そのポリエステル糸に吸汗速乾加工を施すことで保温性と吸汗性を両立させた。同素材は、人体と環境からのエネルギーを吸収し発生した熱を蓄え、保温効果を高める。

 消臭機能も持たせ、汗の臭いの原因とされるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸だけでなく、加齢臭の原因とされるノネナールにも効果が期待できる。