LIVING-BIZ vol.101(2)/特集 寝具寝装モノ作り

2023年12月19日 (火曜日)

〈生産量減で厳しさ/コスト差縮小で国内へ一部シフト/輸入・国内生産とも減少〉

 2023年の寝具寝装は、輸入・生産数量とも9月まで前年同期を下回り、寝具関連メーカーにとっては厳しい環境にある。その中で海外とのコスト差縮小による国内縫製への一部シフトや、サステイナブルな取り組みが進展する。

 財務省の貿易統計によると、23年1~9月のふとん輸入数量は、前年同期比6%減の1368万枚。このうち人造繊維ふとんは2%減の1171万枚と微減ながら、羽根・羽毛ふとんは24%減の137万枚、その他のふとんは14%減の61万枚にとどまる。国内生産も同様に厳しい。経済産業省の「生産動態統計」によると、23年1~9月のふとん生産は、前年同期比10・9%減の167万枚となっている。

 輸入・国内生産数量の減少は、新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要の反動減や、旅行など「外出」支出の増加、物価高や先行きへの不安による節約志向の高まりの影響を受ける。23秋冬も、気温が低下した11月中旬以降冬物が売れているが、9、10月の落ち込みをカバーするまでには至っておらず、全体の販売数量は前年同期を下回っているとみられる。

 一方で、フル稼働している国内の寝具縫製企業もある。寝装・インテリア企画製造のリュクス(大阪市西区)は、国内2生産拠点がフル稼働している。国内の生産拠点は大量生産型ではないが、「円安で海外製とのコスト差がほぼなくなっている」(金子忠正社長)とし、比較的ロット数が小さい需要が国内に流れているととらえる。

 コロナ禍が落ち着き訪日外国人や国内旅行者が増加する中で、宿泊施設や飲食店向けのクッションやカバー、ウエアの受注が増えている国内縫製企業も見られる。

〈サステの取り組み進む〉

 アパレルに比べて遅れていた寝具のサステイナブルな取り組みも進む。

 寝具製造のフロンティア(兵庫県多可町)は、大阪府泉佐野市、山梨県都留市にふとんの再生工場を来年開設する。兵庫県で稼働中の工場は自治体などと連携して年間14万枚余りの寝具を回収するが、2工場の開設で24年に回収能力を30万枚程度に倍増させる。内橋毅社長の長男の堅志氏が社長を務める寝具の回収・再生サービス「サステブ」などを手掛けるyuni(東京都渋谷区、ユニ)と連携して取り組みを広げる。

 寝具製造卸・小売りのイワタ(京都市)は、二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの羽毛ふとんの販売を始めた。無染色・無漂白の生地と羽毛を使用し、再生エネルギー由来の電力使用や定期的なメンテナンスによる製品の長寿命化などとともに、環境事業に資金を拠出して対価にクレジットを受け取り自社の温暖化ガス排出量を相殺するカーボンオフセット・プログラムを羽毛ふとんに付与。一般社団法人more treesとの連携で、高知県中土佐町の森の保全活動に生かされ、森がCO2を吸収することで、イワタ自体では削減が難しい製造と仕立て直し工程で排出する温室効果ガス排出量を相殺し、CO2排出量実質ゼロを実現する。

 東レの短繊維事業部の中島健太郎部長は、サステな取り組みは「入場券」のようなもので寝具でもモノ作りの前提になるとし、「(環境商材が)さらに市場に受け入れられるにはストーリー性が必要」と強調。ストーリー性を持たせるなど、どのようにサステ商材を差別化するかも重要になる。

〈“銅”で保温性向上/「メタルギアDX」開発/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいはアルミ蒸着による熱線反射保温素材「メタルギア」を進化させ、銅合金の薄膜加工によって保温性だけでなく洗濯耐久性にも優れた「メタルギアDX」を新たに開発した。同素材は生地、不織布などに加工することで強アルカリ、強酸性にも耐える高洗濯耐久性とともに、抗菌性など複合的な機能を持つ特殊素材となる。

 耐久性では市販の洗剤で洗濯した場合、通常のメタルギアでは10洗前後からアルミの剥離が見られるが、メタルギアDXでは10洗でも銅合金がほとんど剥離せずに残り、高い耐久性を持つ。

 熱線(赤外線)反射に加え、透過率を抑えることで保温性を向上。さらに熱線を蓄えることで蓄熱保温性にも優れる。抗菌性もあり、1平方㍍当たり30㌘の不織布の場合、抗菌活性値(2・0以上で99%の死滅率)・初期で黄色ブドウ球菌が5・9、肺炎杆菌が6・0となる。保温性が高く、抗菌性も高いことから掛けぶとんや防寒の裏地などへ提案する。

 他にも羽毛代替として粒状ポリエステルわたにした「グレンゲラン」の提案も強化。優れたクッション性(回復性)や、細やかな空隙によるエアリーな着心地、フィット感を発揮し、繰り返し洗濯もできる。

〈前年比10.9%減/23年1~9月のふとん生産〉

 経済産業省の「生産動態統計」によると、従業員20人以上の事業所の2023年1~9月のふとん生産は、前年同期比10・9%減の167万枚だった。全てのアイテム項目で前年同期を下回っている。

 掛けふとんは16・4%減の30万533枚、敷ふとんは6・1%減の64万8257枚、こたつふとんは27・6%減の3万4260枚、羽毛・羽根ふとんは11・7%減の68万9546枚だった。