LIVING-BIZ vol.101(3)/特集 寝具寝装モノ作り/シキボウ/リュクス/東レ/ユニチカトレーディング/岩本繊維

2023年12月19日 (火曜日)

〈インナー素材を応用/保湿機能素材に動き/シキボウ〉

 シキボウは寝具寝装向けで、インナー用素材を応用し、肌触りを追求した編み地などを提案する。

 11月にユニチカトレーディング(UTC)と開いた合同総合展で、特殊紡績法でコントロールしながら毛羽を出し、膨らみ感と柔らかさを表現したインナー用途など向け「ふわポップ」と、吸水速乾機能糸「シードライハイパー」を掛け合わせて、機能と風合いを兼ね備えた編み地を寝装用へも提案した。

 同展では、シキボウのアレル物質フリー加工「ラモルフェ」と、UTCの無撚糸調編み地「ソフバルグリーン」を掛け合わせた敏感肌に対応する素材も提案。ソフバルグリーンは、ポリ乳酸繊維を使い、染色時に加水分解で乳酸などに分解されることで無撚糸風の糸に仕上がり、空気を含んだふんわりふっくらとした風合いになる。

 シキボウの寝具寝装向けは、子会社の丸ホームテキスタイルを含めて、生地、“側”(中わたを入れる前の半製品)売りが中心。2024年3月期は羽毛ふとん向けが伸び悩んでいる一方、保湿機能のある素材が一般用途のカバー向けなどで微増している。

〈国内生産2拠点フル稼働/海外とのコスト差縮小/リュクス〉

 寝装・インテリア企画製造のリュクス(大阪市西区)の国内2生産拠点がフル稼働している。円安で海外製とのコスト差が縮小し、海外生産と比べて小中ロットに柔軟に対応できる点などが生産拡大につながる。

 グループ企業に、ふとんカバーなどを製造する縫製工場のリュクス工房(愛知県蒲郡市)、枕・クッション製造のピローテック(和歌山県紀美野町)がある。リュクス工房はふとんカバーで月間1万2千枚程度、ピローテックは枕で月間約5万個生産できる。両拠点とも1日8時間フル稼働しているという。

 リュクス工房は国内協力工場も含めて年間約25万枚の生産体制を構築。2020年1月、純正国産表示制度「J∞クオリティー」企業認証も取得している。

 国内の生産拠点は大量生産型ではないが、「円安で海外製とのコスト差がほぼなくなっている」(金子忠正社長)中、比較的ロット数が小さい需要が国内に流れているととらえる。スペースを早めに管理する計画生産で生産効率を高め、需要増に対応する。

 中国にも生産拠点があり、合弁でマットレスや枕、クッションを製造する寧波明輝寝具(浙江省)、ふとんカバーや敷パッド、キルトケットを製造する安丘徳隆寝装用品(同)のグループ企業を持つ。

〈寝装用ポリわた3分の1供給/環境商材に「ストーリー性」/東レ〉

 東レの短繊維事業部は、寝具用途で、ペットボトルリサイクル繊維「&+」(アンドプラス)や、ポリエステル機能原綿のさらなる浸透を図る。

 国内寝具用ポリエステルわたは、ミル消費(糸・わたメーカーの国内生産から輸出量を除き、海外からの糸・わたの輸入を加えたもの)で月1500トンほどあり、同社はそのうち約500トンを供給する。国内のポリエステル短繊維は愛媛工場で生産し、機能原綿を強みの一つにする。ただここ数年、輸入わたとの競争が激化している。

 その中で、大手量販店向け掛けふとんの中わたに、バージン並みの白度やトレーサビリティーを確立したアンドプラスレベルのリサイクルポリエステルが採用されるなど広がりを見せる。「(環境商材が)さらに市場に受け入れられるにはストーリー性が必要」(中島健太郎部長)と強調。日本一ゴミの出ない大学を目指す東洋学園大学(東京都文京区)の学生主体プロジェクト「ゴミプロ」とアンドプラスがコラボレーションしてエコバッグを作るなど、ストーリー性を持った取り組みを重視する。

 機能原綿では、耐久性の高い防ダニ加工と抗菌防臭加工を施した「ダニゲル」などを訴求する。

 ウレタンなど繊維以外の素材の代替需要に向けた開発品の提案も強める。

〈高級“側”の引き合い増/製造工程で低負荷の商材訴求/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは、寝具向けで製造工程でも環境負荷の少ない「ソフバルグリーン」や、引き合いの増えている高級ゾーン向けの羽毛ふとん“側”(中わたを入れる前の半製品)用生地などに力を入れる。

 ソフバルグリーンは、植物由来の糖から作られるポリ乳酸(PLA)繊維「テラマック」を使用し、染色工程で乳酸などに分解させることで有機綿を無撚糸風に仕上げる。PLAは最終的に自然環境下で水と二酸化炭素に分解されるサステイナブル素材。バルキー性に富み軽量でボリュームがあり、タオルやガーゼケット向けに提案する。11月にシキボウと開いた合同総合展ではアレル物質フリー加工などと複合させて訴求した。

 同社は、中高級ゾーン向けの羽毛ふとん“側”用生地を得意とするが、高級ゾーン向けの引き合いが増えているとし、同ゾーンでも要望のあるウオッシャブル対応を進める。

 寝具寝装向けは、2022年10月1日付の組織再編で、同繊維営業部の東京テキスタイル課が担う。2023年4~9月期の寝装向けは前年同期比10%の減収、減益だった。

〈宿泊施設向け売り上げ増/小規模ニーズに対応/岩本繊維〉

 寝装製造卸・小売りの岩本繊維(京都市)は、2023年4~9月期の宿泊施設向けの売り上げが前年同期比77%増と好調だった。訪日外国人や国内旅行者が増加する中で、小規模宿泊施設のニーズなどをとらえた。

 ホテル旅館部門の4~9月期売り上げが5千万円を超えた。5月から問い合わせが増加し、ウエア類が売り上げをけん引した。特に小規模高級旅館からの問い合わせ数が増加。ホテル・旅館が「オリジナル館内着」を求めてインターネット検索した結果、同社のウェブサイトへのアクセス数が前年同期比114%増となり、1年間で新規取引先が100社増えた。

 さらに大手繊維企業の場合、条件が大ロットでの受託だったり、試作時に高いサンプル料金が必要だったりと、小規模宿泊施設のニーズに対応することが難しい場合があるが、同社は小ロットでオーダーメードが可能な自社工場を持ち、サンプルも実費のみか無料のため、部屋数が少ないホテルや旅館に好評としている。

 取り扱い素材の新規投入やリニューアルを積極的に行うこともプラスに働く。顧客に商品の選択肢が増えたことや、デザイン実績が蓄積されて同社からの提案の幅が広がったことが、受注につながっていると分析する。