特集 北陸産地(2)/北陸との取り組み強化/蝶理/東レ/旭化成アドバンス/帝人フロンティア

2023年12月22日 (金曜日)

〈蝶理/産地への糸販売拡大/差別化糸の品ぞろえ拡充〉

 蝶理の繊維事業は上半期(4~9月)が微増収大幅増益で、下半期も堅調に推移している。2025年度に取引額250億円を目指す北陸産地との取り組みも着実に拡大している。

 北陸との取り組みは、原料販売が拡大し、北陸品のテキスタイル輸出も伸びている。北陸の差別化テキスタイルを使った製品展開も進みだし、「北陸でしか作れない商品を使った展開がうまく進んでいる」(吉田裕志常務執行役員)という。

 産地への原料販売は上半期が前年比約10%の増収となり、下半期もここまで同8%増と堅調を維持している。再生ポリエステル「エコブルー」や高伸縮糸「テックスブリッド」、ピン仮撚り糸「SPX」など独自のブランド糸がけん引役。今期は機能性ポリエステル短繊維を使った紡績糸「スパンラボ」の本格展開も始まり、長繊維だけでなく短繊維の品ぞろえも広がった。今後も北陸産地の高付加価値化の動きに対応する差別化糸を拡充していく考えで、「来年はさらに体制を強化していく」とする。

 北陸品の海外への販売は生地、縫製品ともスポーツやファッションなどの用途を中心に伸びている。来年はさらに広げる考えで、欧米や中国向けなど各地域で拡大を図る。

 順調に拡大する環境商材は今期に売上高200億円を計画する。繊維to繊維リサイクルの仕組みなど取り組みを進化させながら来年もさらに伸ばしていく。

〈東レ/ファッション用など堅調/ナノデザイン中心に拡販〉

 東レのテキスタイル事業部門は今期(2024年3月期)、ユニフォーム用途が苦戦する一方、ファッションやスポーツなどが堅調に推移する。

 国内向けはファッション用途が「ナノデザイン」を中心に伸びており、スポーツもアウトドアやアスレジャー、水着などの用途が堅調に推移する。スポーツの海外は欧州向けが苦戦するが、米国向けなどの拡大でカバーしている。欧州は24秋冬・25春夏物での回復を見込む。

 24年は北陸産地と取り組みながら開発を強化する考えで、佐々木康次テキスタイル事業部門長は「日本で糸を開発し、国内で産地とともにテキスタイルにしていく形を続けなければ生き残れない」と話す。製造コストの高止まりなどが懸念材料となる中、開発による価値創造と戦略的プライシングを重視する。

 開発においては、①透湿防水や撥水(はっすい)、吸水速乾など「心地よさ」を実現する機能性②リサイクルポリエステル・ナイロン使いなどサステイナブル商品――などを重視する。サーキュラーエコノミーの切り口で、テキスタイルのモノマテリアル化にも取り組む。

 北陸との協業による開発が順調に進むナノデザインは、「キューティクル」「キナリ」「カミフ」「utsフィット」を軸にさらなる拡大を狙う。機能性を訴求する商品は、「ダーミザクス」「エアータスティック」「プライムフレックス」「カルイシ」の4ブランドを軸にグローバルに拡大していく。

〈旭化成アドバンス/ファッション用順調に回復/北陸品の海外販売注力〉

 旭化成アドバンスの繊維本部の上半期(4~9月)は増収増益だった。当初は期の後半に失速すると予想していたが、落ち込みなく堅調に推移した。

 上半期は衣料用途が増収増益、資材用途が増収微減益だった。衣料はファッション用途が伸び、スポーツやユニフォームなども堅調だった。ユニフォームは製品ビジネスでスポット的な受注が入ったことも増収に寄与した。スポーツは安定して推移し、学販用のニットなども伸びた。

 下半期も増収増益を計画する。上半期に引き続いてファッション用途が堅調に推移するとみるほか、ユニフォームなども拡大を狙う。

 ファッションのアウター用途は、「ベンベルグ」使いが品不足の影響を受けるものの、ナイロンのストレッチ生地の拡大などでカバーしている。ジアセテート×ポリエステルなども着実に伸びてきた。アウトドアが減速しているスポーツは下半期の販売を慎重にみる。市場の回復に時間がかかる懸念もあり、「25春夏向けまで響く可能性がある」とみる。

 北陸との取り組みでは、海外販売のさらなる拡大を狙う。海外展示会にも積極的に参加し、「北陸品の海外へのワークを強める」考え。織物、ニットとも伸ばしていく。

 ニットはスポーツやスクール、インナーなどの用途が強いが、今後はアウター用途などにも拡大の余地があるとみる。このほど開催した総合展でも手応えをつかみ、ニットの拡大に向けて体制も整えていく。

〈帝人フロンティア/海外の失速国内でカバー/スポーツは織物強化〉

 帝人フロンティアの衣料素材本部は今期、昨年好調だった欧州向けのスポーツ用途が落ち込む一方、国内向けの回復や米国向けの堅調などでカバーし、前年比増収で推移する。帝人フロンティアニッティングやフロンティアテックスなど北陸子会社も生産性の向上などで堅調に推移する。

 2024年は北陸産地との取り組みを強化してトップゾーンを伸ばすとともに、タイやインドネシアを中心に海外生産も増やしてボリュームゾーンでも拡販を狙う。

 ニットと織物の強みを融合した開発を強化する。海外スポーツ用途はニットが主力で、長く続く品番を除くと織物の比率は30%程度(数量ベース)。今後はスパン調ポリエステル「ポリリズム」やPTT繊維「ソロテックス」などニットで好評を得る糸を軸に織物の開発も強化し、織物とニットが50%ずつの形を目指す。

 織物が多いユニフォーム用途は、ニットを強化することで拡大を図る。例えばスクールではジャージーに加えて、シャツやブレザーでもニットを伸ばし、ワーキングでもシャツ地などで拡大を狙う。

 北陸産地への糸販売は、衣料用途が安定し、資材用途も堅調に推移する。一方でインテリア用途は来期からの減少を見込むが、その分を海外向けの拡大でカバーしていく。ただ、利益率は円安やコスト上昇の影響を受けており、11月から販売価格への転嫁を進めている。