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三陽商会 大江伸治社長 平均単価「12%上昇」

2023年12月25日 (月曜日)

 三陽商会の大江伸治社長は、上半期(2023年3~8月)において「平均単価が12%上昇している」と明らかにした。価格と価値のバランスが顧客に認められ「大きな成果」と説明している。

円安や素材調達コストの上昇といったマイナス要因もあったが、商品への価格転嫁が進んだ。

 前年同期間との比較だが、この傾向は下半期(23年9月~24年2月)も継続している。同氏が推し進める商品力の強化が実を結んだ。大江氏は20年5月に社長へ就任して以来、プロパー販売比率の向上やセールの抑制、品番数の絞り込みを実践してきた。

 さらにブランド横断型で強みを磨く「商品開発委員会」を立ち上げ、コアとなるアイテム開発を強化している。消費者の購買動向について「当社の商品開発や販売員の地道な努力が認められた。今後も商品力を磨き続ける」とした。

 5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に移行し、人流の回復やインバウンド客の増加も寄与。上半期におけるインバウンド売上高は13億円で、売上高の4・6%を占めた。

 下半期は例年に比べて気温が高く、9月の秋物初動で出遅れたが10月後半から重衣料が動いている。同社の強みである秋冬コートは12~13万円の品番が売れ筋で、基幹ブランド「マッキントッシュ・ロンドン」「ポール・スチュアート」が堅調だ。

 この2ブランドではウール素材のオーセンティックなタイプに加え、軽量で透湿性に優れる機能素材「パーテックス」を採用したアウターが好調に推移している。パーテックスのコートは、婦人服「アマカ」でも売れ筋に浮上した。

 いずれも商品開発委員会が打ち出す商品がヒットし、同氏は手応えを得ている。また、ポール・スチュアートは紳士用のパターンオーダー(PO)スーツも伸びた。今後も大量に商品を仕込んで売り減らすことはせず、品番数を絞り込んだ商品力で勝負する。

 気温上昇や猛暑対策については「春夏秋冬に〝盛夏〟を加えた5シーズン制が適当だと考えている」と述べた。夏物商材の延長で今季のような晩夏シーズンは対応できないとし、8~9月は独立した「(商品開発を含む)シーズン対応が必要」と話している。