伊藤忠商事 商品の価値追求

2023年12月27日 (水曜日)

 伊藤忠商事の繊維カンパニーは25日に東京本社(港区)で開いた会見で、今後は商品力の強化を重要課題に設定する方針を示した。各部門長もこの方針に基づき、2024年以降の展望を語った。

 【ファッションアパレル部門長・中西英雄氏】

 23年4~12月期の業績は、ほぼ全セグメントで前年同期を上回り、計画通りに推移している。新型コロナウイルス禍によるダメージからの回復が進んでいると実感する。

 ただし、今後を見据えると商品そのものの価値を高めるという意識を強くしなければならない。これまで築いた販売力やマーケティング力に加え、消費者から直接評価を受ける商品力も必須となる。

 具体的な重点施策としては、デサントとドームを中心にしてスポーツ・アウトドア市場で存在感を高めていくことを挙げる。生産面をバックアップするため、伊藤忠グループが持つモノ作りのノウハウを生かしていく。既にデサントは、中国大手スポーツメーカー、アンタグループとの連携を強固にしている。

 新たに注力するのがインターネットを使った調達ビジネスだ。9月に中国のソフトウエア会社のSNIFFと合弁会社を立ち上げた。SNIFFは中国・アリババグループと日本市場向け戦略的パートナーシップ契約を締結しており、こうした連携も活用しながら、日本国内での導入事例を増やしていく。既に存在するモノを短期間で調達して商品として提供するというビジネスモデルに可能性を見いだしている。

 【ブランドマーケティング部門長・福垣学執行役員】

 シューズに関しては、24年以降も「コンバース」を軸に商品力を強化する。

 「デサント」や「リーボック」については、われわれの生産背景を生かしたサンプル作りを手掛けており、実際に商品化した後を見据えたサンプルの評価を進めている。

 中高級品分野は、コロネット、ジョイックスコーポレーション、レリアンといった主要な事業会社の業績が前年を上回るペースで推移している。

 しかし、物価上昇に寛容的だった中間層が、値上げに敏感になり始めた。今後は商品と価格のバランスが重要さを増し、価格に対する納得感を消費者が求めることを踏まえた商品提供が課題となる。

 24年度の強化ポイントとして、ジョイックスが展開する「ポール・スミス」を挙げる。ある程度の資金を投入しながら、ブランディングやマーケティングに取り組みたい。

 海外では「アウトドアプロダクツ」の販売が好調で、中国では30億円超(小売価格ベース)、韓国では20億円(同)の売上高になっている。台湾、香港、タイなどを含めると海外売り上げは約60億円に上り、日本の約190億円と合わせると250億円規模にまで成長した。さらに販売を伸ばすための施策を打ち出していく。