回顧2023年

2023年12月27日 (水曜日)

〈婦人・紳士服/基幹ブランド堅調/猛暑対策急務に/紳士スーツPO伸長〉

 大手アパレルが展開する基幹ブランドが堅調に推移した。通勤着やセレモニー需要が回復し、一部のブランドはジャケットやアウターで高額アイテムが稼働。国内産地で調達した高品質な生地を採用し、縫製も自社工場で行うなど、価値を高めた婦人、紳士服に当たりがあった。

 婦人服ではオンワード樫山が展開する「23区」がブランド創設30周年を記念し、女優の杏さんをブランドアンバサダーに起用。さらに都内でファッションショーを開催するなど、新たな顧客層の開拓に乗り出している。ワールドグループのフィールズインターナショナルが販売する「アンタイトル」も品質を高めた施策で売り上げを伸ばした。

 その一方、春先から気温が高く、6月から真夏日が続く状況となった。ジャケット類の販売が苦戦し、ワンピースの稼働が鈍くなるなど、従来のMDが通用しない商況となった。

 紳士服は、通勤着でフォーマル路線への揺り戻しが見られた。パターンオーダー(PO)を含むスーツ販売が伸びた。ただいったん浸透したビジネスカジュアルスタイルの人気は根強く、楽な着心地のセットアップなども堅調。仕事着の需要は順調に回復し、前年に比べ売上高を2割ほど増やしたアパレル企業が目立った。

 三陽商会は「マッキントッシュ・フィロソフィー」の春夏向けで機能性と見栄えを両立させたセットアップを提案。強撚糸のドライな表面感やウオッシャブル機能を訴求した。オッジ・インターナショナルは「ダーバン」の秋冬向けで生地にこだわったスーツやPOシャツを提案している。

〈ユニフォーム/相次ぐ値上げに苦慮/制服MCで高水準続く/バートル売上高218億円〉

 ユニフォーム業界では今年も相次ぐ値上げに苦しんだ1年だった。昨年のような新型コロナウイルス禍による生産・物流の混乱はなかったものの、素材メーカーからの値上げに加え、さまざまなコストアップによって引き続き春夏物、秋冬物で値上げした企業が多かった。売り上げを伸ばしても、販売量が伸びずに減益基調も続いた。

 ただ、行動制限解除による旅行・飲食業の回復やインバウンド需要の拡大を受け、サービス業・飲食業を中心にユニフォーム需要が回復。ワーキングも酷暑によって電動ファン(EF)付きウエアの販売が増えた。

 学生服は昨年に引き続きLGBTQ(性的少数者)への配慮から制服モデルチェンジ(MC)でブレザー化が加速。来年の入学商戦も700校以上の高水準のMC校数が続くことから、学生服メーカーでは新規受注を早めに打ち切り、供給を優先した。素材メーカーや商社も含め、国内生産を強化する姿勢にあるが、縫製工場をはじめ、人手不足によって生産キャパシティーを大きく増やせない状況にあり、改めて人手不足の解消が喫緊の課題となっている。

 人手不足はどの業界も共通の課題ではあるが、企業の中にはユニフォームでオリジナル性を出すことで求人につなげる動きも増加。別注ユニフォーム受注の堅調も目立った。

 ワークウエアではバートル(広島県府中市)が10期連続で2桁%の増収を達成。23年11月期は売上高218億円となり、業界での話題をさらった。今期も2桁%増の売上高260億円を計画。快進撃がどこまで続くのか、関心が高まっている。

〈寝具インテリア/ホテル向け好転/寝具は課題解決型へ/環境取り組み活発〉

 国内外の旅行客回復でホテル向けは好転するが、「ウチ」から「ソト」へ向かう消費マインド、物価高による節約志向の高まり、不安定な天候与件などから、寝具業界には厳しい一年だった。

 春夏物は肌寒い日が続いて中だるみし、秋冬物は厳しい残暑で鈍い出足に。11月後半からの気温低下で盛り返すものの、主力の羽毛ふとんは節約志向もあり伸び悩む。

 そうした中、睡眠を含む生活スタイルの変化への対応、環境負荷軽減など課題解決型の商品提案が加速する。人工知能(AI)による各人に最適な寝具提案は広がり、電動ベッドでは健常者向けリラックス用途主体の開発が進む。環境対応では、解体・分別しやすいスプリングマットレスなどが好評。羽毛ふとんリフォームは節約も兼ねて需要が増える。

 インテリア業界も、盛り上がりに欠けた。インテリアに関わりの深い国内建設市場は、住宅価格の上昇によって新設住宅着工戸数が低迷。さらに人件費や物流コストの上昇、原材料価格の高止まりの影響が収益の押し下げ要因になった。サンゲツによると、2023年4~9月の壁紙、塩ビシート、カーペットなどの国内市場全体の出荷数量は前年同期並みか減少した。

 その中でサンゲツ、東リの23年4~9月期は過去最高益だった。市場環境は必ずしも良くないが、物流や施工の機能強化、内製化による製造原価低減などが寄与した。

 カーペットメーカーや使用済みタイルカーペット回収企業、再生原料化企業が参加し、日本リサイクルカーペット協会(東京都千代田区)が11月に設立されたことも大きなトピックスだった。

〈タオル/回復まだら模様/各種コスト高続く/国内供給網の維持を〉

 2023年の前半は新型コロナウイルス禍からの回復需要があり、音楽やスポーツのイベント用途、宿泊業を中心とする業務用途、企業ノベルティーなど法人需要、インバウンド回復に伴う店頭販売用途などのタオルの製販に好調さが見られた。

 フォーマルギフト、冠婚葬祭など既存の主力用途はコロナ禍の数年で生活様式の変化があったとみられ、限定的な回復となった。

 特にGMSなど既存の店頭販売用途では消費者に節約志向が広がる中、コロナ禍の間の「巣ごもり需要」の反動もあり、タオルの需要そのものが減退しているとみられる。

 夏以降は製販ともに停滞感が濃くなり、製造卸、メーカーとも企業ごとの好不調の濃淡があった。好調な企業も長期的な見通しは立てにくい――との指摘が目立つ。

 綿花価格は最高値の時期を抜けたとみられるが、高止まりが続く。染料・薬剤などのほかエネルギーコスト高も継続しており、停滞感はそれらを卸・販売価格へ転嫁してきた影響もあるようだ。

 国内の愛媛・今治、大阪・泉州の両タオル産地では慢性的な労働力不足が指摘される。その一方で、ここでも最低賃金の上昇など新規採用コストだけでなく既存の労働力を維持するための福利厚生の充実などに充てるコスト負担が増えている。

 産地の労働力不足は織布や染色加工などの労働集約型の部署だけでなく、営業や製品企画など事務作業部門にも既に波及しつつある。

 労働人口の絶対数が足りない――との指摘もあり、女性や高齢者など潜在的な労働力を雇用、活用できる細かな職場改善、機器の活用やシステム改善による多能工化、省力化による対応が模索されている。