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検査機関/新たな道が見える2024年/カケン/ボーケン/QTEC/ニッセンケン/ケケン

2024年01月04日 (木曜日)

 検査機関は転換期を迎えている。大量生産大量販売というビジネスモデルからの脱却、盛り上がりを欠く衣料品消費などから一般試験は劇的な回復が見込めない状況にある。一方で、環境関連やバイオ、人権、非繊維など、各検査機関が力を入れてきた分野の注目度は高まっている。2024年以降は新たな道が見えてきそうだ。

〈伸びる分野の需要取り込む/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、25年度(26年3月期)を最終とする中期経営計画を推進している。昨年10月に就任した眞鍋隆理事長は「サステイナビリティーに関する試験やCSR監査をはじめ、伸びていく分野の需要を取り込む」とするなど、2年目の24年度も計画を確実に実行する。

 現中計は「より良い暮らしのために」を最終目標にスタートし、顧客と職員、社会貢献の三つを大切にしながら事業を組み立てている。環境やサステ、人権など世界的にも大きな潮流となっている分野、社会的な貢献ができる分野に焦点を当てることで成長を図っていく。

 その一つが海洋プラスチック汚染の一因ともいわれている繊維くず(ファイバーフラグメント、FF)に対する試験だ。国際NPOであるマイクロファイバーコンソーシアムの試験ラボの認定も取得しており、FF測定試験の依頼には積極的に応じるとしている。

 そのほか、CSR監査やライフサイクルアセスメント(LCA)算定サービスなども実施している。昨年4月に開始したLCA算定サービスは、問い合わせや依頼件数が増えており、展示会などで訴求を図っていく。他産業の需要も取り込む。

〈“品質パートナー”へ転換/ボーケン〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、納品前試験を中心とした検査機関から、依頼企業の課題解決に積極的に貢献する“品質パートナー”への転換を進める。

 吉田泰教理事長は「現在は当機構にとって“第三の創業期”。依頼企業と幅広いネットワークがある。第三者試験機関として担う役割があるはず」と話す。その一翼を担うのが品質支援事業本部。品質基準書や商品チェックリストの作成サポートや工場での品質管理監査の支援と改善のための生産技術コンサルティングを行う。

 ESG(環境、社会、企業統治)に関する情報開示、サステレビューの提供、環境負荷情報算定の支援も担う。依頼企業に対して開示のための重要課題の探索、国際的な開示の枠組みであるGRIスタンダードに基づく開示方法などに関する研修などを提供する。

 GHG、LCA算定の支援も注目が高い。GHG算定はまず自社の排出量算定をサポートし、LCA算定も国際標準規格(ISO)に基づく算定方法導入を支援する。

 こうした活動に実行する人材育成にも力を入れる。主体的に社会や業界の課題を見つけ、相談される関係を築くなど未来をけん引する人財を輩出することを目指す。

〈中経完遂へ財団一丸で/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、24年度に中期経営計画の最終年度を迎える。後半も「試験技術の開発」「営業体制の強化」など、中経で掲げている施策に取り組んでいく。この間も職員は成長を遂げており、山中毅理事長は「満足できる結果が出せると思っている」と期待を込める。

 中経では、試験技術の開発と営業体制の強化に加え、「DXでの効率化」「人材育成」「新ビジネス追求」に取り組んでいる。

 これらは順調に推移し、ホームページの刷新やタレントマネジメントシステムの導入などを行った。今後も財団と職員が一丸となって中経の完遂を目指す。

 QTECは「経済的価値、社会的価値、環境的価値の創出」を使命と位置付けているが、その中で「人権」への取り組みを重要視している。「顧客に選ばれる検査機関」「100年続くQTEC」の実現に不可欠な要素の一つと捉えているためで、ガイドラインの作成にも着手している。

 検査機関を取り巻く環境は厳しいが、「職員の意志力・対応力・行動力は飛躍的に向上している」とし、さまざまなことが変化している今を好機と捉えて「変革と実行をさらに推し進めてくれると信じている」と強調した。

〈衣食住の総合検査機関へ/ニッセンケン〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、「ライフ アンド ヘルス(L&H)事業本部」を中核とする。同事業本部が堅調に推移する中、駒田展大理事長は「衣食住関連の総合検査機関としてさらなる成長を目指す」とし、人々が健康で安心・安全に暮らせるソリューションの提供を強化する。

 衣料品消費の回復の遅れ、材料費や薬品代の上昇など、検査機関を取り巻く状況は厳しい。その中でL&H事業本部は、2023年度上半期(4~9月)も前年同期を上回る数字を確保した。「エコテックス」の認証業務と化学分析業務が堅調だったことが寄与した。

 増えているのが有害化学物質の検査依頼だ。世界中で規制が進むPFAS(有機フッ素化合物)は、「エコテックス」でも昨年1月に繊維や皮革、アパレル、履物での全面使用禁止を公表しており、ニッセンケンも依頼に積極的に応じる。

 バイオケミカルでは、微生物関連の新試験を顧客と共同で開発した。

 今後も幅広い分野の多様な評価技術や試験、認証業務を取り込むことで衣食住関連の総合検査機関にふさわしい事業ポートフォリオへの組み替えを図りながら、さらなる成長につなげる。

〈新試験、認証、人権DDで/ケケン〉

 ケケン試験認証センター(ケケン)は、自身で対応できる試験項目を増やすことで売り上げの拡大につなげている。エシカル(倫理的)な繊維製品を認証するテキスタイル・エクスチェンジ(TE)の認証機関として認証事業の拡大にも力を入れ、全体の成長を図っていく。

 対応可能な試験項目の増加では、1年間で10項目の増加を目指している。昨年もマイナスイオン測定試験や吸水ショーツの試験への対応を可能にした。そのほか、ストレス臭の試験、傘試験、プラスチックの抗菌・抗ウイルス試験などにも幅を広げている。抗菌性に関してはアクネ菌の試験に応じる。

 中長期的な視点では、認証事業の育成を課題とする。2023年度は前年比50%増の見通しとなるなど、確実に増えている。「3年後には最低でも現在の5倍ぐらいの売上高に成長させたい」(林克優理事長)と話す。

 昨年は、人権デューデリジェンス(DD)アセスメントサービスの提供も開始した。TEの「GRS」認証と日本繊維産業連盟のガイドラインを照らし合わせた独自のチェック項目を用意している。審査は1ユニット単位で実施し、約2時間で終了する。今後需要は増えていくと予想している。