繊維ニュース

特別インタビュー/東レ 大矢 光雄 社長(後)/中経目標達成へ着実に/事業構造改革は原点回帰

2024年01月05日 (金曜日)

――東レは、2025年度(26年3月期)が最終の中期経営課題を進行中です。

 中経では、持続的な成長の実現や価値創出力強化、競争力強化など、五つの基本戦略を掲げています。その中で「東レグループサステナビリティ・ビジョン」の実現に貢献する事業・製品群のSI(サステナビリティイノベーション)事業、デジタル技術に関連するDI(デジタルイノベーション)事業を軸に積極拡大を図っています。

 23年度も炭素繊維やEV(電気自動車)をはじめとする関連分野で投資を実行しました。次世代モビリティーで組織・製品・地域横串の連携による迅速かつ総合的なソリューション提供といった価値創出力強化のための取り組み、戦略的プライシングなどの施策を進めました。

――24年度から中経2年目に入ります。

 五つの戦略の残りは、「人を基本とする経営」の深化、リスクマネジメントとグループガバナンスの強化です。先の三つと合わせてこの基本戦略そのものが変わることはなく、25年度の定量目標に向かってしっかりと取り組みます。順調に拡大している事業は2年目以降も確実に成長・拡大させる方針です。

 ただ、地政学リスクやインフレといった経済を下押しする要因もあって、事業ごとで進展の度合いに凸凹が出てきています。不可逆的な市場やモノもある程度見えてきました。高成長・高収益事業を拡大して収益改善を図り、低成長・低収益事業の構造改革を継続的に実施していきます。

――構造改革の対象としている事業は。

 中経策定時から構造改革を盛り込んでいる低成長・低収益事業がありますが、事業を取り巻く環境や経済情勢が極端に変わりましたので、特定の会社や特定の事業も新たにピックアップして昨年7月にその構造改革に着手しました。繊維事業ではポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)とポリエステル短繊維が対象です。

――どのような改革を進めていますか。

 紙おむつ用途が主力のPPSBは、原点に立ち返り、日系を中心とするグローバルメーカーと連携して付加価値品を生み出します。量的拡大の投資は行いませんが、付加価値品生産のための投資は検討します。ポリエステル短繊維はハイエンドへの提案を視野に入れつつ、さまざまな施策を講じます。

――国内繊維産地については。

 繊維のサプライチェーンは長く、家内工業もその一端を担っています。家内工業を中心に高齢化が進み、モノ作りが難しくなっていると聞きます。これまでは企業同士の垂直連携で産地を強くしようとしてきましたが、水平連携も産地には必要になるでしょう。また、商品の開発と提案を続けていくことも重要です。東レも繊維産地をサポートします。(おわり)