年頭所感2024

2024年01月05日 (金曜日)

〈経産省製造産業局/GX、DXと経済安全保障/繊維分野などで資源循環促進〉

 経済産業省の伊吹英明製造産業局長は年頭に際して、日本経済はコストカット型のデフレ経済から、持続的な賃上げや活発な投資でけん引する成長型経済への転換局面を迎えているとの考えを示した。今年は、さらなる投資の活発化と価格転嫁を促すことで、もう一段の賃上げ実現を目指し、成長と所得向上の好循環を進めていく方針。

 そのための政策の重点は、「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「経済安全保障」の3軸による投資の促進を挙げる。

 GXについて「企業だけで取り組むには負担が大きいものには官も前に出て支援していく」とする。さらにGXだけでなくサーキュラーエコノミーの実現という観点から、金属、蓄電池材料、繊維分野での資源循環に取り組んでいく。

 産業界が今直面する課題は「官も民も一歩前に出て取り組まないと解決できない」とし、対話を通じて将来につながる日本の経済基盤を共に形作っていきたいとした。

〈日本化学繊維協会/環境配慮型繊維の普及へ/海外の環境規制情報を収集〉

 日本化学繊維協会は2024年も「中期活動方針2025」に掲げる「サステイナビリティーの推進」などに取り組む。大矢光雄会長(東レ社長)は「化繊業界が自らの社会的責任を果たす」と話す。

 サステイナビリティーの推進に向けて環境配慮型繊維(リサイクル繊維、バイオ原料由来化繊など)の普及を進める。加盟各社に対して研究・製造・加工工程の開発加速を促し、製品による環境負荷低減(温室効果ガス排出抑制、環境負荷物質低減など)に取り組む。

 海外で繊維製品に対する規制強化が進みつつあることから、情報収集に力を入れる。資源循環システム構築など社会実装に向けて、経済産業省の論議に参加し情報提供と提言を行う。

 中期活動方針では「競争力の基盤維持・強化」も掲げる。5月に韓国で開催される「第14回アジア化繊会議」に向けて会長国として主催国の韓国と協力するほか、アジア化繊産業連盟標準化作業委員会の共同事務局として各国・地域の協調体制構築と標準化による先端繊維素材の普及を図る。

〈日本紡績協会/天高く飛躍する年に/綿製品リサイクルJIS化へ〉

 日本紡績協会の竹内郁夫会長(東洋紡社長)は、2024年に向け「引き続き、高付加価値製品や高機能素材の開発を進めていくとともに、人権問題への対応や、SDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・企業統治)など環境問題に対する取り組みがますます求められている」と話す。

 紡績業界では、国内企業の競争力の裏付けとなる技術力の強化や次世代への技術継承、人材育成についての課題を挙げる。持続可能な社会の実現に向けて環境配慮素材の開発やリサイクル素材の活用、古着の再資源化、綿製品リサイクル製品の日本産業規格(JIS)化、国際標準化に向けて引き続き取り組む考えを示す。

 紡績各社では人権方針の策定や「責任ある企業行動実施宣言」を行い、「日本繊維産業連盟が策定した人権ガイドラインを順守している」としている。

 ジャパン・コットンの需要拡大に努め、国内外に日本製品の良さをPRする活動を今後も推進する。「辰年は景気が良くなると言われており、業界全体が未来に向けて天高く飛躍する年となることを祈念する」と語った。

〈綿工連/産地存続へ適正価格求める/「仲間支援していく」〉

 日本綿スフ織物工業連合会(綿工連)の平松誠治会長(丸松織布社長)は2024年について、「企業存続の一番の課題である後継者問題や若い人材の確保は適正価格の取引なくして達成は不可能」との考えを示し、品質・納期を守った上でコスト対策に最大限の努力を続けながら、「適正な対価を主張していくことが何よりも重要」と言う。

 綿スフ織物業界では一昨年に始まった原材料高、エネルギー高が昨年も続き「非常に厳しい経営が続いた」。綿工連傘下の産地企業の多くは取引先の理解を得ながら生地価格や織布加工料金の改定を実施してきた。

 その上げ幅は十分ではなく、「いまだ採算的に厳しい状況にあることは変わらない」。そのため24年の最優先の克服課題に品質向上、納期管理、コスト低減に努め、さらなる価格改定を掲げる。

 今年も綿工連事業の一つである一般財団法人での助成金事業を継続実施する。19年度から申請書類の簡素化などを図った結果、年々申請件数が増え、50社を超えた。「引き続き前向きな仲間を応援していく」