繊維ニュース

年頭所感2024/中企庁/東レ/帝人/クラレ/三菱ケミカルグループ/カネカ

2024年01月09日 (火曜日)

〈中企庁/持続的成長と賃上げ目指す/価格転嫁を強力に推進〉

 中小企業庁の須藤治長官は年頭所感で「投資、イノベーション、所得向上の三つの好循環を起こし経済を成長軌道に乗せていく」との方針を示し、その上で持続的な成長・賃上げを実現するためには、価格転嫁の強力な推進と生産性向上、省力化投資の三つが肝要とした。

 今年は、年2回の「価格交渉促進月間」とフォローアップ調査、300人体制の下請けGメンによるヒアリングを踏まえた指導・助言の実施を通じて、「交渉と転嫁が継続的に行われる取引慣行として定着すること」を目指す。さらにサプライチェーン全体の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言の拡大や実効性の向上を進めていきたいとする。

 生産性向上に対しては、業務効率化や新製品開発に向けた設備導入、デジタル技術で企業を変革するDX対応などの前向きな投資をIT導入補助金やものづくり補助金などを通じて支援し、小規模事業者持続化補助金、新規輸出一万者支援プログラムで事業者の販路拡大を後押しする。

 省力化投資では、カタログから選ぶように省力化対応製品を選べる、簡易で即効性がある支援を5千億円規模で実施。「賃上げ促進税制」の拡充は、税額控除率をこれまで最大40%のところ45%とする。

〈稼ぐ力取り戻す/東レ 社長 大矢 光雄 氏〉

 中期経営課題で東レグループが持続的に成長していくための事業領域として設定したSI事業とDI事業の拡大は、企業理念「新しい価値の創造を通じて社会に貢献」の具現化に向けた活動そのものである。また、温室効果ガス排出量削減など、環境に関する社会や顧客からの要請に応えることが事業継続の必要条件となる。稼ぐ力を取り戻し、収益性を改善させるための戦略的なプライシングが重要な施策になる。数量と価格の最適バランスから利益の最大化を図る。

〈努力が結実する1年に/帝人 社長 内川 哲茂 氏〉

 昨年に「JOURNEY TO ONE TEIJIN」というパーパス・ブランディングプロジェクトを開始しており、われわれに内在するパーパスを言葉にしていきたい。苦しい時に自分を支えてくれるのは昨日までの自分の行いだ。努力や頑張りだけで全ての問題が解決するわけではないが、努力なしに結果は出ない。苦しい状況にある今だからこそ、われわれのパーパスを明確にし、思い描く未来に向かって歩みを進め、努力が結実する1年になるよう社員と共に頑張る。

〈「3つの挑戦」で意識改革/クラレ 社長 川原 仁 氏〉

 2024年度は創立100周年に向けた中期経営計画の折り返し地点。そこで掲げた「3つの挑戦」(「ネットワーキングから始めるイノベーション」「機会としてのサステイナビリティ」「人と組織のトランスフォーメーション」)への活動が進んでいる。これら意識改革を伴う活動は、気を抜けばすぐに元の状態に戻ってしまう。「3つの挑戦」を自分事と捉えて積極的に関与してほしい。

〈企業価値の向上を確信/三菱ケミカルグループ 社長 ジョンマーク・ギルソン 氏〉

 経営環境は厳しいが、2年前から取り組んでいる経営方針も定着しつつあり、業界における当社グループの競争力は非常に良い位置にある。昨年に機動的でシンプルな組織の構築や人事・財務などの主要業務のデジタル化など、グループ全体の変革を加速させた。このマインドセットによって急速に変化する業界で生き残り、成長していく。4月からは新CEOの優れたリーダーシップのもと、強固な基盤の上で事業が成長し続け、企業価値が向上していくことを確信している。

〈新しいことにチャレンジ/カネカ 社長 田中 稔 氏〉

 今年の抱負は「新しいことへ積極果敢にチャレンジし成果を出す」とした。昨年は長かったコロナの重石がとれ、明るさが戻ってきた。しかし、ウクライナ問題の長期化や中東情勢の緊迫化など地政学的リスクが景気の回復を遅らせた。欧米でのインフレや中国経済のシュリンクなど出口の見えない状況が続いている。予期せぬ大規模な自然災害も発生し、今年も世界の動きから目が離せない1年となる。市場や需要構造などの変化を的確に捉え、本質的課題を構造化し、挑戦的な大きな志に向かう構想を描こう。