繊維ニュース

北陸産地/地震の影響長引く恐れ/物流などにも懸念

2024年01月12日 (金曜日)

 元日の能登半島地震は北陸の繊維企業にも影響を与えた。インフラの復旧が徐々に進みだし、稼働を再開する工場も出ているが、被害が大きい地域では復旧に時間がかかりそうだ。

(星野公清)

 素材メーカーでは東レが9日から石川工場の稼働を再開するなど動きが戻りだしているが、まだ影響は残っている。三菱ケミカルの富山事業所は8日から再開し、1月中に全プラントを稼働させる予定だが、トリアセテート繊維「ソアロン」はまだ生産を再開していない(10日時点)。北陸には撚糸や織布などソアロンのテキスタイル生産に関わる企業も多く、被害を受けたところもある。中には半壊した下請け工場もあるもようで、糸の生産が再開しても通常に戻るには時間を要するとみられる。1社ずつ詳細の確認を進め、支援・対応策を検討していく。

 北陸3県の中で、福井県は現時点で設備が止まっているなどの被害はないとみられる。富山県は揺れが激しく、経編みの城端産地では糸などの落下や設備が動くなどの被害があったが、「5日から工場内の整理を始め、今週から稼働を再開している」(川田ニッティンググループ)など復旧への動きが進んでいる。

 石川県では能美市や白山市など金沢より福井側はおおむね稼働を再開している。繊維企業も多い中能登地区では稼働を再開する企業がある一方、大きな被害を受けた企業も見られる。既に再稼働した企業でも、インフラの問題が残っている。

 丸井織物(石川県中能登町)は、9日から全ての織布工場の稼働を再開した。操業休止は5日間にとどめ、稼働率は90%以上としている。糸加工などの協力会社も再開し、遅くとも15日には通常に戻る見通し。

 ジャテック(金沢市)は中能登地区にあるサイジング、糸加工、織布の3工場とも安全確認をしながら順次稼働を再開し始めている。従業員の出社率は95%ほどに戻った。ただ、11日時点では断水のためサイジングができない状況。織布や糸加工の設備には大きな被害がないものの、地震で動いた混繊機があるなど調整が必要な機械も一部ある。

 シモムラ(石川県小松市)は中能登に近い石川県宝達志水町にある押水工場の稼働も再開した。織布のソフィーナ(新潟県長岡市)などそのほかの工場も建屋や設備への被害は軽微で8日から稼働を再開している。

 ただ、能登では大きな被害を受けた工場もあり、稼働を再開したところでも被災した社員の生活やインフラの復旧などの問題は残る。物流もまだ通常に戻っていない。今は被災地への救援物資が優先されているため、「かほく市より北にはモノを送りにくい」(糸商)状況が続いている。

 当初は被害がないとみていた設備でも、稼働させると問題が見つかるケースもある。既に稼働を再開した機械についても「外観では把握できないダメージを受け、数カ月の稼働後に問題が出る機械があることも懸念される」といった見方もあり、「通常に戻るには時間を要する可能性がある」との声が聞かれる。