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どうなる2024(1)~首脳の声から今年を占う~/紡績/高付加価値素材を海外へ

2024年01月17日 (水曜日)

 新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、繁華街に人流が戻り、経済は緩やかに回復基調を示す。一方で1日に発生した能登半島地震や長引くロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの衝突などが経済にも影響を及ぼしている。新年号アンケートなどによる繊維産業各業界の首脳の声から今年を占う。

 紡績では2024年の繊維産業の景況について「変化しない」という見方が大勢を占める。世界経済に及ぼす大きな事象がない限り23年と比べ「基本的には大きな変化はない」(クラボウの北畠篤取締役)との見方を示す。

 ただ、コロナ禍の収束後、「必要な物しか買わないという消費者の購買行動が定着している」(日清紡テキスタイルの村田馨社長)、「コストプッシュ型インフレおよび供給能力低下によるインフレが進み、実質賃金低下が続いている」(シキボウの加藤守取締役)といった点を懸念。さらに各アパレルメーカーはコロナ禍後の在庫不足を補うため見込み発注を大幅に増やしたが、残暑の影響などで「想定していたより店頭の動きが振るわず、在庫過多の傾向にあるため、作り控えが起こる可能性が否めない」(東亜紡織の戸口雄吾社長)と警戒する。

 原材料価格の見通しでは「人件費も上昇傾向にあり人手確保のための待遇改善が必然、価格に反映せざるを得ない状況が加速する」(同)として「上がる」という声や、「高止まりの状況が継続する」(ニッケの金田至保常務執行役員)と「変化しない」という意見も。「先行の不透明感は否めない」(日清紡テキスタイルの村田氏)として「分からない」という本音ものぞかせる。

 繊維製品の売上高規模が拡大する業態については百貨店やSPA、ネット通販を上げる声が多かった。各業態でばらつきはありながらも「高付加価値商品を扱う百貨店、消費者のニーズをつかむSPA、その他専門店、ネット通販も相対的には好調を維持する」(クラボウの北畠氏)と予想する。インバウンド需要で「より目的を明確にした購入層が増加する」(シキボウの加藤氏)といったことも予想される。

 各社の今年の課題はやはり海外市場の拡大だ。「コロナ禍で遅れていた海外での販売拡大が重点施策の一つであり、欧州連合(EU)・米国・中国を主なターゲットとしている」(ニッケの金田氏)、「生産拠点のある国での内販に加え、自社の付加価値素材の欧米への輸出にチャレンジする」(シキボウの加藤氏)と意気込む。TPP(環太平洋連携協定)活用によるベトナムからの欧米輸出やスキームの構築など「ベトナムの拠点を活用した販路拡大」(東亜紡織の戸口氏)も加速しそうだ。