繊維ニュース

繊産連 会長に東レ会長の日覺氏

2024年01月22日 (月曜日)

 日本繊維産業連盟(繊産連)の会長に、東レの日覺昭廣会長が18日付で就任した。会長の交代は2017年以来7年ぶり。鎌原正直前会長は最高顧問に就いた。日覺会長は、一致団結して諸課題に取り組むとした上で、「(国内産地などの)現場を実際に見て回り、実態を確認し対処していきたい」と語った。

 同日に東京都内で開いた2024年総会で新役員が決定した。総会後に日覺会長と鎌原最高顧問、富¥文字(U+20BB7)賢一副会長・事務総長が会見し、国内繊維産業が抱えている課題や方向性などについて説明。サステイナビリティーへの対応、中小企業を対象としたデジタル革命への対応や海外展開支援を進める考えを示した。

 日覺会長は、国内の繊維産業について「ハイレベルな商品を作って世界で展開するなど存在感を示してきた。ただ、人手不足という大きな問題がある」との認識を示した。続けて「世界に通用する実力は持っている。いかに持続させるか。サステイナビリティーが重要になる」と話した。

 そのほか、環境対応や人権問題など、国内繊維産業にはさまざまな取り組みが求められていることにも言及。「各企業とも着実に取り組みを進めている」としつつ、「できていない企業が1社でもあれば業界全体が問われる。現場に足を運び、課題などを把握して対処していきたい」とした。

 鎌原最高顧問は、「2030年にあるべき繊維業界への提言(2030提言)」について触れた。20年1月に公表した後に感染症が拡大し、「活動、コミュニケーションともに難しく、スケジュールが遅れた部分もある。厳しい環境が強い刺激になり、良い方向に進むことを期待している」と語った。

 繊産連としては、24年も2030提言の取り組みを踏襲して進める。その中で人材の確保、循環経済(サーキュラーエコノミー)への対応、取引適正化、中小企業のデジタル革命への対応、中小企業の海外展開支援、通商問題への対応、情報発信力・ブランド力強化、税制問題への対応という八つの方針に基づいて活動する。

 日覺会長との一問一答は次の通り。

  ――これまでも企業経営者として、また日本化学繊維協会会長として繊維業界に携わってきました。繊産連の会長として改めて日本の繊維産業を見ると。

 国内の繊維企業は、全ての企業ではありませんが、高機能品や高感性品をはじめとするハイレベルな商品を世界で展開してきました。その評価は高く、世界に通用する実力は持っていると思っています。実力はあるので、産業をいかに持続していくかが課題と言えるでしょう。

  ――繊維産業を取り巻く状況は厳しい。

 新型コロナウイルス禍でアパレル市場が一時的に落ち込みましたが、世界の繊維市場は今後も拡大することが見込まれています。この市場獲得のために各国は競争力強化、技術力のレベルアップへの取り組みを強化しています。

 また、企業は、稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立が不可欠になっています。カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ビジネスと人権など、企業が対応しなければならない課題も増えています。これらに対応しつつ、新しい価値の創造が求められます。

  ――新たな課題に対し、繊産連では「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」などを策定しています。

 産地企業が直面している人材不足の問題への対応は極めて重要ですので、ガイドラインの一層の普及に努めます。各企業が取引先を含めた働く人の人権尊重といった社会的責任を果たし、ビジネスを進めやすい環境整備を目指します。同時に特定技能制度への分野追加などにも取り組みます。

 人権問題などの課題については会員企業も前向きに取り組んでいます。ただ、1社でも取り残されると業界全体が問題視されてしまいます。どのような課題があるのかを知るためにも現場を訪問し、まずは実態を把握したいと考えています。その上で対応策を検討していきます。