近藤紡績所 企画糸で生地ストック
2024年01月25日 (木曜日)
近藤紡績所(名古屋市中区)は、「企画糸」と呼ぶ独自開発の差別化糸を使った生地のストック販売に乗り出す。
大町工場(長野県大町市)で生産した企画糸を使い、国内の各産地の織布やニッター、染色加工場と協業しながら生地を開発。既に高級ブランドを中心に採用が広がり、販路開拓が進む。
同社は糸売りで定番糸の販売が中心だったが、最近では独自開発の企画糸の販売を強めている。新型コロナウイルス禍前までは企画糸の販売は1~2割程度だったが、直近では6割程度まで拡大した。
国内企業で唯一取り扱うことが可能な「海島綿」(シーアイランドコットン)使いのブランド「renment」(レンメント)といった製品を展開してきたが、企画糸使いの生地をストックし販売するのは初めての試み。「企画糸を見てもらうためには生地にした方が分かりやすい」(塩原規広執行役員営業部長兼アパレル事業部長)として、昨年から企画糸を使ったオリジナル生地の開発を進めてきた。
2022年から産地企業が連携で展示会を開く「テキスタイル・ネットワーク・ジャパン」(TNJ)に参加し、そこで知り合った和歌山や浜松、西脇といった各産地の織布、ニッター、染色加工場など10社と連携。さらに生地から製品までの組み立てに知見のあるアパレル事業部の2人が営業部に移り、ストックしQRで供給できる生地を企画した。
生地には「大町工場の企画糸を協業の中で作る」(塩原氏)ブランドとして「近藤紡績所」「大町」「ファクトリー」「ヤーン」の頭文字を取って「KOFY」(コフィー)と名付けた。備蓄するのは80番手の糸を使ったサテンと、60、80番手それぞれの甘撚りの糸を限界まで編み立てたモックロディ(高密度の編み地)の3種類。いずれも綿100%だが、合繊のような光沢感と天然素材ならではの肌触りの良さ、糸作りからならではの上質感を追求した。
昨年後半から販売を本格化し、1㍍当たり3千円超と価格的に高いものの、既に「追加発注を掛けなければいけない」ほど好評。生地は協業先も展示会での発信や販売することができ、さまざまな販路開拓につなげる。
今後はストックする生地の種類を増やす。縫製の徳島工場(徳島県藍住町)で出た端材を反毛し、再びバージン原料と混ぜて空紡糸にする技術の確立も進め、その空紡糸を使った独特な風合いのある生地も開発。オープンエンド精紡機の新台への入れ替えも計画する。