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綿紡績大手4~12月期 目立つ収益悪化

2024年02月14日 (水曜日)

 綿紡績大手の2023年4~12月期決算が出そろった。繊維事業では第3四半期(23年10~12月)に入り、暖冬による秋冬物の需要停滞、ユニフォーム地で値上げが続いたことによる在庫調整の動きなどによって前年同期より収益の悪化が目立った。

円安に加え、エネルギーコストや原材料のコストアップで価格転嫁が追い付いていない状況も浮き彫りとなった。

 繊維事業で唯一、増収だったのが日東紡。外出機会の増加によって芯地の販売を堅調に伸ばしたが、コストアップを受けて減益。暖冬が続いたこともマイナスに働いた。

 減収でありながらも増益だったのはダイワボウホールディングス(HD)。合繊・レーヨン部門ではフェースマスク、制汗シートの需要が増えたが、衛材用原綿の在庫調整による販売減などで減益だった。産業資材部門は電子部品向けカートリッジフィルターが半導体メーカーの稼働率悪化などの影響を受け苦戦したものの、価格転嫁が浸透し増益。衣料製品部門はインナー製品の価格転嫁が十分に浸透せず、米国向け輸出も市況低迷を受け苦戦した。

 富士紡HDの生活衣料事業も減収だったものの、増益を確保した。繊維素材は物流や原材料費の高騰、円安で厳しい環境が続いたが、インナーブランド「BVD」などの繊維製品は店頭販売を中心に健闘。ネット販売では継続的なSNS、検索広告に加え、転換率・リピーター率の向上施策も奏功した。

 シキボウは価格転嫁の効果によって営業損益の赤字幅を縮小。中東民族衣装用生地輸出やニット製品事業の販売などは堅調だったものの、原糸販売が低調なことに加え、ユニフォーム地の販売では在庫調整を受けたことで、売上高は横ばいにとどまった。

 クラボウは減収となり、営業損失が上半期よりさらに拡大。原糸販売では原綿改質の機能綿糸「ネイテック」などがインナー向けで順調だったが、海外子会社が苦戦し減収だった。テキスタイルはユニフォーム向けが価格転嫁による受注減で低調だったが、カジュアル向けが好調で増収。繊維製品は在庫調整で受注減となり減収だった。

 各社は下半期から収益改善を見込んでいたが、昨年10、11月は高気温で重衣料の販売が鈍化。そのため来秋冬に向けての発注が遅れ気味で、第4四半期(1~3月)に入ってからも工場の稼働が不安定になるなどで採算の悪化が続く。厚生労働省が公表した23年12月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金が2年連続で減少するなど、衣料品をはじめとする繊維製品を取り巻く環境は厳しい。通期での計画達成に暗雲が立ち込める。