繊維ニュース

地域で工夫衣類回収事業/官民協業の形もさまざま

2024年02月14日 (水曜日)

 循環型社会の構築に向け、全国各地で使用済み衣類の回収を促進する動きが広がっている。企業や地方公共団体が連携し、繊維関連企業のサポートを受けながら、さまざまな形で循環の仕組み作りを進める。(強田裕史)

 環境省の「使用済衣類回収のシステム構築に関するモデル実証事業」は、先進的な衣類回収に取り組む地方公共団体、リユース関連事業者、市民団体の支援を目的とする。地域の実情に応じた創意工夫で新規性・先進性を発揮するだけでなく、実効性も要件に加えて公募した。結果、採択された事業にはそれぞれの地域性が表れている。

 愛知県豊田市は、若者も参画する産学官民連携の脱炭素社会推進プロモーション事業「ニューバイブズ」を展開する。その中で、市内企業の使用済みユニフォームをケミカルリサイクルによって再製品化する実証実験を開始した。ユニフォームは市内の就労継続支援B型事業所のアルディが回収・分別し、JEPLAN(ジェプラン、旧日本環境設計、川崎市)と豊島が衣類回収サービス「ブリング」を活用した再製品化を担う。

 ユニフォームを供給する新明工業は、車両生産設備の設計・製造などを手掛ける。今回供給したのは工場で使用した作業着400着・約180㌔で、当面はノベルティーグッズへの再生を計画するが、「将来はユニフォームに再生させたい」と言う。

 同事業では、廃棄物処理やビルメンテナンスのホーメックスも、ユニフォームを提供した。

 徳島県上勝町は、地域を挙げた「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)」の活動により、年間で排出されるごみのうち約4㌧をリユースし、リサイクル率約8割を達成している。

 同町で廃棄物中間処理施設を含む複合公共施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」を運営するBIG EYE COMPANYは、廃棄衣類の削減と循環を図る「くるくるファッションプロジェクト」を実施している。

 昨年秋に、同センターを中心に徳島県内2拠点で服の回収を行った。回収した服は組成分析した上で、パートナー企業の協力の下、リユース・リメーク・リサイクルへとつなげる。昨年末には同センターで一般参加可能なリユースイベントを開催し、2月下旬にはリメーク品の服が東京の古着店で限定販売される予定だ。

 広告代理業の京葉十二社広告社(東京都江戸川区)は2019年から、子供服の交換会を開催している。自社で運営する地域情報サイト「まいぷれ江戸川区」の閲覧者は子育て世代が多く、子供が着られなくなった服の処理に困る声を頻繁に聞いたことがきっかけとなった。

 公共施設などで年2回開く交換会では、持ち込んだ服と同じ数の服を持ち帰るルールを設けた。しかし、1回で3千着を超える数が集まる現状ではとても在庫をさばき切れず、地域の祭りで「おゆずり会」を開くなどしても出口としては十分ではないと言う。子供服の循環のニーズが表面化しながらも、子供服のサイクルの速さに対応する困難さも浮かび上がる。