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紡績/活発な設備投資/強み磨き成長へ

2024年02月21日 (水曜日)

 紡績各社は設備投資を活発に行っている。強みとなる技術に磨きを掛けながら、高収益化事業への成長を描く。(於保佑輔)

 毛紡績各社は、LGBTQ(性的少数者)への配慮からブレザー化が進み、高水準の学校制服モデルチェンジによって増収基調が続く。ニッケは衣料繊維事業で、昨秋から増設した環境配慮型ウール・ポリエステル混紡糸「ブリーザ」を生産する革新精紡機が稼働。今期に入り3年間で66億円の投資を計画しており、夏にはグループの大成毛織(愛知県一宮市)で織布の準備工程を増強し、学販向け生地供給の安定に努める。

 さらに産業機材事業では50億円の投資計画のうち、40億円を不織布分野に振り分ける。OA機器向けの不織布でインドネシア工場の増強や、石岡工場(茨城県石岡市)に新設備を導入し、使用済み繊維製品のリサイクル事業を本格化する。不織布分野をユニフォームや不動産開発に次ぐ安定した収益事業として「三つ目の柱」(長岡豊社長)に育てる。

 トーア紡コーポレーションは、インテリア産業資材事業の主力工場である四日市工場(三重県四日市市)で投資を加速。カーボン繊維では建機向けの需要拡大を受け、レピア織機を増設し生産量を3割増強した。今年は不織布の生産ラインを強化し、7月から生産量を2割拡大。自動車、土木資材向けを深耕する。

 衣料事業でも紡績の宮崎工場(宮崎県都城市)にワインダーを増強したほか、今年は省人化、デジタル技術で企業を変革するDX化を進め、生産効率化を推進。「外注を含め、しっかりとしたサプライチェーンの構築を目指す」(戸口雄吾取締役)。

 一方で綿紡績各社は下半期に入ってから収益悪化で苦戦が目立つが、中東民族衣装向け生地輸出は円安もあって勢いに乗る。新型コロナウイルス禍前よりも輸出が盛んで、「枯渇感がある」(シキボウの加藤守取締役)ほど堅調な動きが続く。

 シキボウでは染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)で外注していた加工を自社に取り組み、これまでの加工量を倍増させる。昨年、紡績の準備工程や織機を増設したインドネシアの紡織加工子会社メルテックスとも連携させながら、ユニフォーム地と中東向け生地の加工で「バランスを保つ」(加藤取締役)。老朽化が進む連続染色の加工設備についてもスチーマーやベーキング機の更新を検討する。

 日清紡テキスタイルは、インドネシア拠点から中東向け輸出を拡大。同拠点のローカルを含めた海外売上高は3割まで増え、特に中東向けが倍増した。昨年、日本から液流加工機を移設するとともに、渦流紡績機「ボルテックス」2台を導入。加工や紡績では新台への置き換えを検討しており「新しいモノ作りにつなげる」(村田馨社長)。

 独自技術による差別化素材の販売比率を高めるクラボウは、インドネシア拠点にコンパクト糸の紡績機を増設し、販売好調な原綿改質の機能綿糸「ネイテック」の増産を図る。裁断片などを独自の開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」でも、タイ・クラボウに反毛機を導入し生産能力を増強。安城工場(愛知県安城市)のテキスタイルイノベーションセンターを中心に開発力を高めながら「クラボウで“買う理由”を創る」(北畠篤取締役)ことで繊維事業の高収益化を進める。