中国の日系生地商社/備蓄品が最大の強み/市況悪化でも内販伸ばす

2024年02月22日 (木曜日)

 中国の日系生地商社が、市況悪化の中でも生地内販を伸ばしている。ネット通販ブランドの小ロット・短納期ニーズに応える備蓄品が最大の強みだが、懸念材料もある。(岩下祐一)

 備蓄品を手掛ける日系生地商社の内販が健闘している。「ゼロコロナ」政策が解除されたことで、2023年の年初こそアパレル市況の回復が期待されたが、不動産不況などを背景に消費者マインドが低迷し、逆に悪化した。

 にもかかわらず、サンウェルと瀧定名古屋の中国法人の23年業績は、前年比増収増益となった。双日ファッションの中国法人は増収減益だったが、減益は次の成長に向けた投資によるもので想定内だ。22年は上海都市封鎖のあった特殊な年だったとは言え、市況悪化の中での各社の増収は、目を見張るものがある。

 こうした企業は、15年前後に日本向け販売から内販に軸足を移した。消費のアップグレードを背景に高品質の生地が求められるようになり、内販は成長を続けた。新型コロナウイルス禍からのリベンジ消費が起こった21年、複数の企業が過去最高の売り上げを達成した。好調を支えるのは、ネット通販ブランドの小ロット・短納期のニーズに応える備蓄品と、新陳代謝を繰り返す中国市場の特性だ。

 ネット通販ブランドは、18年ごろから台頭し、コロナ禍後に急成長した。日系生地商社の主力顧客も、従来の中高級ゾーンの百貨店アパレルからネット通販ブランドに入れ替わった。こうしたブランドは引き付け型開発で、短納期・小ロットの生地を求めており、日系生地商社のトレンド感のある高品質な織物の備蓄品にフィットしている。

 しかも市場では「新しいブランドが次々に現れ、一部が淘汰(とうた)され、また別のブランドが現れる――の繰り返し」(スタイレム瀧定大阪の中国法人、時代夢商貿〈深セン〉の山田智彦総経理)。市況が悪化した今でもこの動きは止まらない。

 こうした環境は備蓄品が適しており、バイオーダー品による取り組み型の商売は難度が高い。各社の日本製バイオーダー品の顧客が、レディース「JNBY」や「アイシクル」、メンズ「単農」(ダンノン)など流行に流されず、自社の企画を大事にする限られたブランドであることがその証だ。

 一方、日系生地商社の備蓄品も万能ではない。市況の悪化を受け、在庫をできるだけ持ちたくないネット通販ブランドが小ロット・短納期志向をさらに強めていることで、各社の機会損失が増えている。顧客が求める量の備蓄品を用意できないケースや、日本で備蓄する商品の輸送時間を顧客が待てないケースがあるからだ。中国製備蓄品の充実などで、機会損失を減らしていくことが必要といえる。

 日本の産地の縮小も懸念される。中国製がメインとは言え、顧客の一部は、日系生地商社に日本製を期待している。地場競合企業の生地の品質が良くなってきていることも気掛かりだ。