特集 染色加工(8)/市場環境の変化に対応/伏見織物加工/京都紋付/藤原染工/ヨネセン/共栄染色

2024年02月28日 (水曜日)

〈「凡事徹底で成長へ」/最優先課題に利益率向上/伏見織物加工〉

 丸編み地の浸染・捺染受託と丸編み地製造受託の伏見織物加工(京都市)は今期(2024年8月期)、利益率の向上を最優先課題に挙げる。あらゆる原料や製造コストの上昇が続き利益を圧迫しているため。今期は既存顧客からの発注量の増加と同時に、生産性の向上とロス削減を徹底する。

 同社は液流染色機の高圧タイプ20台、自動スクリーン捺染機1台を持つ。染色を受託するほか、顧客の要望に合った生地の企画・販売もする。生地の編み立ては和歌山などの工場に委託し染色・加工を同社が行う。企画した生機を染色受託先の顧客に提案し、その染色をするケースもある。

 プリントでの生産性の改善とロス削減を図るため最近、既存の自動スクリーン捺染機に新たな機能を持たせる改造を加えた。それにより作業効率や柄合わせの精度が高まった。この改造機を活用するため取引先へのプリントの提案を強める。

 森田浩二社長は「売上高は21年8月を底に回復に向かっているものの、利益率は今も厳しい状況」とし「利益を改善するための凡事を徹底する。今年は辰年だが、当社にとっては無駄や非効率を“絶つ”、そして成長に向けて“発つ”年にしたい」と力を込める。

〈中国で染め替えサービス/〝日本ならでは〟をPR/京都紋付〉

 黒染めの京都紋付(京都市)は年内をめどに、衣料品を黒に染め替えるサービスを海外で展開する。まずは中国が最初となりそうだ。

 北京に本部を置く旅行会社と2月上旬に染め替え事業の代理店契約を結んだ。これにより初の中国進出が年内に実現する。この旅行会社は中国企業の経営者らに向けて、日本企業でパートナーとなり得る企業を定期的に紹介するツアーを企画している。京都紋付がツアー客に自社の染め替えサービスをプレゼンテーションしたことがきっかけとなり、今回の代理店契約に発展した。

 今後、この旅行会社が京都紋付の現地“窓口”となって、中国の法人に染め替えビジネスを紹介し、現地企業から染め替えの需要を取り込む。中国でも知名度があり、高価格帯とされるファッションブランドとのコラボレーションも想定する。

 今後、米国や欧州の展示商談会に出展し染め替え事業を発信する計画もある。海外進出後も染め替えは日本と同様に京都の工場で行う。日本ならではの黒紋付の染めを守ると同時に、日本ならではの付加価値として海外にアピールする戦略だ。

〈シンガポールに製品販路/「フジガーゼ」実績着々/藤原染工〉

 糸染めの藤原染工(兵庫県西脇市)はワンピース、布帛製Tシャツ、繊維雑貨といった独自に企画、販売する製品事業で輸出に力を入れる。2023年にシンガポールのセレクトショップで販売実績が出ており、今年は同国内での取扱店舗を増やす。

 同社の製品事業は20年に布マスクでスタート。新型コロナウイルス禍で不織布マスクが足りず、布マスクの需要が急激に高まったことがきっかけ。同社は長らくニット糸の染色を本業とし、播州織との関わりは少なかったが、製品事業は本社が播州織産地にあることにちなみ、生地には播州織を使う。「フジガーゼ」の名称でブランディングし現在はハンカチ、タオル、繊維雑貨、婦人向けの衣料品も企画する。

 国内では神戸、大阪、東京の百貨店や商業施設内のセレクトショップで販路を広げてきた。昨年、海外に商機を求めて、兵庫県の海外事務所に相談したところ、有望な小売店が見つかりシンガポールへの輸出が決まった。今年も年4回程度、同国へ出張し卸先と販売数量を増やす方針だ。

〈マフ染めを4本目の柱に/ワインダー増強で生産性向上/ヨネセン〉

 ヨネセン(奈良県香芝市)は今期(2024年12月期)、前期比横ばいの売り上げを計画する。自動車用途の拡大を見込むほか、マフ染めを本格的に拡大する考え。現在はチーズ染め55%、綛(かせ)染め35%、スペースダイ10%の比率だが、マフ染めを4本目の柱に育てる。

 廃業が進んだこともあってマフ染めを日本でできる染工場は非常に少なくなったが、同社は20年に体制を整えてマフ染めを始めた。チーズ染めに比べてストレッチ性やかさ高性などの特徴を出すことができ、近年はポリエステルとナイロンを中心に衣料用やサポーター用などで受注を着実に伸ばしている。

 足元では引き合いがさらに増えており、新規用途を含めて本格拡大を狙う。月5トンの生産能力だが、需要の拡大に応じてワインダー増設も検討していく。

 チーズ染めは自動車用途の回復がけん引しており、今期も前年並みを見込む。オプションマットは原着化が進む中でも先染めならではの風合いや色を求める声が根強くあり、今後も高級車向けを中心に力を注ぐ。

 設備投資では4月に染色用ボビンに巻くワインダー(SSM社製)を新たに導入して生産性向上を図る。取り組み先との関係を強化する中、綛染めでのワインダー増強も継続して進めている。同社によると綛巻きでは日本最大級の生産能力を持つと言う。

〈最新の調液装置導入/高い精度で色合わせ/共栄染色〉

 靴下用の糸染めを行う共栄染色(兵庫県加古川市)は3月にクラボウの最新の調液装置を導入する。これにより高い精度で糸の色合わせができるようになる。

 同社は糸商社を介して、奈良靴下産地や加古川靴下産地などの靴下工場にニット用の染め糸を供給する。チーズ染めに加え綛(かせ)染めも手掛ける。保有する染色機は全て日阪製作所製。

 野口輝二会長は今回の設備投資について「目下のところ、靴下用の糸染めの仕事は少ないのが実情だが、海外へ染色の仕事が今も流出する中で、精度の高い仕事ができなくては国内で生き残ることはできないと考え新たな投資を決断した」と話す。

 今後は新たな調液装置を活用し、色の精度の高さや同社ならではの高付加価値加工を強みに受注増を狙う。

 同社は60双、80双などの極細綿糸を綛でシルケット加工できる希少なノウハウを持つ。新たな風合い加工の開発にも力を入れており、綿素材に麻のような特徴を持たせる擬麻加工、柔らかな風合いを持たせるソフト加工、ストレッチ加工も施すことができる。