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クラボウ・ユニフォーム部/高付加価値とコト戦略で攻勢/東南アジア市場も開拓

2024年03月12日 (火曜日)

 クラボウのユニフォーム部は来期(2025年3月期)に向け、高付加価値素材へのシフトを進めるとともに、カスタマイズ提案可能なアシストスーツや体調管理システムといったサービスを軸とした“コト戦略”で市場に攻勢を掛ける。経済成長が著しい東南アジアへも、現地の展示会へ参加しながら販路開拓に乗り出す。

 今期(24年3月期)は、大型別注の受注などで第3四半期まで計画通り推移したが、第4四半期からカタログ向け定番商品の生産調整の影響を受け、受注に急ブレーキがかかった。前期に新型コロナウイルス禍による生産・物流の混乱を受けて作り過ぎた反動と、市況悪化によって「今回は“谷”がものすごく深い」(絹本良和ユニフォーム部長)。販売単価の上昇の一方で販売数量は減少し、円安傾向や薬品・染料価格の上昇などによって利益面も厳しい状況が続く。

 ただ、希望的観測としながらも「24年の後半から通常に戻る」との見方で、それまでに高付加価値商品の販売へシフト。特に難燃素材は大手企業を中心に労働者の安全性確保に対する意識の強まりで、ISO(欧州国際規格)などへの適合を求めるニーズが増えつつあり、素材難燃「ブレバノ」、後加工難燃「プロバン」の拡販に力を入れる。

 ブレバノの販売量は大口案件が決まるなどで、前期に比べ大幅に増加。今期から本格生産に入ったプロバンもフル稼働が続き、綿100%だけでなく合繊混などの開発にも取り組む。

 アシストスーツ「CBW」は展示会での試着などを通じて認知度が向上。現在着用されているユニフォームと色や素材を合わせるカスタマイズ提案ができ、価格も3万9800円(税別)からと値頃感があるため、大手企業や機械工具卸系のカタログ通販などへ販路が広がる。体調管理システム「スマートフィット・フォー・ワーク」も複数の大口顧客への採用が決まり、CBWとともに販売量は倍増と堅調に伸ばす。

 今月1日までベトナム・ホーチミンで開かれていた「ベトナム国際アパレルファブリックス&繊維関連技術専門見本市」(VIATT)に出展。20~23日にはインドネシア・ジャカルタの「INATEX」、6月にはタイ・バンコクの「SAFE@WORK」といった繊維関連の展示会に相次いで出展を予定する。

 東南アジアでも安全衛生意識が高まる中、CBWや難燃素材などで「日本人以外にどう評価されるかを確かめる」ことで市場開拓の可能性を見極める。

〈4月受注分から値上げ〉

 クラボウは、ユニフォーム地を4月1日受注分から値上げする。今回の値上げは22年から第4次となる。引き続き薬品や染料などのコストアップをはじめ、海外での労務費上昇によるドルベースでの購入単価や物流費、人件費などの上昇によって「価格改定は避けられない状況になっている」(絹本部長)。採算割れが続く状況では「事業の継続が難しく、優秀な人材確保による業界の活性化につながらないということを取引先へ丁寧に説明する」として理解を求める。