不織布新書(2)/エム・エーライフマテリアルズ/構造改革進め生き残り/発足半年、今後の戦略は

2024年03月26日 (火曜日)

 三井化学と旭化成の不織布事業合弁会社、エム・エーライフマテリアルズ(MAL、東京都中央区)が発足し約半年が経過した。ポリプロピレンスパンボンド不織布(SB)のライバルが手を結んだことは不織布業界に大きなインパクトを与えた。「シナジーの最大化を図り、グローバルで存在感のある不織布メーカーを目指す」MALの現状と今後の戦略を探った。

〈銘柄や設備を統廃合/ならではの開発課題〉

 MALは2023年10月2日、資本金5億円(三井化学60・62%、旭化成39・38%)で設立。SB、メルトブロー不織布(MB)のほか、通気性フィルム、形状保持繊維、フィルター製品の製造販売を行う。

 設立までは事務局ベースの活動で、生産・開発・販売の現場レベルの活動は10月以降になる。「経営手法や言葉に違いはあるものの、考え方は似通っており、親和性は高い。一体感のある運営ができている」と、三井化学出身のMALの簗瀬浩一社長は手応えを示す。

 一方で、事業環境は想定以上に厳しさを増す。特にMALの主力用途、紙おむつなど衛生材料向けは需要減に歯止めが掛からない。国内の減少に加え、海外では紙おむつ需要が伸びているものの、低価格志向が強く、汎用品の競争は激化する。「合弁会社の目的の一つでもあった合理化など構造改革を進めないと生き残れない」と危機感を強める。

 具体的には銘柄統合や生産設備の統廃合で生産効率を高めるとともに、原料一本化によるコスト削減も図る考えだ。「それぞれ1社の時よりできることは多くある」。これもシナジーの一つだろう。

 もう一つは両者の強みを生かした新商品を開発できるかどうか。既に汎用品での競争が激しい衛材用では差別化に力を入れるため、両者の独自品の組み合わせを進める。旧三井化学の中空タイプに旧旭化成の親水加工の組み合わせもその一つだ。需要家のコストダウンになる低目付化も進める。

 ただ、日本、中国では少子化が進んでおり「東南アジアもいずれ同じ状況になる。そう考えると乳幼児用で右肩上がりの絵は描けない」として、同分野ではニーズに対応した新開発を進める。大人用や中国などでは増えつつある、パンツタイプの生理用ナプキンもターゲットに開発を行い「全体の落ち込みを補うしかない」と語る。

〈産業資材比率50%へ/24年度中に組織再編〉

 衛材偏重型からの脱却も課題だ。「将来的に産業資材比率を50%にするのを目標」に掲げており、そのための開発も強化する。例えば旧三井化学のMBは細さを追求してきたが、旧旭化成のナイロン、ポリエステル原料を活用した開発も進めており「1社ではなかなか進まなかったが、新会社ではスピードアップしており、一部、ナイロンMBは顧客での試験に入っている」と言う。

 また、旧旭化成のポリエステルSMS(SBとMBの複合不織布)「プレシゼ」も「評価は高く、旧三井化学の顧客に提案することで広がりが期待できる」。旧旭化成のポリ乳酸(PLA)SB「エコライズ」も同様で、さらに生分解性の高いタイプの開発を進めている。

 産業資材強化のため営業体制も再編する。衛材用途は設立と同時に一本化したが、産業資材用途は旧三井化学が東京、旧旭化成が大阪のまま。「24年度中には用途別の体制に変える」計画だ。

 簗瀬社長は「新合弁会社ならではの開発はまだできていないが、できるだけ早く提案できるように、社員一丸となって取り組む」と話す。それが登場した時、MALの存在感は高まることになる。

〈ANEX2024/5月に台湾で初開催/日系はパビリオン集結〉

 アジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」が5月22~24日、台湾の台北南港展示館1館で開催される。「ANEX」は世界トップクラスの不織布関連企業が集結する世界三大不織布展の一つ。3年に1度の開催で、これまで日本、中国・上海、韓国で行われてきたが、台湾開催は初。日本企業も出展するが、今回は日本不織布協会(ANNA)が初めての試みとしてANNAパビリオンを設ける。

 台湾初開催のANEX2024はアジア不織布協会(ANFA)と台湾区不織布工業同業公會(TNFIA)が主催。展示面積8千平方メートル、世界から350社の出展と2万5千人の来場を見込む。メインテーマは「サステイナビリティ・イノベーティング」。技術開発とマーケティングに関するグローバル・ノンウーブン・サミットや国際不織布カンファレンスも開催される。

 ANNAが今回初めて設けたANNAパビリオンは24社(エフアンドエイノンウーブンズ、王子キノクロス、オーツカ、岡村化成、金井重要工業、金星製紙、クラレ、新江州、新北九州工業、シンワ、ダイニック、大和紡績、髙安、タピルス、帝人フロンティア、東洋紡エムシー、西川ローズ、日本ノズル、日本バイリーン、日本フイルコン、野村商事、廣瀬製紙、三木特種製紙、ユニチカ)の出展が確定。その他、東レ、化繊ノズル製作所、そしてグループ企業のES・インドラマ・ベンチャーズとして出展するJNCが単独ブースを構える。

 ANNAの三木雅人会長(三木特種製紙社長)は「新型コロナウイルス後初のANEXだけに成功させたい。そのためにもできる限り協力する。同時に日本企業がまとまり出展することで情報交換、市場開拓に結び付けたい」と語る。

 その他、中国から112社、台湾から52社、香港から12社、韓国から6社、マレーシア、タイ、それぞれ1社、インド2社、欧州から15社の出展が現在、確定している。

 TNFIAの簡嘉菁理事長(新麗企業執行董事)は「アジアの不織布産業は貿易拠点の中心として今後もあり続けるだろう。そして、台湾での不織布産業の地位も高まっており、ANEXを機にさらに向上する」と述べ、成功に期待感を示した。