不織布新書(5)/帝人フロンティア/タピルス/ダイワボウレーヨン

2024年03月26日 (火曜日)

〈帝人フロンティア/単一素材化の流れつかむ/短カットわたは増設検討〉

 帝人フロンティアの産業資材部門短繊維素材本部は、環境配慮の要請で欧米を中心に単一素材(モノマテリル)化の流れに対応し、車両用クッション材などでポリエステル短繊維の需要開拓に取り組む。また、好調のショートカットファイバー(短カット)は増設を検討しているようだ。

 2023年度(24年3月期)のポリエステル短繊維販売は、自動車生産台数の回復で車両用不織布向けが堅調に推移した。また、短カットは水処理膜支持体用湿式不織布向けを中心に販売量の拡大が続いており、収益をリードしている。そのほか、衛材用途は市況低迷が続いているが、生活資材向けは例年並みで推移した。

 短カットの好調が続いていることから、生産拠点であるタイ子会社、テイジン・ポリエステル〈タイランド〉で生産設備増設が検討されているもよう。一方、堀田敏哉短繊維素材本部長は「短カット以外の用途開発も重要になる」と強調する。

 その一つがポリエステルクッション材「エルク」による自動車シート部材。ウレタン製が一般的な用途だが、欧州を中心にリサイクル性を高めるために単一素材化の流れが加速しており、シート表皮材と同じポリエステルを使用したクッション材への引き合いは多い。グループの自動車内装材メーカー、ジーグラーとも連携して開発と提案に取り組む。

〈タピルス/24年は反転攻勢の1年/顧客と一体で製品開発〉

 メルトブロー不織布(MB)を製造・販売するタピルス(東京都港区)は、2024年度(24年12月期)を反転攻勢の1年に位置付ける。フィルター分野や1次電池用セパレーター用途で顧客と一体となった開発を進めるほか、環境対応にも目を向ける。海外市場の開拓についても継続して力を入れる。

 同社の強みは、極細繊維や極太繊維を使った製品から耐熱樹脂製品、環境対応製品まで幅広いラインアップにある。23年度はフィルター分野やセパレーター用途の需要回復が遅れたことなどから厳しい1年になったが、「23年第4四半期から底打ち感が出てきた。24年は成長・拡大を目指したい」と話す。

 一定の数量を見込むのがマスク分野。ただし、一般用ではなく、医療関連で使われる高性能マスク分野に特化する。機能性はもちろん、二酸化炭素(CO2)フリーの樹脂を活用するなど、環境対応も強化する。国際持続可能性カーボン認証「ISCC」認証の取得に向けて動いている。

 フィルターやセパレーター分野では、顧客の技術担当者とタピルスの技術担当者らによる技術ミーティングを開き、顧客ごとの独自商品を作っていく。技術ミーティングは昨年後半に始動し、既存顧客だけでなく、新規顧客とも取り組む。

 海外では米国市場やアジア市場などでの拡大に力を入れる。タイ子会社のタイタピルスを基点に展開し、現状で1桁%の海外販売比率を着実に高めていく。

〈不織布も“サステ×機能”/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは不織布向けレーヨン短繊維でもサステイナビリティーと機能性を融合した開発・提案に取り組む。

 不織布原綿もグローバル販売に力を入れる。海外市場ではサステへの要求が強いことを生かし、森林認証(FSC)の取得やカナダの森林保全団体であるキャノピーのファッションセクター向け繊維調達分析ツール「ホットボタンランキング」にランクインしていることなどを打ち出す。

 また、カーボンオフセットを組み込んだカーボンニュートラルレーヨン、使用済み繊維製品由来パルプによるリサイクルレーヨン「リコビス」などを不織布用途でも積極提案する。

〈紙おむつ/生産は2割強の落ち込み/輸出はピーク時3分の1〉

 日本の紙おむつ生産の減少が止まらない。経済産業省の生産動態統計によると、2023年の生産量は前年比9・3%減の70万トン強。これはピーク時の17年に比べて22%強の落ち込みとなる。背景には少子化に伴う日本の乳児用の需要減だけでなく、一世風靡(ふうび)した中国を中心とする輸出の大幅な減少が影響している。

 財務省通関統計によると、17年に29万トン強だったおむつ・生理用品輸出(材料を問わない)は、23年に10万トン弱とピーク時の3分の1にまで落ち込んだ。主要仕向け先であった中国に至っては約10分の1の2万4千トン強に縮小する。

 中国でも少子化が顕著だが、新型コロナウイルス禍を経て、日本製紙おむつに対するプレミアム感が薄れ、中国進出する日系衛材メーカー品でもなく、ローカル製品へシフトしていることが大きいといわれる。花王が中国安徽省・合肥工場で、同社主要ブランド「メリーズ」の生産を昨年8月に終了したのは象徴的な出来事だった。

 当然、紙おむつ用を主力とするポリプロピレンスパンボンド不織布(SB)メーカーやエアスルータイプのサーマルボンド不織布メーカーは苦境に陥る。ポリプロピレンSBメーカーでは、三井化学と旭化成が昨年10月に不織布事業を統合したのはその表れ。「合理化を進めないと生き残れない」と危機感を強める。アジアナンバー1の東レも「生産規模の適正化に着手する」など構造改革に動き始めた。わが世をおう歌してきたポリプロピレンSBは変革期を迎えている。

〈テクテキスタイル/4月23~26日に独で開催〉

 「テクテキスタイル」が4月23日~26日、ドイツ・フランクフルト国際見本市会場で開催される。2年に一度開催される同展は世界最大の産業用繊維・不織布の国際見本市と呼ばれ、縫製機器と関連技術の国際見本市「テックスプロセス」も同時に開かれており、50カ国約1600社以上の企業が出展する予定だ。

 今回のテクテキスタイルでは東レグループ、帝人フロンティアグループ、クラレ、カネカの大手合繊メーカーに加え、日本グラスファイバー工業、三洋貿易、萩原工業、DIC、群栄化学、ENEOSテクノマテリアルなどの日系企業が現地法人からの出展も含めてブースを構える。