不織布新書(6)/FANS/金井重要工業/倉敷繊維加工/ダイニック

2024年03月26日 (火曜日)

〈FANS/海外市場で拡販目指す/リサイクル事業化も準備〉

 ニッケグループのフェルト・不織布製造卸であるアンビック(兵庫県姫路市)とフジコー(同伊丹市)が昨年12月に統合して発足したエフアンドエイノンウーブンズ(FANS、大阪市中央区)。初年度となる2024年度(11月期)は海外拠点など生産基盤の拡大を生かし、海外市場での拡販に取り組む。また、リサイクル事業の本格化に向けた準備を進める。

 24年度はここまでやや苦戦する。主力商品「ヒメロン」は、国内の車両向けで自動車メーカー減産の影響が顕在化した。楽器向け羊毛フェルトは中国経済の低迷で需要が落ち込んでおり、中国生産・販売の拡大を見込んでいたバグフィルターも現地の景況悪化から採用が遅れ気味。一方、一般工業資材向けは復調傾向が続いており、OA機器向けも需要が戻ってきた。

 このため今後は「中国以外の市場での拡販が重要になる」(近藤浩行社長)。インドネシア子会社では生産能力増強を決めており、ベトナム子会社も将来の加工能力増強を視野に敷地を拡大した。タイ子会社ではヒメロンの販売が始まった。

 石岡工場(茨城県石岡市)に設備を入れ、使用済み繊維製品のリサイクル事業本格化にも取り組む。9月には設備据え付けが始まり、早ければ12月ごろには試運転を始めたい考えだ。原料となる古繊維の確保に向けて専門企業と話し合いも進めるなど本格事業化に向けた準備を進める。

 また、「FANSとして新商品・新事業の開発にも力を入れる」ことで統合の成果を具体化させることにも力を入れる。

〈金井重要工業/利益率改善へ選択と集中/品種、品番絞り効率向上〉

 短繊維不織布製造の金井重要工業(大阪市北区)は、2025年3月期(24年度)から新中期計画をスタートする。ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布などで構成する不織布事業では「利益率の改善」(源野佳郎取締役不織布事業部長)を目指す。

 今期の不織布事業は微増収となる見通しだが、原燃料高に伴う値上げや特需によるもの。一方で「利益率は低下している」。このため、新中計では「改めて選択と集中」を行うことで、利益率の改善に結び付ける考えだ。

 「需要家に迷惑が掛からない」ようにしながら、品種、品番の絞り込みにも着手する。これにより生産効率を高める。

 今期は設備投資も行い不織布製造所(兵庫県宝塚市)の体制整備に力を入れてきた。既に細かくエネルギー費を把握するための装置も導入しており「ムダを省く」作業も進めるが、来期も体制整備に向けた投資は検討する。

 不織布事業は天井材などの自動車内装材、空調フィルター、研磨材、家庭用タワシなどが主力用途で、自動車内装材はダイハツ生産停止による影響を受けており、今期の業績にも影響を与えた。空調フィルター、研磨材、は前期を上回る水準で推移した。新型コロナウイルス禍での巣ごもり需要が一巡したものの、家庭用タワシも堅調だった。ただ、不織布事業としては原燃料価格の上昇分は補い切れていないと言う。

 同社は不織布のほか、紡績用リング・トラベラ、針布などの繊維機器も製造販売する。

〈倉敷繊維加工/フィルターで新商品開発/半導体関連の期待大〉

 クラボウグループの短繊維不織布メーカーである倉敷繊維加工(大阪市中央区)は、次期中期経営計画に向けて新商品開発に力を入れる。特にフィルター用途に重点を置き、空調や自動車向けに加え、半導体関連用途での拡販も進める。

 2023年度(24年3月期)は、マスク向けが新型コロナ特需減退で低迷したものの、空調フィルター向けが好調だった。工場や商業施設の稼働率が回復したことが背景にある。また、自動車のキャビンフィルターも新商品が好調だった。さらに販売が拡大しているのがグラフト重合加工による金属イオン捕集フィルター「クラングラフト」。半導体製造関連で採用が本格化してきた。

 24年度は中期経営計画の最終年度となる。米澤秀次社長は「次期中計策定に向けた準備を進める」として、特にフィルターで新商品開発に力を入れる。既に帯電性素材を活用した低圧損タイプのフィルター材の開発が進められている。

 クラングラフトもさらなる拡販を目指す。22年に製造設備を増強しており、24年度からは半導体製造装置向け樹脂加工品を製造するクラボウの熊本事業所(熊本県菊池市)との協業で生産能力をさらに高める計画。

 中国子会社の佛山倉敷繊維加工は23年度こそ中国経済低迷の影響で空気清浄機向けフィルターが苦戦したが、1月からは単月で黒字浮上した。自動車のキャビンフィルター向けも好調。今後は加工度を上げることで業容の拡大を進める。

〈ダイニック/展示会用カーペットなど拡大/吸音・遮音もテーマに〉

 ダイニックは、2023年度(24年3月期)が初年度の3カ年中期経営計画を推進している。この中で不織布製品は、事業を取り巻く環境は厳しさが続くものの、利益は中計に沿って進行している。2年目に入る24年度も展示会・イベント用カーペットや「吸音・遮音」をテーマにした打ち出しで成長を図る。

 23年度の不織布製品販売は、展示会用カーペット分野の販売が堅調に推移している。同分野は、新型コロナウイルス禍前と比べて80~90%の回復(敷地面積ベース)と推定されるが、シェアが拡大した。建材分野は中高層向けが堅調で、自動車関連分野向けも昨年11月までは良好だった。

 24年度は、中心製品である展示会・イベント用カーペット分野で生産効率の改善に継続して取り組む。「生産効率改善の今年度目標はクリアしたので来年度はさらなる改善を図る」。吸音・遮音では、フローリングのバッカー材や自動車関連のサイレンサーテープの提案を強化する。

 カーペットは、展示会用が東京五輪以降順調に回復するが、イベント用は回復が遅れていたので「24年度に期待したい」とする。リサイクル・リユースに対応する製品の開発も進めている。バッカー材は建材メーカーとの連携を深め、サイレンサーテープは長年採用されてきたという信頼感を訴求する。

 空調フィルター分野では機能や品質に焦点を当てたラインアップを拡充し、シェア向上に力を入れる。