不織布新書(8)/シンワ/江洲産業/丸三産業/髙木化学研究所
2024年03月26日 (火曜日)
〈シンワ/インドネシアで能力倍増/MB導入し品種さらに拡充〉
長繊維・短繊維不織布製造のシンワ(愛媛県四国中央市)が、国内外で生産能力を増強している。インドネシア子会社のシンワ・ノンウーブンズ・インドネシア(SNI)は2024年頭に2号機が稼働、国内では本社工場に新建屋を建設し、メルトブロー不織布(MB、年産300トン)を新導入するとともに、ナノファイバー不織布も能力を倍増した。
SNIは15年に年産1万2千トンの大型スパンレース不織布設備を導入したが、同仕様の2号機を増設し、生産能力を倍増した。日本と東南アジアで販売するが、「日本のウエットワイパー市場は中国や台湾と競合するが、日本品質、日本のサービスが強み」とみる。
MBは低圧損高捕集性に加え、ポリプロピレン以外にも各種原料を活用できる仕様で、新市場の開拓につなげる。ナノファイバー不織布は試験設備も含めて3台体制とした。化粧雑貨を中心だが、医療用途や特殊フィルターなどの開拓に取り組む。
同社はその他、ケミカルボンド不織布(CB)、サーマルボンド不織布(TB)、スパンボンド不織布(SB)も生産する。CBは競合が少ないこともあって医療用、食品包材用中心にフル稼働する。TBは衛材用途が苦戦するが、飲料用フィルター向けは安定する。
SB(年産4千トン)は衛材向けが苦戦するため、ポリプロピレンだけでなく、オレフィン系複合やPLA(ポリ乳酸)も生産でき、小回りを利かせる特徴を武器に、衛材以外の開拓に取り組む。
〈江洲産業/ISO14001を取得/自動車資材の新商品期待〉
江洲産業(滋賀県長浜市)は、2024年1月、「ISO14001」認証を取得した。自動車資材の拡大を踏まえた対応策でもある。自動車資材用の新商品開発を進めており「確定すれば現有能力で不足する可能性がある」と井上昌洋社長は本格化に期待する。
同社は産業資材用織物の織布・加工、不織布の加工を行う。前期(2023年8月期)は増収増益を達成したが、今期に入って建材、フィルター、自動車資材など各分野が低調に推移する。
需要の落ち込みや中国の景気低迷、さらには自動車メーカーの生産休止などの影響が表れており「売り上げは横ばいを確保できそうだが、利益的には厳しい」と見通す。
一方で、保有するレピア織機、エアジェット織機やディッピング・グラビアコーティング・ナイフコーティングなどの各種加工機を活用した開発力が評価され、試作、開発案件は「相変わらず多い」と言う。
その開発力をさらに強化することを課題に挙げる。「例えば加工であれば樹脂含めた知見を持ち、当社から逆提案できるようにしたい。そのために従業員の意識改革を進める」。同時に繊維・不織布以外のビジネスも検討したいとする。
22年の創業100周年を機に計画していた本社工場拡張は遅れているが、将来を見据え生産体制の整備は検討中。設備投資については、スリット、検反機能を持つ中古のリワインド機2台を譲り受けた。
カメラなどを改造し検反機としての活用を検討する。
〈丸三産業/輸出で為替リスク低減/4月から全商品15%値上げ〉
丸三産業(愛媛県大洲市)は晒し綿や綿100%スパンレース不織布(SL)などの輸出に力を入れる。これまでは売上高の10%強だったが、現在は25%に高まっており「これをさらに伸ばし、30%以上に引き上げる」(渡邊秀幸取締役営業本部長)考えだ。
同社は晒し綿などのコットン加工原料、綿100%SL、各種不織布製品などを製造販売する。
綿の取り扱い量が多いため、一昨年の綿花高騰や円安に伴う原料調達コストが急騰。順次、価格転嫁に取り組むも補い切れていない。このため、4月1日出荷分から全商品を現行比15%値上げする。価格改定は4度目となるが、採算改善には不可欠と判断した。
一方で、円安のリスクを低減するために輸出強化に取り組んできた。同社の晒し綿は顧客が求める要望に合わせて各品種を供給できるのが強みだ。以前から欧米輸出は行うが、輸出を増やすため、アジア向けを強化する。輸出先が不織布、不織布製品まで加工し、日本に輸出し、それらを製品販売子会社、コットン・ラボ(東京都豊島区)を通じて販売するもので「両者にメリットがある仕組み」を整えた。
第1弾商品として、4タイプの使い捨てタオルを昨年11月から発売した。第2弾としては病院向け不織布ガーゼを今年発売した。自社の加工能力の不足を補う効果もある。不織布用ではSL以外の開拓にも取り組む。試作段階だが、未利用綿を使った湿式不織布向けの開発も進める。
〈髙木化学研究所/独自の再生わた技術駆使/「価値の見える化」実現へ〉
再生ポリエステル短繊維製造の髙木化学研究所(愛知県岡崎市)は、独自技術を生かした機能付与型の再生わたの供給に徹する。これまでに培った再生技術に価値を見いだし、環境配慮型素材としての側面をアピールするといった「価値の見える化」にも取り組む。
古くは寝装品や生活用品向けの中わたなどを生産し、現在は自動車向けの吸音材や断熱材向けの供給が主体となる。部位や用途により求められる機能は変わるが、自社の設備をカスタムしながら販売先の要望に応える。あらゆるニーズを具現化して機能に反映するなど輸入わたなどに対し、明確に差別化する。
今期(2024年8月期)は直近で自動車向けの供給が減少傾向にあるが、累計の生産量は前期実績を超えている。昨年6月以降に自動車の生産台数の回復とともに受注が増加したことが主な要因だ。
再生わたは片寄工場(同)で月産で最大500トン程度の能力を持つ。自動車以外の輸送機械向けへの参入も目指しており、研究開発も並行して進める。70年以上“くず”を再生して価値を付与した技術をフルに生かす。
高木優州社長は再生わた事業について「当社の再生技術が、資源の循環や脱炭素社会の実現に貢献できるはずだ」と話す。今後も「素材の高機能化や技術の高度化を目指して、新しい分野への需要にも応え続ける」としている。