不織布新書(12)/化繊ノズル製作所/三景/三木特種製紙/ハビックス/フタムラ化学

2024年03月26日 (火曜日)

〈化繊ノズル製作所/差別化への対応が課題/トルコ市場開拓に注力〉

 化学繊維や不織布用の紡糸ノズル製造大手の化繊ノズル製作所(大阪市北区)は2024年度(25年3月期)、「不織布メーカーが差別化の方向にある。それにいかに対応できるかが課題」(戸川和也社長)として、新商品開発に力を入れる。

 その一つが開発・改良に取り組むメルブロー不織布(MB)のノズルダイ。生産性の向上に加え、2種類の原料を使用でき、紡糸する糸種を変更した混繊タイプも生産可能なタイプだ。

 現在、社内試験機でテスト中。間に合えば5月に台湾で開催されるANEX2024(単独ブースで出展)で、同ノズルダイによる原反サンプルを紹介する。

 今期はMB用やスパンボンド不織布(SB)用がピークアウトし、化学繊維用も中国向けが落ち込んだ。前期比減収減益となる見通しだが、炭素繊維プリカーサー用の紡糸ノズルは好調だったという。

 来期も不織布用は厳しい状況が続く中で、化学繊維用はトルコ市場の開拓に重点を置く。「欧州向けではチャイナプラスワンとしてトルコへの注目度が高まっている。現地の繊維企業の設備投資も意欲的。販売代理店も変更して需要に対応する」。その一環で、6月にイスタンブールで開催される繊維機械展「ITM2024」にも出展する。

 同社は化学繊維、SB・MBのノズル、ノズルダイで培った精密加工技術を生かした新事業にも力を入れており、東江原工場(岡山県井原市)に新工場の建設も進める。

〈三景/不織布製包材の領域拡大/産業資材向け要望増える〉

 不織布製包装資材を製造・販売する三景(名古屋市北区)は、主力商材の業務用風呂敷や食品・外食向け包装材など以外にも事業領域を広げている。特に輸送機械や電子機器の包装材など、産業資材向けの開発依頼が多い。主にスパンボンド不織布(SB)で包装材を手掛けるが、さまざまな仕様や要望に適した素材を活用し、あらゆるニーズに応える。

 倉澤寛社長は「最近では海外向けに、環境配慮型素材を使った包装材への要望もあった」と話す。生分解性を持つポリ乳酸(PLA)原料使いで自動車・家電製品製造企業向けの包装材を開発中。この案件で協業する企業とともに、東南アジアに現地法人の設立も検討するとしている。

 お節料理向けで7割近くの占有率を持つ業務用風呂敷はテークアウト向けが減少傾向もお節料理向けは堅調。環境配慮型SB製や生分解性不織布も供給が徐々に増える。アムンゼンなど合繊の織物製風呂敷も販売量が安定している。

 同社は今年5月に株式会社化して50期を迎える。今後は「100年企業を目指して、さまざまな手を打つ」。その一環として大安工場(三重県いなべ市)への設備投資や増強も優先順位を決めて進める。織物製風呂敷の生産を安定化させるため、縫製工程などの内製化も検討する。

 従業員の育成や教育にも力を入れる。若手の定着とともに、長期間勤続しやすい環境を構築する。

〈三木特種製紙/ニーズ変化の対応課題/生産設備も統廃合進める〉

 湿式不織布製造の三木特種製紙(愛媛県四国中央市)は既存用途でも「要求される物性、機能が変化している。それに対応した商品開発が課題」(三木雅人社長)とする。

 主力は水処理膜の支持体向けだが、その他に電池セパレーター、電気絶縁紙、ワイパー、テープ基材など幅広い産業分野に湿式不織布を販売する。しかし、既存用途は「一つ一つの市場が縮小傾向。一方で、価格が通って動いているのは既存用途でもニーズの変化に対応したもの」として、新商品の開発、提案に力を入れ、品種の統廃合も進める。

 支持体向けも長期的な需要拡大は見込めるが「新型コロナウイルス禍以前とは規格が変化している。その他のフィルター用やテープ基材なども同様」と言う。コロナ禍で従来のサプライチェーンが崩れたこともあり、海外からの引き合いも増加することから、国内外で新商品の提案を強化する。

 生産設備も統廃合を進める。老朽化設備は休止し、新設備にシフトする。2021年末に支持体専用工場を新設し、同分野向けの能力を2・5倍の月産600トンに拡大したが「新ラインへの移管も今春以降めどが付く」とみる。中国・安徽省の電気絶縁紙用2工場も1工場に集約・移設。設備は1ラインに集約したが、不足分は日本からの輸出で補い、維持する。

 同社の上半期(23年8月~24年1月)は、原燃料高騰に伴う値上げは進めたが、販売量が減少したため、ほぼ前年同期並みの売り上げにとどまった。

〈8年の長期ビジョン発表/ハビックス〉

 エアレイド不織布、エアスルータイプのサーマルボンド不織布(エアスルー不織布)製造のハビックス(岐阜市)は2023年度(24年3月期)から8年間の長期経営ビジョン2030をスタートした。最終年度(31年3月期)には連結売上高で150億円以上(22年度120億円)、営業利益率7%以上(22年度は9200万円の営業損失)を目標に掲げる。

 基本方針は①事業の変革②組織・人材の活性化③サステナビリティ経営の実現。基本方針に基づいた経営戦略は五つ。その一つが新事業・新分野創出で、衛生用品の加工事業と、新分野では医療・介護分野の開拓に取り組む。

〈新製法の環境配慮不織布/フタムラ化学〉

 フィルム、セロハンなど製造のフタムラ化学(名古屋市中村区)は、大垣工場(岐阜県大垣市)に置く、環境配慮型不織布「ネイチャーレース」専用設備(月産100トン)を2~3年内にフル稼働させる計画だ。

 ネイチャーレースは「大垣法」と呼ぶ独自技術によりセルロース繊維を製造し、水流交絡で不織布化するスパンレース不織布を一貫生産する。

 ①吸水速度が早い②保水性が高い③柔らかい④透明性が高い――などが特徴。大垣法はイオン液体でパルプを溶解し製造したセルロース溶液を紡糸して繊維を製造するので、カセイソーダや二硫化炭素を使用するレーヨン繊維とは製法が異なる。高額なイオン液体は回収し、再利用する。