トップインタビューMFU/理事長 八木原 保 氏/事業磨き、期待上回る活動を/「夢」や「元気」届ける
2024年03月28日 (木曜日)
「ベストドレッサー賞」などを開催し、日本全体に「夢」「勇気」「元気」「希望」を届けている日本メンズファッション協会(MFU)。八木原保理事長は2024年度について「周囲の期待を上回る活動ができるよう事業に磨きをかける」と話し、次世代の育成にも目を向ける。MFUの現在と今後を聞いた。
――国内のファッション業界の現状は。
昨年の5月に新型コロナウイルス感染症が第5類に移行してから景気は確実に回復しています。ただ、コロナ禍の4年間で企業を取り巻く環境は大きく変わりました。消費者の意識も大きく変化し、以前にも増して価格の二極化が進んでいます。中間価格帯の商品は苦戦を強いられています。
こうしたことからファッション業界は難しい状況に立たされていると言えます。とはいえ、他社が手掛けていない特徴のある商品や差別化ができている商品は非常に順調です。逆に言えば、商品や戦略が研ぎ澄まされていない企業は厳しさが増しているのではないでしょうか。
――紳士服市場の動向はどうでしょう。
沸騰化という言葉が使われるようになるぐらい地球温暖化が進んでいる感があります。現在の猛暑や暖冬が異常なのか、常態化するのかは分かりませんが、昨年は冬物に勢いがなかったのは事実でしょう。「防寒」の切り口だけではなく、消費者の感性に訴えかける商品のラインアップが不可欠だと感じています。
――そのような環境下でMFU会員企業の業況は。
業績までは分かりませんが、一つ言えるのは各社が積極的な姿勢を見せ始めていることです。例えば、コロナ禍が落ち着いたこともありますが、MFUが主催しているセミナーや勉強会への参加が増えています。多くの企業が何かをつかもうとしているのだなと感じています。
――MFU自身も積極的に活動しています。
私は、MFU理事長に就任した際、「その時代で輝いている企業や時代をリードしている企業とタイアップしたい」と考えました。その思いは結実してきたと言え、MFUの知名度や影響力は大きくなったと自負しています。「ベストドレッサー賞」をはじめ、周囲の期待を超える活動ができているのではないでしょうか。
23年度も6月の「第42回ベスト・ファーザー イエローリボン賞」を皮切りに、9月に「第21回グッドエイジャー賞」、11月に「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2023」を開き、「第52回ベストドレッサー賞」と続きました。いずれも納得のいく素晴らしいイベントになりました。
――4月から24年度が始まります。どのような活動を進めますか。
大きくは4点になります。一つ目はMFUの財務体質の強化です。二つ目は活動に磨きをかけて、皆さんの期待を上回り続けること。三つ目は新規会員を増やしてMFUのパワーを強くすること。最後の四つ目はファッション業界全体を盛り上げることであり、力を入れていきたいと思っています。
活動のブラッシュアップの一環として、これからの日本の文化を創造する若手クリエーターを表彰する「ベストデビュタント賞」を充実したいです。これまではベストドレッサー賞と同日に発表・授与式を開催するにとどまっていましたが、実際に育成する仕組みを作りたいです。早い段階での始動を検討します。
――ファッションマーケティング研究会も注目されています。
ファッションマーケティング研究会への期待度が高まっているのは認識しています。一般的に「面白くない」といわれる講演会やセミナーは、講師と聴講者のマッチングがうまくいっていない場合が多いです。人選は大変ですが、聴講者が興味を持てる話ができる講師を毎回招いています。
これらの活動は、新規会員の獲得にも貢献しています。有益な情報が入ったり、ビジネスにつながったり、会員になるメリットや魅力を感じてもらっているようです。これは最近の話ではありませんが、新規会員は他産業の企業・人の姿が目立ちます。これはMFUの大きな特徴ではないでしょうか。
――SDGs(持続可能な開発目標)もMFUの重要な取り組みです。
親のいない子供たちのためのチャリティー募金、東日本大震災からの復興へ願いを込めた「ブルーローズキャンペーン」などの社会貢献活動を基軸にした取り組みを長年にわたって続けています。SDGsへの対応は不可欠ですので、今後も途切れることなく、続けていきます。
MFUは、事業活動を通して人々に豊かな生活文化の実現を提言してきました。そしてこれからも「夢」と「勇気」と「元気」と「希望」を持てる社会を目指していきます。「夢」「勇気」「元気」「希望」を与えるには、言葉だけでなく、実際に活動することこそが重要であるという信念を持っています。
【略歴】
やぎはら・たもつ ジム代表取締役会長兼社長。MFU理事長のほか、日本アパレル・ファッション産業協会理事、西印度諸島海島綿協会理事長などを務める。2011年黄綬褒章、20年旭日双光章受章。