特集 尾州産地総合(5)/尾州の繊維産業支えるFDC/4月から「尾州ファッションデザインセンター」に改称/産地の支援続けて40年

2024年03月28日 (木曜日)

 一宮地場産業ファッションデザインセンター(FDC)は1984年2月に開設し、このほど40周年を迎えた。糸・生地の展示商談会の実施や、卓越した技術を持つ「匠」を講師に迎え、将来への人材育成の機会を創出。尾州生地訴求の一環として「尾州マーク」の認証も行うなど、数多くの事業で尾州産地を支援する。

 FDCは愛知県尾張西部地域の中央部に位置し、あいち産業科学技術総合センター、尾張繊維技術センターと隣接。各機関が機能を補完しながら連携している。

 主な活動内容は①尾州の企業・製品・サービス紹介の「プロモーション事業」②“モノ作り”の技術向上を目指す「プロダクト事業」③将来を担う人材の育成に取り組む「人材育成事業」――だ。

 「尾州マーク」を活用したブランド化支援に加え、産地と企業を紹介するポータルサイト「BISHU-JAPAN.com」も運営。雑貨などを作るワークショップイベントや、糸やカット生地などを販売する「糸と布の市」の支援も続ける。

 FDCは4月1日付で「尾州ファッションデザインセンター」に改称する。尾州のさらなる周知とブランド力向上に寄与する拠点として、今後も機能を図る。

〈開館40周年イベント開催/さらなる飛躍へ、新たな一歩/トークショーなど多彩な催し〉

 昨年10月28日にFDC開館40周年の記念イベントを一宮市内で開いた。関係者らによる式典のほか、地元アイドル「SKE48」のトークショーや繊維製品の販売などが行われた。

 式典では中野正康理事長(一宮市長)が「時代が変わっても高品質の生地を供給する産地企業に敬意と感謝を申し上げたい。産地として誰もが知る尾州となるよう発信に努め、産地全体がもっと元気になれるよう支援していきたい」と述べた。

 豊島半七副理事長(豊島社長)は「40周年を迎えることができ感無量だ。東京での展示会や海外展の出展援助などFDCが果たしてきた役割は大きい。産業として存続していくためにもさらなる支援をお願いし、これから新しい一歩を踏み出していきたい」と話した。

 トークショーでは、ともに一宮市出身でSKE48メンバーの石黒友月さん、野村実代さんが尾州産ツイード生地の衣装で登壇し、中野氏とファッションのこだわりや一宮の思い出などを語り合った。産地企業8社が出展した糸や織物、ニット、最終製品などの展示即売会や、キッチンカーの出展などもあった。

〈尾州のモノ作り紹介、訴求図る/JYは21回目の開催/BMEは東京で4月開催〉

 FDCが主催する国内最大級の糸の展示商談会「21thジャパン・ヤーン・フェア(JY)」は2月15、16日の2日間、いちい信金アリーナ(愛知県一宮市)で開かれた。

 今年は41社・2団体・大学2校(昨年は47社・3団体・大学2校)と出展者数が減った。各出展者が機能性や意匠性のある高付加価値の糸を披露。染色整理企業や関連機器を扱う企業も出展した。

 来場者数は3400人(昨年は3515人)で微減も、来場者からは「各出展者の特色を生かした糸が見られた」という声があった。出展者と来場者数は減少したが、活発な商談は例年と同様に繰り広げられた。

 総合展「THE BISHU」も13回目の開催を数えた。コンテスト優秀作品をはじめ生地や衣装を展示する一方、一部のコンテンツで動画を配信。製品やカット生地、糸を販売する「糸と布の市」も開かれた。

 新作服地の展示を行う「2025スプリング&サマー ビシュウ・マテリアル・エキシビション(BME)」は4月16、17日にウィズ・ハラジュク・ホール(東京都渋谷区)で開く。尾州の生地商や、製織・染色整理企業など12社が出展する。

〈「尾州マーク」認知度上がる/雑貨・制服にも広がる認証/累計認証件数1800件超え〉

 尾州を発信する事業として2016年4月に「尾州マーク」の認証制度を始めた。プロモーション事業の一環として、消費者に尾州産地の生地・素材の優位性を訴求する目的として制定し、8年が経過した。FDCが指定する条件を満たせば織りネームやラベルなどの副資材を扱うことができる。

 尾州マークの浸透度や認知度は確実に向上している。アパレルや服飾雑貨向けが主力だが、インテリア向けにも使用例が広がる。このほど、一宮消防署の制服にもマークが採用された。

 副資材の累計販売枚数は252万枚を超えた。今年2月末までの累計認証件数は1848件(前年から281件増)。販売実績はタグが182万4185枚(同45万9409枚増)、ネームが69万5905枚(同14万728枚増)で、大きく数量を伸ばした。

 認証条件は①製織・編み立てと整理加工の2工程が尾州産地で行われること②尾州産地で培われた技術的優位性や意匠性を活かして製造されたもので、モノ作りのストーリーを消費者に訴求できること――で、いずれも満たすことが必要だ。

〈産地・企業周知に貢献する「BISHU」/開設から4年、内容も充実/サンプル請求機能も〉

 FDCが運営する、尾州の産地・企業を紹介する総合ポータルサイト「BISHU」は開設から4年目を迎えた。

 正式サイト名は「BISHU―JAPAN.com」。尾州に拠点を置く紡績・撚糸、製織・編み立て、染色整理加工などを含め99企業・団体が登録。初年度から40社近く登録企業が増えており、近く100社を超えることが確実視される。

 運営の目的は「尾州に直接足を運べなくとも、企業や糸・生地などの情報に触れやすくする」こと。自社でサイト運営が難しい企業もあるため重宝される。企業の設備や製造工程をはじめ、扱う商材や「働く人」などを幅広く紹介する。企業へのサンプル請求も可能。尾州産地の“架け橋”として機能を果たしている。

 特に注力した点は、産地の情報や成り立ちといった概要に加え、企業・団体の情報を多角的に充実を図ったこと。代表者・従業員のインタビュー以外にも、工場内の設備を写真や動画で紹介。オリジナル商材や環境配慮への取り組みなども収録し、社風や雰囲気も体感できる仕上がりにこだわる。