ごえんぼう

2024年04月01日 (月曜日)

 夢は「見る」ものではなく「かなえる」ものだそうだが、昔の人にとっては「買う」ものだった。『曽我物語』に妹の悪夢を買った北条政子の話がある▼「月と日を左右の袂に収さめ」るという夢で、実は吉夢と知りながら買い取り、妹を落ち着かせた。夢のお陰か分からないが、政子は後に源頼朝の妻となり、鎌倉幕府で尼将軍として権勢を振るった▼戦国時代、肥前の武将だった神代勝利は、自分の体が巨大化し「北山を枕にし、南海に足を混す」(『北肥戦誌』)という同僚の夢を買った。勝利は後に一城主として龍造寺氏の肥前統一を阻む好敵手となった▼『宇治拾遺物語』には、巫女から他人の見た出世の夢を盗み買いし、右大臣まで出世した吉備真備の話がある。さて、これからいろいろなことを夢見て社会人生活へ一歩踏み出す人も多いはず。ただ、寝て見た夢はどんな悪夢でも、自分の心の中にとどめておくのが無難かも。