新卒の心をつかめ 24年4月採用最前線(中)

2024年04月02日 (火曜日)

目指すキャリア明確に

 今回、アンケートから回答を得た28社の新卒採用者の数は2200人以上となり、前年より2割増えた。うち、未定も多いものの、およそ2割が繊維事業に配属される予定だ。

 男女比の比率は男性が6割、女性が4割で、素材メーカーでは男性の比率が高く、商社やアパレル会社では女性の比率が高い。7割超が大卒となった。

 大学院卒や販売職、エリア職、年棒制などを除く初任給も各社増やす傾向にある。初任給に関連する設問に回答した22社中10社が前年よりも増え、アンケート回答企業平均で23万9691円となった。前年より8045円増加したことになる。伊藤忠商事は前年の25万5500円から30万5千円に引き上げた。引き下げた企業は1社もなく、10社が22万5千~25万円未満の間だった。25万円以上は伊藤忠商事も含め、6社だった。

 24年の採用で新たなに取り組みや採用に効果があったことについては、クラボウや瀧定名古屋が「ダイレクトリクルーティング」を挙げた。これは企業の担当者が、自社に合う人材に対し直接コンタクトをとってスカウトする手法のこと。労働環境の変化や、SNSといったITツールの進化によって、ダイレクトリクルーティングを取り入れる企業が増えている。

 「1day仕事体験の実施」(ニッケ、ユニチカ)、「インターンシップなど拡大」(クラレ、ユニチカ、MNインターファッション)といった、仕事体験を就職につなげる動きも活発になっている。各社は新型コロナウイルス禍でそのような体験型イベントを控えていたが、「ヘルスケア営業職や素材研究開発職に関する業務体験など、対面によるイベントの実施」(帝人)、「社内外の採用イベント開催数を増やし、母集団形成(自社で採用する可能性のある学生の認知向上)を強化」(スタイレム瀧定大阪)などの取り組みは一定の効果があったようだ。

 ヤギは選考中に個別面談を強化した。「疑問や働き方をクリアにすると同時に、面接に対するフィードバックを丁寧に行うことで、志望度の向上につながった」。クロスプラスでは「採用スケジュールのフローを2段階に分けて実施することで、就活時期の異なる学生に対するアプローチが可能になり、採用人数の確保につながった」としている。

 バロックジャパンリミテッドは採用で「販売職のキャリアコース分け」を実施した。「本部キャリアコース」では接客販売のプロ、店舗やエリアの責任者などの店舗運営に携わるポジションでのキャリアアップを目指すことができる。「店舗キャリアコース」では勤務3年後を目安に本社の各ポジション、本部職に就くことを目指して、店舗にてキャリアを形成することが可能になる。明確なキャリアアップの道筋を描くことで採用の増加につなげた。