新卒の心をつかめ 24年4月採用最前線(下)

2024年04月03日 (水曜日)

相互理解を深める

 2024年に採用を増やした企業ではオンラインの積極的な活用が目立つ。タキヒヨーではホームページで社員登場動画のコンテンツを充実。「よりリアルに会社の雰囲気を分かりやすくと努めた結果、学生から聞く評判は良かった」と振り返る。

 伊藤忠商事ではOB・OG訪問やセミナー参加回数の増加とともに、ビジネス、働き方改革、女性活躍推進、SDGs(持続可能な開発目標)など全社コーポレートブランディングと連携した取り組みの発信や、学生目線での情報発信に努め、インスタグラムといったSNSのさらなる活用が採用増に奏功した。

 25年春の新卒採用計画については、繊維事業に限ると16社中、13社が採用を増やす計画だ。採用人数が未定であっても「当社とマッチする方であれば、ぜひ力添えしてもらいたいため、採用枠は設けていない」(バロックジャパンリミテッド)といった声もあり、今年以上に採用に向けた動きが活発になりそうだ。

 そのため、「オープン・カンパニーの実施」(クラボウ)、「説明会の回数をさらに増加」(富士紡ホールディングス)、「早期化に対応し、夏(24年8、9月)のオンラインセミナー実施」(ニッケ)、「対面面接の回数を増やし、相互理解の醸成を図る」(ヤギ)といった対策を講じる。クロスプラスは「25年度新卒採用においても採用スケジュールを2段構えで実施し、就職活動時期が異なる学生に対してアプローチできるようにする」と言う。

 基本的に各社は「対面での接点を増やす」(三陽商会)傾向にある。旭化成や伊藤忠商事、MNインターファッション、瀧定名古屋などもインターンシップの実施回数を増やすなどで、採用拡大につなげる。

 働き方の多様化に合わせ、採用の仕方も変化しつつある。クラレでは「勤務地固定の総合職の採用コースを新設。職場の受け入れ型インターンシップの拡大」に取り組む。帝人ではプラントエンジニアリング職を希望する学生向けに松山事業所(愛媛県松山市)と岩国事業所(山口県岩国市)で「インターンシップを実施予定」としている。

 TSIホールディングスでは全国転勤ありや、エリア固定、SNS活用人員など、販売職の働き方の多様化に合わせた取り組みを新たに始める。「現地社員の採用イベント参加による企業の理解促進」にも努める。

 3月から来春卒業予定の大学生・大学院生を対象とした採用広報が解禁されている。新卒向け求人サイト「フューチャーファインダー」を運営するジェイック(東京都千代田区)によれば、約6割の企業が、24年の新卒採用に比べて「選考開始時期を早期化している」という。

 新卒の売り手市場が続く中、いかに接点を持ち、働く魅力を伝えられるか。一企業だけでなく、繊維業界全体にとっても課題になりつつある。

(おわり)