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東洋紡 今期「稼ぐ力取り戻す」

2024年04月09日 (火曜日)

 東洋紡の竹内郁夫社長は2024年度(25年3月期)の重点施策として「引き続き『稼ぐ力を取り戻す』が基本方針。苦戦しているフィルム事業などの立て直しに取り組み、早期に営業利益200億~250億円のベース水準に回復させる」と強調した。

そのために価格改定に加えて、これまで実施してきた投資の成果を具体化させることに取り組む。

 同社は21年度に約280億円あった連結営業利益が22年度は約100億円まで落ち込んだ。23年度は150億円まで回復させる計画だったが、最終的に業績予想を80億円に下方修正している。この2年間で原料200億円、燃料100億円の合計300億円のコストアップとなったことに加え、主力のフィルムの販売量回復が市況低迷で遅れていることが要因。安全・防災・品質・コンプライアンスの向上に積極的に資金を投じたことも無視できない。

 竹内社長は24年度に関して「引き続き『稼ぐ力』を取り戻し、現在の事業規模のベース水準である営業利益200億~250億円を回復することを目指す」と強調する。そのために「安全、防災、品質、コンプライアンスを前提として、価格転嫁による利益率の改善とフィルムなど収益が悪化している事業の立て直しに取り組む」との考えを示した。

 特に価格転嫁に関しては「提供する価値に見合った価格設定が重要。現在の環境で価格改定できないものは、既に競争力を失っていると判断し、今後の生産や販売の在り方も見直さざるを得ない」と話す。

 フィルム事業は流通在庫の整理が進むなど市況が好転し始めており、同じく苦戦するエアバッグ事業も23年度は営業赤字が減少する見通しとなるなど18年の火災事故の影響を徐々に脱しつつある。

 機能材事業は三菱商事との合弁の東洋紡エムシーで運営することによる相乗効果が期待できる。衣料繊維事業も国内工場再編など改革の効果で23年度は営業黒字に浮上する見通しとなり、引き続き機能やスペックが評価される分野に特化することで安定的な収益を確保する戦略だ。

 「この2年間で既存設備の更新だけでなくフィルムやバイオ関連の新規案件も合わせて1千億円以上を投資している。今期は、これをマネタイズ(収益化)することが重要になる」と、積極的な投資の成果を具体化させることに取り組む。