紡績の開発最前線24 未来につなぐ新たな繊維 (上)シキボウ

2024年04月16日 (火曜日)

原料、原糸から技術掛け合わせ

 環境配慮をはじめSDGs(持続可能な開発目標)への意識が高まる中、どのような繊維が使われているか、どこで作られているかといった消費者のモノ作りへの関心が高まりつつある。そんな関心をもっと引き寄せるためにも、紡績の開発力が問われている。

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 シキボウの富山工場(富山市)ではリング糸やMVS糸や、長短複合糸など、多彩な原糸の供給ができる。最近では原綿から差別化した糸のラインアップを充実。精紡交撚糸「デュアルアクション」や強撚糸「エクセリトクール」では、スーピマの超長綿とカリフォルニアの長綿を掛け合わせ、「原綿から紡績までこだわった」。

 要望が高まるトレーサビリティーに対応するため、徐々に採用が広がるのが「コットン∞」(コットンエイト)。コットン∞は豊田通商、信友と連携しながら、国際フェアトレードラベル機構が認証したフェアトレードコットンを8%以上混綿した糸を普及させる。生分解性ポリエステル「ビオグランデ」といった環境配慮型の原料と組み合わせた素材開発も進む。

 特殊紡績糸も多彩だ。「ふわポップ」は、糸の360。に起毛し、起毛長を短くすることで、毛羽落ちや糸抜けが少ない。「ドラゴンツイスト」はエアーの旋回流を利用したMVS精紡による混紡糸で、綿100%だけでなくウール、リネンなどさまざまな組み合わせができる。

 機能加工糸では厳選した原綿を使い、染色加工場のシキボウ江南(愛知県江南市)で加工する、「日本唯一の連続シルケット糸」である「フィスコ」の人気が根強い。シルクのような艶やかな光沢感に加え、染着性が高いため、洗濯後の色落ちが少なく、生地の奇麗な表面感が長く続く。

 昨年、初の試みとして米国のクラウドファンディングへタオルを出品した。フィスコを使うことで鮮やかな発色や海外の人の好みに合わせ適度な硬さを出した。吸水性や洗濯耐久性の高さなども発信し、目標を大きく上回る約190万円の支援を集めた。「これをきっかけに海外へもフィスコの知名度を高めていきたい」

 グループの新内外綿と連携した原糸開発も進む。フィスコと、鮮やかな色でメランジ表現ができる「アートコット」を組み合わせた素材は、「北陸ヤーンフェア」「ジャパン・ヤーン・フェア」といった展示会でも紹介し好評だった。ふわポップも、超長綿の落ち綿を使いナチュラルな凹凸が特徴の「SRC」と組み合わせることで、絶妙に毛羽をコントールした肌触りの優しい素材に仕上げた。

 今後も原料や加工、グループで技術を掛け合わせながら、他社にない素材開発を追求する。