産資・不織布通信Vol.10/独・テクテキスタイル/1986年以来20回目

2024年04月18日 (木曜日)

 世界最大の産業用繊維・不織布の国際見本市「テクテキスタイル」が23~26日、ドイツ・フランクフルト国際見本市会場で開催される。2年に1度開かれる同展は1986年の第1回から数えて今回が20回目の記念開催となる。東レグループ、帝人フロンティアグループ、クラレ、カネカの大手合繊メーカーに加え、日本グラスファイバー工業、三洋貿易、萩原工業、DIC、群栄化学、ENEOSテクノマテリアル、島精機製作所などの日系企業が現地法人の出展も含めてブースを構える。縫製機器関連の国際見本市「テックスプロセス」も同時開催で、両展で50カ国約1600社以上の企業が出展する。

〈東レ/グループ共同で出展/サステなど切り口〉

 東レは本体と韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、米国のトーレ・フロロファイバーズ〈アメリカ〉(TFA)とゾルテック、英国のトーレ・テキスタイルズ・ヨーロッパ(TTEL)が共同ブースを設けて出展する。グループの幅広い先端素材群を「サステナブル」「環境配慮」などの切り口で紹介し、潜在的な顧客を発掘、新規開拓を目指す。

 出品するのは高性能繊維が中心。高強力、高弾性、湿潤強度、寸法安定性が特徴の液晶ポリエステル繊維「シベラス」は糸、生地で紹介。PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維は新開発した機能紙を訴求する。

 TAKが製造販売するメタ系アラミド繊維「アラウィン」は糸、わたに加え、耐熱性、防炎性、絶縁性などを持つ機能紙としても提案する。TFAが製造販売するフッ素繊維「テフロン」は糸、わた、不織布、ゾルテックによる耐炎化糸「ゾルテック」も糸、わた、テキスタイルで紹介する。

 その他、高強力ポリエステル長繊維、高強力ナイロン66長繊維や各種合繊による高機能テキスタイルも出品する。

 新型コロナウイルスの感染拡大もあり、この2~3年は欧米を中心に新規開拓が非常に困難な状況だったが、2023年以降、コロナ規制の緩和に伴い市場は活性化していると分析。特に「持続可能で環境に配慮した暮らし」を実現できる革新的な素材が求められていると言う。

 その中で同社グループは多彩な素材とグローバルでのサプライチェーンを生かし、新規開拓に取り組む考えだ。

〈帝人フロンティア/機能繊維と環境対応/独子会社と共同ブース〉

 帝人フロンティアは機能素材と環境対応素材、それらの組み合わせで、スポーツ・アウトドア、自動車、膜構造体やテント、生活製品など幅広い分野に向けた提案を行う。車輌内装材など向け不織布製造のドイツ子会社、J.H.ジーグラーと共同ブースで、グループのシナジーも訴求する。

 高強力ポリエチレンによる織物や、ポリエステル高強力糸を使ったゴム補強用繊維の水系接着技術を披露するほか、高機能ポリエステル糸、原着ポリエステルわたなどを提案する。バイオ素材として、酢酸セルロースやポリ乳酸(PLA)を原料にしたシート、樹脂も出品する。

 同社によると、産資用繊維・不織布の欧米販売はスポーツ用途が堅調という。不織布は、原料供給を含め欧州域内生産会社との連携を強化している。今後の販売拡大に向けては輸送ルート、輸送コスト、為替の安定性などの課題があるとし、地産地消が強まり、輸入品離れやインフレによる顧客の購買意欲の低下などを懸念する。

 ドイツ子会社のJ.H.ジーグラーはニードルパンチ不織布、サーマルボンド不織布、各種不織布にカバー材や表皮材を組み合わせた複合品を製造販売する。自動車内外装の吸音材、レザーシートのワディング材、家具や寝装分野のクッション材や中わた、建築用の吸音・断熱材、フィルター、研磨剤、複合材料用不織布、メディカル用不織布など幅広い。

 今回展では「レディ・フォー・サーキュラー」をテーマに各種不織布、製品を展示する。「HACOwave」は繊維を縦型に配向した立体不織布。弾力性を増す特殊なポリエステル繊維を用いる。「HACOtex」はポリエステル繊維製でカバー材と不織布を組み合わせることにより高い吸音性能を発揮する。「HACOloft」は再生ポリエステル繊維を高混率で使用した不織布で、幅広い目付、厚みをラインアップする。

 新型コロナウイルス禍から徐々に自動車生産が回復するも、販売は以前の水準には戻っていないと言う。

〈クラレ/脱炭素対応の繊維/開発中新素材も出品〉

 クラレは顧客製品の軽量化、長寿命化、省エネ化などサプライチェーン全体での脱炭素化ニーズに対応した繊維素材を提案する。開発中の新素材も出品する。

 その一つがアセテート繊維「クラレッタ―TY」。無溶剤製法で、生分解性繊維でもある。さまざまな繊維形状により、ドライでソフトな風合いなどを表現できる。フェノキシ不織布も開発品。炭素繊維複合材料などの表面ボイドを改善し、製造過程でのパテ埋めやサンディング工程を削減できるという。

 その他、ビニロン長・短繊維は高強力タイプと水溶性タイプ、難燃ビニロン短繊維を打ち出す。高強力ポリアリレート(液晶ポリステル)繊維「ベクトラン」では高強力、耐摩耗性、低クリープ性などを生かし、大型船舶用係留索などのスチール代替として、同原料による不織布「ベクルス」はIT基材など向けに、面ファスナー「マジックテープ」では無溶剤・無ウレタン製法や再生ポリエステルを含むポリエステル100%製のモノマテリアルグレードを訴求する。海洋生分解性品も開発中という。その他導電繊維「クラカーボ」も紹介する。

 欧州向けの販売は低調が続いており、今後も継続するとみる。自動車生産の回復に期待し、24年度後半から持ち直しを見込む。

《トピックス》

〈持続可能性の製品提案/独フロイデンベルグ〉

 ドイツのフロイデンベルグ・パフォーマンス・マテリアルズは世界最大の産業用繊維・不織布の国際見本市「テクテキスタイル」で、各業界向けに先進的で持続可能なソリューションを提案する。

 自動車シートのパッド用ポリエステル不織布はシートメーカーが取り付け工程で扱いやすいだけでなく、寸法安定性が向上する。単一原料であるため、環境負荷も少ない。不織布の残反などを再利用し、最低25%のリサイクル率も可能。トレーサビリティーも確保する。チャイルドシートに活用できる最大80%のリサイクル率の不織布も紹介する。

 その他、ポリ乳酸による屋上緑化材、再生ナイロン6による中わた、極細合繊長繊維不織布「エボロン」による輸送用パッケージも提案する。

〈24年も値上げ相次ぐ/合繊糸・わた、不織布〉

 2024年も合繊糸・わた、不織布の値上げが相次いでいる。ユニチカは2月1日出荷分からスパンボンド不織布、スパンレース不織布を現行比10~15%値上げした。東洋紡は4月出荷分からエアバッグ用糸、基布を10~15%アップを発表している。

 東レは4月出荷分から合繊糸・わたで1キロ当たり5~10円。スパンボンド不織布で現行比10~15%アップを打ち出した。

 原油価格が高値圏で推移し、円安進行により原材料の調達価格が高止まりするほか、用役費、副資材、物流費・保管費コストや世界的な海上運賃の上昇も加わり、今後もコストの高止まりが改善する見込みがないなどがその理由。

 産業資材用繊維、不織布業界は昨年に続き価格交渉が24年の大きな課題となりそうだ。

〈23年は14%減/日本の炭素繊維生産量〉

 経済産業省生産動態統計によると、日本の炭素繊維生産量は2023年、前年比14・2%減の1万7752トンだった。21、22年と増産が続いていたが、大きく落ち込み、この7年間では最低の水準になった。生産以上に減少率が大きいのが、販売量。同統計によると、32・9%減の1万1309トンと大きな減少となっている。

 東レは23年度第3四半期(4~12月)、炭素繊維複合材料事業の売上収益は前年同期比0・9%減、事業利益は3・7%減だった。航空機需要が回復も風力発電翼用が調整局面で、圧力容器など一般産業用も需給軟化したという。

 帝人は炭素繊維が減収減益。航空機用需要が減少しレジャー用の在庫調整もあり、販売量が減少したという。課題の複合材料事業は価格改定やコスト削減策などもあり、増収増益だった。