2024年春季総合特集(2)/共創・協働時代の繊維ビジネス

2024年04月22日 (月曜日)

〈繊産連会長 日覺 昭廣 氏/産地内外の連携重要/異業種との共創・協働も〉

 共創・協業が繊維業界でも目立ってきた。日本繊維産業連盟(繊産連)の日覺昭廣会長は「産地の垂直連携の維持や価値に見合った価格での販売のためにも重要になる。異業種との取り組みも欠かせない」と話す。連携の在り方や可能性について聞いた。

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――共創・協働に取り組む繊維企業が増えています。なぜ重要なのでしょう。

 共創・協働は今に始まったことではなく、国内の各産地を見ても、これまでに垂直連携を作り上げてきました。この垂直連携はどこかが欠けても機能しなくなります。こうしたことから今後も産地の企業間、産地と産地の間で情報を取り合い、連携を強めることは極めて重要になると考えています。

 連携の重要性で言うと、日本の産地企業は高い技術力、匠の技を持って高い品質と機能性を兼ね備えた製品を生産しています。

 生産面に加えて、価値に見合った価格での販売の実現、生産性の向上、コスト競争力の強化が重要な課題です。そのためにも企業間連携による効率化が不可欠です。

――具体的な事例はありますか。

 「東レ合繊クラスター」が参考になると思います。北陸産地企業の連携による日本の繊維産業の復権と活性化を目指し、東レが支援する任意団体として2004年11月に発足しました。東レ合繊クラスターの技術・素材開発部会は5分科会で活動し、生産と販売の連携を強化しています。DX推進部会の取り組みも進んでいます。

 こうした活動を全国の産地に広げ、企業間連携による生産性の向上や効率化の事例を増やすことが大切です。生産性向上などで収益を拡大し、従業員の報酬アップにもつなげることができます。産地連携には全体を引っ張る企業・人が不可欠ですが、各産地にリーダーは存在しているのではないでしょうか。

――異業種との共創・協働は。

 欠かせないと思っています。異業種との交流が進めば、今までになかった発想が入り、既存の技術の応用などで新しい技術が生まれる可能性もあります。これまでにはなかった販売手法が出てくるかもしれません。いずれにしても社会の動きや困り事、消費者の声に耳を傾け、諸問題を共に解決することが重要です。

――連携強化にはデジタル化も重要です。

 15年ごろにドイツで進められたインダストリー4・0が連携強化の取り組みだったと記憶しています。そのことが繊産連会長の立場で見ると良く分かります。中小企業が多いといった点で共通しており、ドイツのように通信技術を駆使した連携は可能でしょう。

〈BEENOS HR Link×Linc/ITで外国人材の活用推進/特定技能雇用を包括支援〉

 さまざまな業種で人手不足が深刻化する中、特定技能制度の在留資格を持つ外国人労働者を求める企業が増えている。先月には、2019年の制度開始以来初となる追加分野と業種が決定。繊維業も新たに対象となった。技能実習生に頼る企業が多い業界だけに、一定の専門性や技能を持つ労働力の受け入れとともに、中長期を見据えた人材の確保と育成に道が開けたことの意義は大きい。

 一方で、特定技能の外国人材を雇用する際、煩雑な手続きと管理業務が、受け入れ企業や登録支援機関にとっては大きな負担となっている。この課題をITで簡略化するサービスがある。BEENOS HR Link(ビーノス、東京都品川区)が20年7月から運営する支援業務管理システム「Linkus」(リンクス)だ。特定技能1号の在留資格申請書類の生成や、定期または随時届出の書類作成、タスク管理、関係者間の情報共有、ファイル管理などを一気通貫でサポートする。

 特定技能制度は運用の開始後1年経たずして新型コロナウイルス下となったため、コロナ前と後で大きく状況は異なる。直近の特定技能1号在留外国人数は20万8425人(23年末時点の速報値)、登録支援機関数は9630(24年3月28日現在)。政府が示している24~28年度の受け入れ見込み人数は、直近実績の約4倍となる82万人に達する。

 同社では新規登録支援機関向けのコンサルティングサービスの拡充も図っている。アフターコロナに入り、外国人材の活用が本格化する動きに合わせ、サポートを必要とする受け入れ企業や登録支援機関がさらに増えてくることは想像に難くない。

 岡﨑陽介社長は「特定技能は、今後日本が外国人材を雇用していく上で、その中心となる重要な制度であり、活性化していく市場。関連するサービスの需要はさらに拡大していくだろう」との成長ビジョンを示す。

 昨秋、HR(ヒューマン・リソース)テックのLinc(東京都千代田区)と提携した。中華圏を中心に45万人にのぼる外国籍人材コミュニティーを抱える強みを持つ。自社による人材の直接紹介は行っておらず、国内受け入れ企業と人材紹介企業などを人工知能(AI)を活用しながらマッチングするプラットフォーム運営に注力する。

 今回の協業では、Lincは募集から採用までを、ビーノスは採用後の支援という分業体制を確立している。それぞれの専門領域において互いのリソースを提供し合うことで、サービスの質を相乗効果で高めていくことを目指す。

 Lincの仲思遥社長は今回の協業について「当社の顧客企業にとって価値の最大化につながる。外国人材は採用したら終わりではなく、むしろそこからがスタート。特定技能制度の煩雑な手続きや管理を一気通貫で管理したいというニーズは多い」と評価する。