2024年春季総合特集(10)/Topインタビュー/小松マテーレ/代表取締役専務 中山 大輔 氏/フラットな関係心掛け/強み掛け合わせた開発を

2024年04月22日 (月曜日)

 小松マテーレは約20年前に始まった東レ合繊クラスターのほか、リモンタやスパイバーなどさまざまな企業と協業してきた。中山大輔専務は「一社でできることには限界がある」とし、互いの強みを掛け合わせた共創、協業を今後も増やしていく考えを示す。うまく進めるためには、互いを尊重しあう関係づくりをポイントの一つに挙げる。

――貴社の共創、協業の取り組みは。

 以前からの取り組みでは、東レ合繊クラスターがあります。約20年が経過しますが、垂直連携、水平連携でのモノ作りが進むとともに、自立心が芽生え、ある程度主体的なビジネスができるようになりました。

 少し前からの事例では、リモンタとのアライアンスがあります。競合同士が共同戦線を張り、技術交流しながらモノ作りを進めており、まさに共創と言えるでしょう。

 現在はスパイバーとの取り組みを進めています。これまでもスパイバーが糸や生地の開発を進める中で当社が染色加工を行うことはしてきましたが、次はスパイバーの「ブリュードプロテイン」と小松マテーレにしかない技術で共創していきます。特にフィルムや膜関連で、透湿防水やレザー代替のマーケットに対し、サステイナブルな商品を開発していきます。

――リモンタとのアライアンスの成果は。

 日本とイタリアの大手染工場同士が組んだことで業界に大きなインパクトを与えたと思います。両社の売り先は共通しており、バイヤーからはどういうモノができるのかと期待され、発表時には歓迎の声を多く頂きました。リモンタになくて小松マテーレにあるもの、逆に小松マテーレになくてリモンタにあるものを互いに活用しています。両社で不毛な戦いをするのではなく、お互いにないところは補い合っていくということで、互いに尊重し合いフラットな関係を築けています。

――共創、協業を進めるポイントは。

 チームワークが求められることなので、私利私欲を持たないことが大切です。チーム全員で頑張り、利益は全員で分け合うこと。また、各々の強みを掛け合わせるには、技術の出し惜しみをしないことも大切です。全員がフラットに苦楽を共有する考え方でないとうまくは進みません。

――共創、協業は今後も重視しますか。

 今後も取り組みを増やしていきます。強みを生かした協業で可能性は広がりますので、資本参加やM&Aも含めて検討していきます。

――工場の稼働は期を通じて堅調に推移しました。

 足元も堅調で、数カ月待ちのラインもあります。例えば「ビンテージ繊意」(加工名:SY加工)はロングセラーですが、本物志向が高まる中で多くの引き合いが来ています。機械を3台増設して9月に稼働させ、生産能力を30%引き上げる計画です。

 中東向けも堅調ですが、先日の中東出張では課題も見えました。現地の市場を見てきましたが、どのリテーラーも「小松マテーレ」のラベルを付けた商品を扱っています。ブランドが浸透しているということですが、逆に言えばユーザーはどう差別化するのかということになります。同じ商品なら値引きとなる可能性もあり、そうなればブランド価値を棄損しかねません。顧客としっかり取り組むとともに、ブランドの管理を強化していくことが必要です。中東市場は競合が激化している面もあります。改めてブルーオーシャンにしていくためにも、新しい商品の開発、提案が重要です。

――今期(25年3月期)の市場環境をどうみますか。

 中東民族衣装用途は堅調が続くとみています。北米も堅調が続く見通しで、9月の増能力で対応します。一方、国内のファッション用途は先が不透明で、減速感も出ています。

 伸び代は海外で、中国、欧州、米国などのマーケットで拡大を狙います。衣料ファブリックだけでなく、今は国内向けがほぼ全ての生活関連資材でも輸出に取り組みます。

――設備投資は。

 今期は福利厚生関連に重点を置きます。本社工場ではオフィスや食堂などを徹底的にリノベーションし、従業員が働きやすい職場、働きたくなるような空間にしていきます。東京のオフィスも移転を計画しています。

〈最近のプチ贅沢/石川の陶器でコーヒー〉

 自宅で飲むコーヒーは中山さんのプチ贅沢が詰まっている。2年ほど前に購入したコーヒーマシンに毎朝、自分の好みに合ったカプセルを入れ、コーヒーのクリーミーな泡立ちと香りを楽しんでいる。味は濃い目が好みだがエスプレッソの量では物足りないので、180㍉㍑で入れる。使用するコーヒーカップは使い捨てのプラスチック製ではなく、石川県内で作られた陶器製。見た目とともに180㍉㍑がちょうど入るサイズも気に入っている。

【略歴】

 なかやま・だいすけ 1992年小松マテーレ入社、2009年執行役員国際営業部長兼マーケティング部門長兼ファッション企画室長、11年取締役営業本部長補佐兼第1営業部門長、14年常務、16年常務営業本部長、19年専務、23年6月代表取締役専務