春季総合特集Ⅱ(16)/Topインタビュー/ダイワボウレーヨン/社長 庄野 栄作 氏/“脱プラ”の流れに応える/円安生かし海外販売拡大

2024年04月23日 (火曜日)

 「世界的にSDGs(持続可能な開発目標)を含めた環境配慮への取り組みが求められる中、レーヨンは“脱プラスチック”の流れに応えることのできる素材」と話すダイワボウレーヨンの庄野栄作社長。原綿メーカーとして大和紡績の合繊事業本部との連携や、パルプメーカーとの協力で、環境配慮や機能性を実現したレーヨンの普及を目指す。

――繊維業界で共創・協働による取り組みが増えています。

 世界的にSDGsに向けた取り組みも含めて環境配慮や環境負荷低減への要求が高まっています。そうした要求に応えるために原料メーカーや素材メーカーとの連携が必要になっています。例えば当社が製造販売するレーヨン短繊維の場合、不織布原料としても使用されていますから、不織布メーカーと協力することで世界的な“脱プラスチック”の流れに対応することができます。大和紡績の合繊事業本部との連携を深め、さらに相乗効果を発揮する必要があるでしょう。

 また、パルプメーカーとの取り組みを進めています。スウェーデンのパルプメーカー、ソドラ社と連携し、使用済み綿製品をパルプ原料に再利用したリサイクルレーヨン「リコビス」の商品化を進めました。リサイクル関係では日本製紙グループや、大手衛材メーカーとの取り組みも推進中です。こうした協働によってレーヨンの良さを一段と実現することができると考えています。

――2023年度(24年3月期)を振り返ると。

 売上高は100億円規模を維持できましたが、営業利益が大きく減りました。要因の一つが原燃料コストの増加です。溶解パルプなど主原料だけでなくカセイソーダなど副原料の価格も高騰したことで利益が圧迫されました。また、防炎レーヨン「FRコロナ」の対米輸出が昨年7月以降に失速したことも大きかった。ベッドマット部材用途が主力のため、米国の住宅着工件数が減少した影響を受けています。また、中国品などとの競争が激化したことも一因です。現在、中国の景気低迷を背景にさまざまな素材・商品分野で安価な中国品が海外市場に流入していますが、防炎レーヨンでも同様の事態が起こっています。

――そのあたりの立て直しが24年度の課題となります。

 現在の円安を考えれば、これを追い風にした海外販売の強化は非常に重要です。そこで防炎レーヨンは新規用途開拓に力を入れます。紡績可能で洗濯耐久性のある「FRX」を軸に紡績やテキスタイルメーカーと連携しながら生産・販売体制の整備・拡充を進めます。また、難燃レーヨンも抗菌など機能性の付与やサステイナビリティー対応を進めることで採用拡大に取り組みます。

 もう一つは、湿式不織布向けショートカットファイバーの拡販です。乾式不織布向けのレーヨン短繊維と比べて利益率や競合度合いで優位性があります。課題は生産能力ですから、今後は増産体制を取ることも検討しています。こちらも海外販売で円安の追い風を生かしたい。国内販売に関してもまだ需要の掘り起こしが可能とみています。

 一方、乾式不織布用わたはリコビスなどリサイクルレーヨンの提案に力を入れます。また、紡績用途は引き続き主力のインナー向けを中心にさらなる機能性を付与することでレーヨンの販売拡大に取り組みます。

――益田工場(島根県益田市)のエネルギー転換も課題です。

 脱炭素を軸とした工場の整備は重点課題。基本的にLNG(液化天然ガス)への転換を計画していますが、再生可能エネルギーとの組み合わせも求められるようになりました。大きな投資になりますから、現中期経営計画(24~26年度)の3年間でしっかりとしたロードマップを作り、30年度までには転換を完了させたいと考えています。

――大和紡績グループはダイワボウホールディングスから独立しました。

 株主が変わり、設備投資に関する認識も変わり、選択肢が増えました。中長期的に大型投資も視野に入ってきます。その意味では新しいターンに入ったと言えますから、これまで以上に柔軟な事業運営が重要になります。

〈最近のプチ贅沢/温泉に行きたい〉

 「2年前に家族で島根の玉造温泉に行ったのが最近のプチ贅沢かな」という庄野さん。玉造温泉と言えば「枕草子」にも登場する島根県を代表する温泉地だが、宍道湖でとれる海産物も魅力の一つ。「ちょっとした高級リゾートホテルに泊まったのですが、そこで出たシジミ料理が抜群でした」とか。ここ数年は仕事が忙しく、家族サービスもご無沙汰。それだけに「久しぶりに温泉に行って、気分を解放したい」と話す。

【略歴】

 しょうの・えいさく 1985年大和紡績(現・ダイワボウホールディングス)入社。96年ダイワボウレーヨン入社。生産技術部長、益田工場長、営業第一部長、大和紡績出向などを経て2022年取締役、23年6月から社長