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大手学生服メーカー/値上げの動き本格化/収益悪化で利益改善進める

2024年04月25日 (木曜日)

 学生服業界では、性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから、制服をブレザーへモデルチェンジ(MC)する動きが2020年ごろから全国的に活発になっている。これに伴い、学生服大手3社はMC校からの旺盛な受注に対応する。MC校の獲得数が高い水準で推移する一方、さまざまなコストの上昇が継続し、利益を圧迫する要因となっている。利益率の改善が急務となる中、各社は制服の価格改定への動きを本格化させる。(秋山 真一郎)

 詰め襟とセーラー服の採用比率が高かった中学校を中心に、性差を感じさせないブレザー制服へのMCが加速している。ニッケの調査によると、昨春のMC校数は747校と過去最多となった。今春のMC校数も700校を超える見通しで、高水準が続く。

 トンボ、菅公学生服、明石スクールユニフォームカンパニーの大手3社もこの流れに乗り、MC校からの受注を獲得する。売り上げを増やす一方、ここに来て利益率の悪化が鮮明になってきた。

 このような状況の中、3社は制服の価格改定を本格化させることを明らかにする。トンボの藤原竜也社長は「価格改定が経営に直結する段階に入ってきた」と説明。「既存校に対し、ここで一気に値上げをお願いしていきたい」との考えを示す。

 「もはや社内でコストダウンを進めるという話ではなくなっている」と指摘するのは菅公学生服の尾﨑茂社長。同社では「来期に向けて値上げを進めていっている」段階だ。明石スクールユニフォームカンパニーの河合秀文社長も今期の最重要施策について、「価格改定」と言い切る。「まずは正しい利益を確保できる体制にしなければならない」とする。

 各社の前期の業績を見ると、業界最大手のトンボは23年6月期、売上高は422億円(前期比1・0%増)で8期連続の増収を達成した。一方で、本業のもうけを示す営業利益は14億1100万円(39・3%減)だった。菅公学生服は同7月期、売上高409億円(1・6%増)と増収だったが、営業利益は1億6700万円(89・5%減)と減少。また、純損失2億700万円(前期は純利益4億5800万円)と、4期ぶりの最終赤字となった。

 明石スクールユニフォームカンパニーを含む明石グループも同12月期、売上高308億円(2・9%増)と300億円超を達成した一方、営業利益は9億5800万円(15・4%減)と減らすなど、3社とも減益基調にある。

 原燃料価格など、さまざまなコストが上がり、各社の収益を圧迫する状況が続いている。ブレザー制服の採用が増加していることも要因の一つ。ブレザーに合わせるスラックスやスカートは柄物であるケースが多く、裁断や柄合わせなど、無地物に比べて生産に手間がかかる。また、地域や学校ごとにデザインが変わる場合も多く、多品種・小ロット化が顕著になっている。これが生産コストの増加につながっている。今後は顧客に理解を求めながら価格改定を進め、収益改善につなげる。