春季総合特集Ⅳ(5)/Topインタビュー/ヤギ/社長 八木 隆夫 氏/シナジー創出に工夫/生地輸出拡大に本腰
2024年04月25日 (木曜日)
ヤギは共創・協働を積極的に進めている。社内では糸・生地・製品という各事業間の融合を図り、グループ企業とは人的交流をベースにシナジーを狙う。相手は国内にとどまらず、海外企業とも積極的に手を取り合い、次代を開く作業を続けている。全てがうまくいくわけではないが、挑戦しなければ何も生まれない。
――全てを紹介するのが難しいほど多彩、多様に共創・協働を推進しているように見えます。
社内部署間、グループ内、同業他社、異業種、海外企業となど、さまざま形、場面で共創・協働を進めています。確かに全てを紹介するのは難しいぐらいですね。
――共創・協働の狙いは何でしょう。
当社連結子会社には、ラッセル・トリコット製造のヴィオレッタ(大阪市城東区)、タオル製造のツバメタオル(大阪府泉佐野市)、糸加工業の山弥織物(浜松市)、先染め織物製造卸のイチメン(東京都渋谷区)、「タトラス」ブランドなどを展開するダウンウエア販売のウィーバ(同)、紳士・婦人服企画販売業のアタッチメント(同)、化粧用パフ製造の日本パフ(大阪府寝屋川市)など実に多様な企業が属しています。
子会社化したからといってすぐに何らかの成果が出るわけではありません。業界特有の壁はやっぱりあり、すぐにシナジーを出すのは困難です。以前は社長ほか役員を派遣することを重視していましたが、最近は中堅・若手の営業スタッフを派遣するなどシナジー創出に工夫を凝らしています。子会社間の幹部が全員参加する会議を開いたり、さまざまな情報を共有しており、徐々に熟成度が高まっていると認識しています。もっともっと有機的にグループ企業を絡ませていきたいと考えています。
――グループ以外の企業・団体との共創・協働はいかがですか。
昨冬のイタリアの服地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)では「西陣織」と協業しました。西陣織の技術をベースに新たなクリエーションやテクノロジー、サステイナビリティーといった要素を取り入れた生地を複数提案し、海外ブランドから好評を得ました。
改質ポリ乳酸(PLA)コンパウンドを開発・販売するバイオワークス(京都府精華町)にも出資し、ヤギとして初めてPLAを取り扱うことになりました。従来から力を入れるオーガニックコットン、再生ポリエステルなどと合わせ、環境配慮素材の開発、提案を強めていきます。
サンウェル(大阪市中央区)と生地販売の面で協業していますし、衣服生産プラットフォーム開発・運営のシタテル(熊本市)とは物流システム開発の支援を進めています。
――海外では。
4年ぶりに現地での丸編み地販売を再開した上海法人のプログレス上海が最近、日本の生地製造卸の中国法人と連携して合同展を開いています。
世界最大級のオーガニックコットン紡績企業であるインドのナハール社とは長年にわたる協力関係のもと、農場から糸まで一貫したオーガニックコットンのトレーサビリティーを管理する独自の仕組み「コットンiD」も生み出すことができました。連携あってこそのプロジェクトと言えます。
――海外市場開拓が課題です。
今期から糸・生地のマテリアル本部を、グローバルマテリアル本部に改称しました。生地で欧米や中国の市場を開拓するという意志を込めたものです。古くから出展する「プルミエール・ヴィジョン」(PV)やイタリアのMUに継続出展するほか、先ほど述べた中国の合同展などを通じて開拓作業を続けます。ヴィオレッタも、フランスのインナー関連見本市「アンティリフィリエール」に出展しました。
――24年3月期を振り返ると。
第3四半期までで減収増益でした。主に合繊糸で価格改定が遅れていますが、綿糸ではオーガニックコットンなど付加価値商材が好調です。アパレルOEM、ブランド・リテール事業はインバウンド需要の高まりを受けて堅調でした。
今期の市況見通しは、事業ごとにまだら模様といったところです。
〈最近のプチ贅沢/散歩中に高級なカフェ〉
ウオーキングが趣味の八木さん。最近は早朝散歩がお気に入りで、朝だけで1万歩に達することもあるそう。散歩コースの中にラジオ体操を行う場所がある。初めは遠慮して隅っこのほうで参加していたが、今では老人たちとも仲良くなり、真ん中あたりで堂々と体操するようになったそう。「こんな世界もあるんだな」と新鮮さを感じている。時間のある土日には散歩がてら、少し高級なカフェに立ち寄り、モーニングを食す。それが最近のプチ贅沢。
【略歴】
やぎ・たかお 1999年4月インドネシア石油(現INPEX)入社、2011年10月同社退社。同年11月ヤギ入社、13年6月取締役管理本部長代理、16年4月常務管理部門長、同年6月から現職