春季総合特集Ⅳ(9)/Topインタビュー/双日ファッション/社長 由本 宏二 氏/発注と供給の責任を/海外市場の攻略本格化
2024年04月25日 (木曜日)
備蓄型生地商社の代表格の一社である双日ファッション(大阪市中央区)は今後もリスクを恐れず主体的に生地を企画開発し、備蓄販売していく。それが仕入れ先への発注責任、顧客への供給責任を果たすことになると考えるためだ。この根幹が揺らぐことはない。販売面で見れば海外市場が主な拡大対象になる。由本宏二社長に考えを聞いた。
――双日ファッションにとっての共創・協働とは。
まず、社会・業界における自分たちの存在価値を追求することをベースにしたいと思います。当社の仕事は産地や染色加工場の技術や機能を組み合わせて生地を生産し、顧客に販売すること。いわゆるコンバーティングです。単に商品を右から左に流すということはしませんし、自主的に生地を企画生産、主体的に備蓄(ストック)し販売することがビジネスモデルです。別注を受け付けないというわけではありませんが、重視するのは主体的な企画であり、備蓄販売です。
繊維業界は原料、糸、織り編み、染色、加工、縫製、企画・デザインなど各工程がプロとしての仕事をし、複雑なサプライチェーンを形成しています。このサプライチェーンの中でどのような役割を果たせるのかを常に意識し追求しています。仕入れ先への発注責任と、顧客への供給責任を同時に果たす、ということです。時代の変化に応じて当社も変化していますが、この幹となる部分は今後も変わりません。それが当社のマーケットでの存在価値です。
――仕入れ先とは、長く太くお付き合いされているというイメージがあります。
取引が固定化するという意味ではありませんが、長く取引できるように心掛けています。例えばロングセラーの商品を市場に投入できれば、仕入れ先も当社も顧客も有益です。互いに切磋琢磨して商品や機能を長期間にわたって磨いてきたという自負があります。取引が長いということそのものが、共創・協働ができているということだと思いますし、独り善がりではなく、社会や業界に長く認めてもらうこと、それが共創・協業ということなのだと考えます。
――綿無地などさまざまな種類の生地を常時備蓄販売するのが御社の特徴です。
その通りです。ただ、高級品市場を攻略する必要がないと考えているわけではありません。「Simpremier」という織りから染色加工まで国産にこだわった一格上の生地ブランドを投入したのはその表れです。他にも「Naturemiel」という天然繊維調合繊の生地ブランドや、サステイナブル関連の生地ブランドを立ち上げており、新たな見本帳をそれぞれで構えて展開しています。海外のラグジュアリーブランドにも好評ですし、新たな仕入れ先も開拓できています。
――海外市場向け拡大を近年の重点方針に掲げています。
輸出や中国内販に力を入れています。中国では「インターテキスタイル上海」「同深¥文字(U+5733)」に継続出展しているほか、中国では昨年、この二つを含めて個展や同業他社との合同展など計17回の展示会に参加、開催しました。今年3月にはベトナムの「VIATT」展にも初参加しましたし、イタリアの「ミラノ・ウニカ」(MU)にも継続出展しています。
前期(2024年3月期)は思うようには伸ばせませんでした。米国がアパレル、キルト共に不振だったことが要因です。ただ、ASEANや中東向け、欧州向けなどは伸びました。欧州向けではメゾンでの採用もあり、手応えを感じています。展示会出展など前向きな経費をかけてきましたので、今期はもっと数字につなげたいですね。
――24年3月期を振り返ってください。
中国法人との合算で、前期比増収減益でした。増収には中国法人が貢献しました。減益の要因は、製造原価の高騰と、一般管理費の増加です。一般管理費はシステム投資や出張旅費、展示会経費、開発費などですので、将来への前向きな費用増だったと捉えています。
――今期の見通しを。
暖冬を受けた市況の冷え込みや期中追加の激減など懸念材料は多いのですが、前向きな投資を回収するという意味でも拡大を狙います。
〈最近のプチ贅沢/車で出掛ける愛犬散歩
最近、健康的な体作りのためにほとんど毎日10キロほどを歩くという由本さんは、愛犬家でもある。癒しの存在である犬、妻を連れ立って、休日に行くドライブが最近のプチ贅沢。月に1度ほどとそう頻繁には実現していないが、自宅のある大阪から、滋賀県の琵琶湖周辺や京都の平安神宮周辺などへ車で出掛け、愛犬の散歩がてら散策する。「自分もリフレッシュできるし、いつもと違う散歩コースに犬もうれしそう」なのだとか。
【略歴】
ゆもと・こうじ 旧ニチメン時代含め双日で一貫して繊維事業を担当。中国、インドネシア駐在、繊維事業部テキスタイル課長などを経て、2010年4月に双日ファッションに出向、同年7月社長。専務、副社長を経て17年7月から現職