春季総合特集Ⅳ(15)/Topインタビュー/コスモテキスタイル/社長 岡田 泰紀 氏/初の中期計画を策定/輸出など新市場開拓
2024年04月25日 (木曜日)
生地商社のコスモテキスタイル(大阪市中央区)は、アパレル向けと切り売り向けという、似て非なる商品を持つ。アパレル向けは生地が中間財で、切り売り向けは生地が最終製品。この二つの融合を社内で試みているほか、社外でも共創・協働の意識を持って事業を展開している。就任1年半を経た岡田泰紀社長に現状と今後を聞いた。
――共創・協働について、岡田社長のお考えを聞かせてください。
分業で成り立つ繊維業界は元々それを実践してきた業界ですし、まさに当社のビジネスモデルでもあります。国内の捺染工場や産地企業とは古くから密接な関係性を築いていますし、同業他社とも柔軟に売買しています。
特に近年は、一企業だけの限定的な知見だけでは新たな付加価値を生み出すことが難しくなっています。当社は従来から取引先やパートナー企業との連携の中で事業や価値を生み出してきた会社です。共創はコスモテキスタイルの強みであり、根付いている価値観にほかなりません。新たな発想や価値を内外の皆さまと共につくる「共創」を一層心掛けていきます。仕入れ先への安定発注のためにも、良いものを作り、できるだけ高値で売っていきたいと考えています。
社内ではアパレル向けと切り売り向けの融合を図っており、これも共創・協働の一つと言えるでしょう。
――2024年3月期決算はいかがでしたか。
前期比で微増収増益です。アパレル向けがけん引しました。サステイナブルな生地ブランド「フループ」や、洗練された上質カジュアルに向けた「ミュジュアル」といった自社生地ブランドが評価され、好調な販売推移です。当社アパレル部門の企画力が顧客に認められているという点を喜んでいます。
新型コロナウイルス禍で需要が急激に高まった切り売り向けは、その反動もあり不振が続いていますが、ここに来てようやく底は打ったかもしれないとみています。少しでも心の贅沢を楽しむような動きが最近少しずつ見られるようになってきました。主に海外市場に向けた「キルトゲート」や「マーガレットソフィー」が人気を博し、新ブランドとして投入した「アンノ」も評価を高め、売れ行き好調です。こちらも当社の企画開発力が認められているということですので、自信につながりますね。
――近年は輸出拡大にも力を入れています。
アパレル関連では、イタリアの「ミラノ・ウニカ」、中国の「インターテキスタイル上海」、ベトナムで初開催された「VIATT」、韓国の「プレビューイン」などに出展しました。これらの成果はまだこれからだと思いますが、数字も伸びています。
切り売り向けでも昨年11月の米国・ヒューストンで開かれた「キルトショー」に5~6年ぶりに出展しました。私も渡米して初めてこの展示会を見て回ったのですが、とてもポジティブな印象を受けました。業界全体が新たな商品、新たな価値を求めている雰囲気を感じました。
輸出拡大は大きな課題です。欧州、米国、アジアでバランスを取りながら拡大できれば理想です。
――今後の戦略、方針を。
当社はおかげさまで安定した経営を続けています。しかし繊維業界はグローバル化の進展や消費者ニーズの多様化により大きな変革期を迎えています。当社は持続可能なビジネスモデルへの体制転換を図り、新たなマーケット開拓や効率化のため、デジタル技術で企業を変革するDXの推進にも力を入れます。
その一環としてまずはホームページのリニューアルに着手しました。また、OMO(オンラインとオフラインの融合)戦略を進めるべく大阪本社と東京支店に大画面多機能HUB機材を導入し、オン・オフでの顧客とのコミュニケーション活性化を図っています。
今期を初年度とする3カ年計画も策定します。中計策定は当社としては初になります。策定に向けて全社員から意見を募り、多くの貴重な意見をもらいました。上半期中には策定作業を終える計画です。
〈最近のプチ贅沢/ドストエフスキーの悪霊〉
多趣味な岡田さんだが、読書もその一つ。プチ贅沢は?の問いに、最近に限らないが、「ドストエフスキーの『悪霊』を読むこと」。若い頃から何十回と読んできたそうだが、読むたびに感じ方や印象が変わる。そこが「本当に面白い」。原書で読んだこともある。翻訳家が違うと印象も変わる。その違いも「面白い」。記者は未読のため残念ながら共感できないが、読んでみたいと思わされた。それほど“悪霊愛”は揺るぎない。
【略歴】
おかだ・やすき 1981年三井物産入社。89年ロシア/モスクワ支店次長、94年繊維部製品室長、2009年関西支社業務部長、15年関西支社副支社長を経て16年に給食受託業、メフォス取締役、18年同社社長。22年6月20日付で退任し、7月1日からコスモテキスタイル社長