春季総合特集Ⅴ(2)/Topインタビュー/トンボ/社長 藤原 竜也 氏/統合でさらに着やすい制服へ/新設の物流拠点順調
2024年04月26日 (金曜日)
トンボは今上半期(2023年7~12月)、計画通りに売り上げを確保したほか、今春の入学商戦でも比較的順調に生産、納入ができた。その一方で、「生徒減が実感として出てきた」と藤原竜也社長は話す。今年3月に発表した創作屋(岡山県総社市)の完全子会社化など、将来を見据えて種をまきながら今後も成長を目指す。
――御社の共創・協働の取り組みについて教えてください。
3月、紳士服などアパレル製品の製造を手掛ける創作屋の発行済全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。今年は創作屋との共創・協働が当社としての大きなテーマとなってきます。
これまでの創作屋との関係としては、当社での生産がなかなか難しい付加価値商品の生産をお願いしていたほか、創作屋を引退した方にパターンを指導していただくなどの交流がありました。
創作屋は国際衣服デザイナー・エグゼクティブ協会(IACDE)日本支部から三ツ星工場として認定を受けています。私も先日、初めて工場に伺いましたが、学生服と作り方のベースは一緒ながらも、その仕事の丁寧さ、複雑さなど技術のすごさを感じました。
今後、創作屋ではこれまで通りの仕事を行っていきますが、宣伝広告やマーケティングなどを実施しながら、もう少し創作屋の名前を前面に出していこうと考えています。海外著名ブランドからのOEMにも取り組んでいきたいですね。協働によって、トンボの制服がさらに着やすく、奇麗なものになっていくことにも期待しています。
――今年の入学商戦の状況について。
新規のご注文を早めにいただくようお願いしたこともあり、生産は順調でした。ただ、販売は若干苦戦しました。当社のメーカー指定をいただいている私学のほとんどが今まで堅調に生徒を確保されてきましたが、生徒の絶対数減の影響を受けた学校もありました。公立校を含め生徒減がじわじわと実感として出てきました。
――上半期の結果は。
学生服、スクールスポーツ、ヘルスケアともに計画通りに推移しています。中でもヘルスケアは頑張ってくれています。新型コロナウイルス禍で止まっていた営業活動ができるようになってきたことが奏功しています。
スクールスポーツでは「アンダーアーマー」ブランドの体育着がけん引しています。来年に向けてもこの堅調さは続いていきそうです。
――原料価格などさまざまなコストが増加しています。
生産コストが増加しています。そのため、既存校に対してはこれから値上げをお願いしていきたいと考えています。価格改定が経営に直結する段階に入ってきました。
――茨城県笠間市に昨年開設した物流拠点「東京物流センター」の稼働状況は。
システム上のトラブルなどを心配していましたが、順調に稼働できています。今シーズンではアソートや出荷で非常に貢献してくれ、順調なスタートを切ることができました。
予定している最終扱い量の6割ほどのスタートでしたが、来年は一気に予定数量にまで増やします。本当の意味での勝負は来年になります。
――デジタル技術で企業を変革するDX化に向けた取り組みについて。
コロナ禍では人工知能(AI)による採寸を推進しました、ただ、ここに来て導入する学校は思ったより増えていません。コロナ禍も落ち着き、「やはり実際に着てみたい」というトレンドに戻っているように感じます。一方、スマートフォンでの伝票入力などは増えています。集計作業などが自動化されるなど業務の効率化につながっています。
このほか、小売店が当社の本社や各支店にオーダーできるシステム「リテーラーオーダーシステム」(ROS)を昨年稼働させており、かなり浸透してきました。ファクスや電話による注文が激減し、従業員の仕事も円滑かつ速くなっています。
グループ会社の瀧本(大阪府東大阪市)とのシステム統合も計画しており、7月に完全統合する予定です。また、当社では基幹システムのクラウド化を計画しています。今年にその取り組みをスタートし、27年の稼働を目指します。
〈最近のプチ贅沢/役員で高級スーツをオーダー〉
紳士服などの生産を主力とする創作屋が同社グループに加わる。藤原さんは「タッグを組む上では創作屋のことを知らなければならない」と語る。そのため、「創作屋が作る高級ジャケット、もしくはスーツを買おうとしている」。これが藤原さんの最近の「贅沢」だ。「高いでしょう?」と質問すると、各種グレードはあるようだが高級なものは「スーツで30万円ほどする」そうだ。「とりあえず役員は全員オーダーさせる。これは強制ですよ」ときっぱり。
【略歴】
ふじわら・たつや 1984年テイコク(現トンボ)入社。2013年取締役、15年常務取締役、19年に瀧本の代表取締役社長に就任。22年9月22日付で現職