春季総合特集Ⅴ(4)/Topインタビュー/社長 河合 秀文 氏/明石スクールユニフォームカンパニー/製品の最後まで責任を/業界で仕組み作り必要

2024年04月26日 (金曜日)

 明石スクールユニフォームカンパニーは、近年急増する制服のモデルチェンジ(MC)に対応しながら売上高を伸ばす。その一方で、あらゆるコストが上昇するなど厳しい環境が続いている。今期は価格改定を進めるほか、コストダウンにつながる取り組みにも注力しながら、利益を確保できる体制を整える。

――御社の共創・協働の取り組みについて教えてください。

 業界としては、学生服をリサイクル、リユースする仕組みをこれから作っていくことが必要になってくるでしょう。製品の最後まで責任を持つ、有効利用を図ることが重要になってきます。そのための仕組みをどこと組んでやっていくか、われわれが実践していかなければなりません。

 当社では環境配慮型制服の「リリングスクール」を展開しています。こちらを今後どう生かしていくかを今探っている最中です。その取り組みの中ではさまざまな方々と取り組んでいくことになるでしょう。

――2023年12月期を振り返ると。

 中学校を中心にMCが増えていることもあり、売上高はほぼほぼ予定通りとなりました(売上高308億円)。一方、さまざまなコストアップが続いていたことで、どこまで利益が残せるのだろうかと思っていました。しかし、生産の流れが秋以降にスムーズになったことで、利益率は想定よりも良かったです。

 スクールスポーツ部門も採用校が増えています。メディカル・ケア向けユニフォームを扱うアクティブチャレンジ部では、下半期に大型物件を獲得するなど堅調でした。病院などへの営業を10年ほど積み重ね、ようやく話を聞いてもらえる環境ができてきましたね。

――生産の流れが秋以降にスムーズになったとのことですが、その要因は。

 1年間、計画生産をきちんと進めることができたためです。生産プロジェクトをしっかりと組んでやった成果が表れました。前の期にあった休日出勤や残業なども減少し、余分なコストを払わずに生産ができました。

 また、当社は昨春の入学商戦でスムーズに納品を終えることができました。そのため、4月からの備蓄生産の立ち上がりもスムーズでした。

 今シーズンもほぼめどが付きました。来年に向けても備蓄生産をしっかりとやっていきます。そのためには素材メーカーからの素材のスムーズな納品が重要になります。

――今入学商戦の進捗(しんちょく)について。

 受注予測を立て、その予想通りに追加注文が入ってきていることから、計画通りに生産できており、納期面でも混乱することなく進めることができています。業界全体でブレザー制服へのMCが多い中、当社のMC校からの受注数も量的に増えており、ここ3年はMC校の獲得数は高い水準で推移しています。

 人工知能(AI)による採寸も、導入から3~4年経ち、より効果を発揮してきています。追加生産のオーダーなども早くなり、労働時間の圧縮につながっています。

――既に今期がスタートしています。重点施策について教えてください。

 価格改定です。製造コスト、人件費など、あらゆるコストが上がってきています。まずは正しい利益を頂ける体制にするためにも、しっかりと価格改定をお願いしていくしかありません。その上で、当社も販売効率を上げるなど、コストダウンを図る取り組みを継続してやっていくことが今期の大きなテーマです。

――今期の設備投資の予定は。

 当社の物流拠点、宇部テクノパークアソートセンター(山口県宇部市)へ22年に新物流施設を建設したほか、食堂や寮の改修、照明のLED化など、ここ3年は宇部の拠点へ積極投資をしてきました。あとは今年いっぱいかけて女子寮の改装を進めていきます。

――昨年、社内組織を縦割りから横割りへと刷新しました。

 効率よく人が動いており、効果が出てきています。例えば、プランニング部門では、これまで分かれていた制服とスポーツとを一緒にしましたが、効率が良くなったことに加え、社員も「これまで知らなかったことを知れる」とやりがいを感じてくれているのではと思っています。

〈最近のプチ贅沢/こだわりを捨てる〉

 プチ贅沢とは「これだけは譲れないというこだわり」だと指摘する。「“下山”の人生に入っているから、断捨離ではないが、もうこだわりは捨てようと思っている」と一言。「時計や車にこだわりたいという年でもないし、あとは平穏に暮らすだけ」と笑う。「おいしいものを食べたいという欲求もある」が、「高い食べ物もB級グルメも受け入れていく。こだわりを持たずに生活したら良いのではないか」というのが河合さんの考えだ。

【略歴】

 かわい・ひでふみ 1982年明石被服興業入社。89年取締役。2002年専務。05年から社長。明石スクールユニフォームカンパニー社長も兼務