特集 パンテキスタイルフェアTOKYO2024/22、23日に開催/MS、シーウール使いなど訴求
2024年05月14日 (火曜日)
台湾の繊維産業連合会、紡拓会は22、23日の2日間、東京都渋谷区恵比寿のEBiS303で素材展「パンテキスタイルフェアTOKYO2024」を開く。台湾のメーカーとコンバーター計39社が出展し、合繊使いを中心とした差別化した織物と編み物、糸を訴求する。メカニカルストレッチ(MS)やカキの貝殻を使った「シーウール」素材などが注目を集めそうだ。各社の出展内容を紹介する。
〈宏遠興業/伸長率20%のMS織物〉
遠東集団(ファーイースタン・グループ)傘下で、織布から染色加工までを一貫して展開する宏遠興業(エベレスト・テキスタイル)は、ナイロン6とポリエステル使いの二つのMS織物を出展する。
欧州で近年、製品をリサイクルする動きが加速していることに対応し、同社はポリウレタンを含まず、軽量でストレッチ性に優れたMS織物の開発に注力している。今回出展するナイロン6使いは、伸長率20%のストレッチ性を持つ。ポリエステル使いは、不要な生機を回収し、再生したサステイナブル素材だ。
双方とも台湾製の糸をタイ・バンコク工場などで織物にしている。両素材とも開発スピードが速く、大きなロットにも対応。組織はアウトドアウエアに適したドビー織りが中心となる。非フッ素系撥水(はっすい)加工品も展開する。
〈新光紡織/機能充実のMS2重織り〉
合繊織物メーカー、新光紡織(シンコン・テキスタイル)は、さまざまな機能性を持つ、メカニカルストレッチの2重織りをアピールする。ユニフォームなどの顧客の開拓を目指す。
この2重織りは、ポリエステルとナイロンの2タイプがある。ストレッチと撥水(はっすい)、防風、速乾、UVカットなどの機能を持つ。ストレッチ性はポリウレタンによるものではなく、グループ会社の新光合成繊維が開発したポリエステル繊維「シン・シグマ」自体の性質によるメカニカルストレッチだ。同繊維の伸長率は20~30%と言う。
欧州で製品をリサイクルするニーズが高まっていることから、同社は今年、ポリウレタンを使わないストレッチ素材の開発を強化している。
撥水機能の後加工には、環境に配慮したバイオベース原料を用いた助剤を使っている。
〈誠佳科紡/カキ貝殻素材「シーウール」〉
誠佳科紡(クリエーティブ・テック・テキスタイル)は、カキの貝殻を利用した吸湿速乾性を持つ繊維「シーウール」を紹介する。同繊維は今年、破棄される貝殻を再利用するサステな機能素材として、日本を含めた国内外で注目を集めている。
同社の祖業は織布だが、10年に機能性素材メーカーにシフト、13年にシーウールの展開を本格化した。同素材は、台湾国内のカキ養殖業者から廃棄される貝殻を回収し、リサイクルポリエステルを組み合わせて生産する複合素材だ。
ウールのような柔らかく滑らかな手触りが特徴。熱伝導率が低いため防寒効果が高く、遠赤外線による保温効果もある。UVカットの機能もある。
シーウールのチップは台湾で生産する。年産能力は16万トン。紡糸は中国で行っている。
〈和意実業/麻紙糸「アバセル」〉
和意実業(ハーイー)は、麻紙糸「アバセル」をアピールする。同社の祖業は製紙で、60年以上の歴史を持つ。その事業で培った生産技術を生かし、同糸を開発した。
アバセルの原料は、マニラ麻(アバカ)だ。マニラ麻の繊維は強靭(きょうじん)で、熱や湿気にも強く、日本の和紙や紙幣にも使われる。肥料や農薬を使用せず栽培されるサステイナブルな原料だ。
同社はこの繊維をフィリピンなどから輸入、台湾で製紙し、ロール紙を生産している。このロール紙をスリット加工で1㍉幅のテープ状に分割し、撚りをかけてアバセルにする。
アバセルは生分解性を持ち、水に強い。コットンよりも軽量で通気性に優れている。麻のような清涼感もある。消臭効果や速乾性、放熱性、抗菌効果、UVカットなどの機能も持つ。
〈尚益染整加工/非フッ素の撥水加工織物〉
染色加工大手で、生機の受託加工と生地の欧米・日本向け販売を手掛ける尚益染整加工(サニー・スペシャル・ダイニング&フィニッシング)は、超撥水(はっすい)加工とストレッチ性を持つ織物や、サステイナブル素材使いをアピールする。
超撥水加工の織物は、「Solapel」(ソラペル)ブランドとして展開する同社の主力アイテム。非フッ素系撥水剤を使用し、独自技術により表面、裏面ともに長時間の洗濯に耐える(120回の洗濯後も70%の撥水効果を維持)。軟らかい風合いのため、アウトドアだけでなく、デーリーウエアにも使用できる。耐摩耗性も高い。
ストレッチ性を持つ織物は、優れたストレッチ性を武器に北米スポーツブランドへの販売を伸ばしている。サステ素材使いの生地は、ラミネートフィルムにもリサイクル素材を採用している。
〈佳和実業/軽量なリサイクル梳毛織物〉
佳和実業(ジャーハー)は、台湾では希少な梳毛メーカーだ。綿、ウールの紡績から織布、染色加工まで、台南工場で手掛けている。今回はリサイクルウールとアバカ繊維、パイナップル繊維、高耐久性リサイクルナイロンの各素材使いを出展する。
リサイクルウール使いの梳毛織物は、GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)認証を得たウールを特殊紡績することで、一般のウールよりも約20%軽量化した。保温性に優れた秋冬素材として訴求する。
フィリピン産のアバカ繊維使いは、強度と耐久性、軽量性に優れる。パイナップル繊維使いは、農業廃棄物のパイナップルの葉の繊維を採用したサステイナブル素材だ。
高耐久性のリサイクルナイロンは、耐摩耗性を向上させるナノ合成技術を使って生産。同社によると、同素材使いの織物の耐久年数は、通常のナイロン使いの2倍になる。
〈多太/カンボジア縫製とサービス力〉
縫製会社の多太(ドゥータイ)は、カンボジアの自社工場で生産する製品と、生地の開発力や日本語によるサービスをアピールする。
カンボジア工場の生産アイテムは、織物製衣類で、月産能力は10万着。カジュアルとスポーツウエアを得意としている。これまでボリュームゾーンを手掛けてきたが、今後は中高級ゾーンへシフトを図っていく。
同工場で使う生地は、台湾と中国で調達している。今回展では、生地開発力も訴求する。遠赤外線、抗菌、帯電防止などの機能を持つナノ炭素材料「グラフェン」や、レンチングの環境配慮型レーヨン「エコヴェロ」を使った独自の生地を訴求する。
このほか、工場にも日本語を話せる人材が常駐し、日本語できめ細かいサービスを提供していることを紹介する。
〈達歩施/「ニットデニム」と緬甸縫製〉
デニム調編み物「ニットデニム」や、デニム製品を生産する達歩施(ダブス)は、冷感機能を持つニットデニムと、保温性を持つデニム調パイル生地をアピールする。ミャンマーの自社縫製工場での一貫生産も訴求する。
冷感のニットデニムは2種類出展する。一つは台湾の機能性原料メーカー、華楙生技(ホアマオ)の冷感ポリエステル繊維「クーリングジェード」を使ったもの。もう一つは、米コベーションバイオマテリアルズ社の「ソロナ」繊維の接触冷感素材使い。
ニット調パイル生地は、保温性と抗菌機能を持つ素材と、トレーナー向きの厚手素材の二つを紹介する。
同社は昨年、ミャンマーで縫製工場を稼働した。現在はデニム製品の縫製(従業員約200人)のみ手掛けているが、今年下半期に製品洗いも始める。
〈晨華/ASEAN縫製とセットで〉
台湾・桃園市で織物を生産する晨華(チェンホア)は、スーツ地とスポーツウエア向け織物を、ASEAN(東南アジア諸国連合)縫製の製品とともにアピールする。
同社は、織機150台を導入する協力工場と、出資する染色工場(月産能力180万メートル)で、織物を生産する。今回展では速乾性を持つポリプロピレン(PP)と、遠赤外線、吸湿・放湿、抗菌、帯電防止などの機能を持つナノ炭素材料「グラフェン」を使ったスーツ地を前面に打ち出す。日本向け販売が好調に推移するフィッシングウエアや、バイク用ジャケットに最適な織物も出展する。
同社は昨年、ミャンマーとベトナム、中国で縫製工場を運営する達新工業との協業を始めた。縫製一貫により、コスト競争力を高めるのが狙いだ。今回展でも、自社の生地を使って達新工業が縫製した製品を出展する。
〈安徳隆/差別化糸使いと後加工〉
台湾製織物を手掛ける生地コンバーターの安徳隆(アンダロン)は、複合繊維などの特徴のある糸使いや、特殊な後加工の生地を出展する。ユニフォームとファッションブランドの新規顧客の開拓を目指す。
今回展では、自社の糸ブランド「トリ・エアーフレックス」と、ナノ炭素材料「グラフェン」を練り込んだタイプの二つの糸使いを訴求する。同社は今年から、糸からの差別化を進めている。
トリ・エアーフレックスは、ポリエステルやポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などの複合繊維。ハリ感があり、ストレッチ性を持つ。グラフェン使いは、高強度で調温機能を持つ。
後加工は、ビンテージ感にこだわったドライタッチの風合い加工を前面に打ち出す。ポリエステルの織物にシワ加工を施し、膨らみを表現する。
〈晶安/独自MS糸使いの織物〉
台湾と中国の出資工場で、織物と編み物を生産する晶安(ラボ・テックス)は、独自開発したメカニカルストレッチ(MS)糸使いの織物と、機能性丸編み地を出展する。
製品リサイクルを進める欧米ブランドは近年、ポリウレタンを含まないストレッチ素材を求めている。こうした中、同社はMS糸の独自ブランド「ドリーミー ダスト」と「デイリーモーション」の打ち出しを強めている。
ドリーミー ダストは、吸湿・速乾などの機能性と高級感ある見た目が特徴。デイリーモーションは、コットンライクの手触りで、ドリーミー ダストよりもさらに優れたストレッチ性を持つ。これらの糸使いをゴルフウエア向けとして提案する。
このほか、抗ピリング加工を施した、ポリエステル100%のフェザーヤーン使いの機能性丸編み地を出展する。
〈五綸織造/台・越製の差別化編み物〉
経編み地と丸編み地を生産する五綸織造(ウールエン)は、台湾・彰化の本社工場で生産する編み物を前面に打ち出す。同工場は、ベトナム・ドンナイ工場とのすみ分けのため、ラミネートやジャカード、プリント加工、機能性を付与する後加工に注力している。
今回展の主力アイテムは、ユニフォームやスポーツ、アウトドアウエア向けのメカニカルストレッチ(MS)素材使いと、ラミネート加工の編み物。MS素材を使った経編みのパンツ地は、吸湿速乾などの機能を後加工で付与している。
ラミネート加工の編み物は、パンツ地とアウター地の二つを出展する。パンツ地は、フィッシングウエア向けとして提案する。このほか、抗菌効果を発揮するマイナスイオン加工や、涼感ポリエステル繊維使いなどの素材もアピールする。
〈●亜/涼感PE糸使いの編み物〉
合繊織物メーカーの●亜(ティアラ)は、ポリエチレン(PE)糸使いの織物を前面に打ち出す。同社は昨年PEを紡糸し、吸水速乾と涼感機能に優れた服地向け素材の開発に成功した。PEはこれまで、一般衣類に使用されることはほぼなかった。
今回展の目玉は二つ。一つは、ナイロンにPEを加えた糸使いの丸編み地だ。涼感性に優れた素材で、Tシャツやインナー向けとして提案する。
もう一つは、トライアスロンウエアなどに適した水陸両用のPE100%織物。吸水速乾性に優れたPE糸を使うことで、水陸ともに快適に過ごせる織物を開発した。
同社のこれまでの主力アイテムは、ポリエステルとナイロン使いのストレッチ織物だったが、差別化のためにここ数年、PEやポリプロピレンを使った織物の開発に力を入れている。
(●はてへんに是)
〈大宇/ウールライクな織物〉
台湾の彰化と桃園で、仮撚り加工糸から織布を一貫展開する大宇(ユニバーサル)は、ポリエステル使いのウールライクな織物と、涼感・吸水・速乾機能持つ織物の二つをメインに出展する。
ウールライクの織物は、リサイクルポリエステルと微量のウールを混紡した糸を使って、ポリエステルとウール双方の長所を持たせた。風合いはウールそのものだが、洗濯が可能で縮まないことが利点。価格がこなれている点や、サステイナブルな素材であることも売りだ。
涼感素材はポリエステル100%の異形断面糸使い。同糸は異形断面を利用し、接触冷感と吸水速乾の機能を持つ。
双方ともに、メンズブランドのスーツのセットアップや、オフィスユニフォーム向けとして提案する。
〈綿春繊維工業/サステ素材使いのジャカード編み地〉
台湾とベトナムで、ジャカード編みなどを生産するニッター、綿春繊維工業(MDSグループ)は、サステイナブルな素材を使ったさまざまな機能性を持つジャカード編み地を出展する。
電子ジャカードで編んだタオル地は、パイルが浮き出て立体的な柄を表現できる。柔らかい手触りと、通気性の良さが特徴だ。
サステ素材のPLA(ポリ乳酸)を使った編み物は、鮮やかな色に染色が可能。抗菌機能があり、速乾性が高いことも特徴だ。
「レリーフジャカード」のブランド名で展開する編み物は、合繊メーカー、台湾化学繊維が開発した湿気を帯びると伸長するナイロン糸を使用。着用者が汗をかくと編み目が広がり、通気性が向上する。
このほか、台湾特産のパイナップル繊維や、東レのバイオベースナイロンを使ったサステ編み物を出展する。
〈明興/ストレッチの綿ライク織物〉
台湾とベトナムのグループ工場で、染色加工から一貫で織物と編み物を生産する明興(ソリス)は、コットンライクのストレッチ織物ブランド「コージーテック」と、カキの貝殻を使って吸湿速乾性を持たせた繊維「シーウール」使いの生地を出展する。
「コージーテック」は、台湾空軍のユニフォームへの採用実績を持つ。ポリエステル100%で綿のようなナチュラルな風合いながら、ストレッチ性や吸水速乾性を持つ。今回展では、ファッションやユニフォーム向けとして提案する。
シーウールは、台湾の誠佳科紡(クリエーティブ・テック・テキスタイル)の独自繊維で、ウールのような柔らかな手触りが特徴だ。同繊維を使った織物と編み物のシャツ地を、ユニフォームやメンズウエア向けとして訴求する。
〈伍立実業/大麻成分加工の編み物〉
丸編み地のコンバーター、伍立実業(ワールドニッティング)は、特殊な助剤や繊維を使ったユニークな機能性編み物を打ち出す。
大麻草の茎や種子から抽出される成分カンナビジオール(CBD)を付与した編み物は、ストレス緩和やリラックス効果が期待できる。寝間着やヨガウエア向けとして提案する。CBDはドーパミンなどの神経伝達物質に関与し、自律神経を整える機能がある。中毒は起こさないと言う。
機能性原料メーカー、華楙生技(ホアマオ)が開発したナノ炭素材料「グラフェン」使いの繊維「イージーウォーム2・0」は、発熱機能を持つ。この繊維を使った編み物を冬物素材として訴求する。
蚊やダニなどの虫よけ機能を持つ編み物は、バイオベース由来の助剤を使っていることをアピールする。
〈達紡/下着、スポーツ向け編み地〉
インナーとスポーツ向けの差別化した編み物を台湾・桃園の自社工場で生産する達紡(テックス・タイル)は、ポリウレタンを使わず、ストレッチ性を高めた丸編み地を出展する。
同編み地は、欧州で製品リサイクルのニーズが高まっていることに対応し、開発した。
スパンデックス100%使いのメッシュ生地や、速乾性の高いポリプロピレンを使った編み地も訴求する。スパンデックスの染色は難度が高いが、独自技術で良好な染色性と色堅ろう度を実現した。
桃園工場は現在、経編み機30台、丸編み機45台を導入。染色加工ベースの月産能力は60万キロだ。
同社は従来、インナー向けがメインだったが、2019年末に桃園市の既存工場の側で編み地の新工場を開業したのを機に、スポーツ向けの開拓も強化した。





